「会議は 30分」というトヨタ的テーゼの導くものは
東洋経済 ONLINE に "トヨタの会議が「30分で終わる」超合理的な理由" という記事がある。"少しの差を積み上げ最終的に大きな時間を作る" というサブ見出し付きだ。それにしても「超合理的」とはスゴい。
この記事の筆者である山本太平氏は「トヨタ本社のエンジニアとして、長らく生産現場にいた」方のようで、"社内で「会議は 30分!」と、口を酸っぱくして言われていた" と力説している。会議の時間が短いと他の仕事に回すことのできる時間が増えて、非常に効率的であるというのだ。
これはまことにもって「もっともな話」である。反対する理由は極めて見つけにくい。
ちなみに私は以前、合計 10年以上業界団体事務局というところに関係していて、その団体の理事が集まる「理事会」を主催していた。その他にもプロジェクトごとに企業から派遣される委員の集まる「〇〇委員会」という会議も頻繁にあったと記憶している。
業界団体の会議というのは、最低でも 1時間半ぐらいの時間を設定していた。そのくらいの時間を取らないと、定められた会議室までわざわざ各社から集まってもらうための「もっともらしさ」が出ないのである。この時間の長さは、「必要悪」というものかもしれない。
そうなると、この長い時間を埋めるために、どうしても「無駄な時間」を会議に盛り込む必要が生じる。本当に必要な話だけなら 30分足らずで終わってしまうので、適当な名目で「世間話」を交わす時間を確保するわけだ。
本当に有能な理事や委員なら、この「一見どうでもいい世間話」の中から自分の仕事に役立たせる「エキス」を吸い上げることができる。しかし他のほとんどの出席者にとっては、単に「楽しい雑談」に過ぎず、そのまま会議後の「飲み会」に突入するためのプレリュードみたいなことになってしまうのだ。
こうした体験から、「会議は 30分もあれば十分」ということには私も充分に賛成だ。とはいいながら 1時間や 1時間半の「一見無駄な時間の多い会議」をしても、有能な人はその「無駄」の中にさえ、あるいは「無駄」の中にだからこそ、貴重な何ものかを見出すことができるものである。
ただ、問題は「有能な人なんて、出席者の 1割程度でしかない」という現実だ。つまり、9割の人にとっては 30分以上の会議は「時間の無駄」でしかない。たった 1割の人のために、9割の人に「不合理」を強いるなんてことは徹底して避けるというのが、トヨタのスタイルなのだろう。
ということは、トヨタのクルマというのはほぼ 9割の人を満足させる「超合理性」を発揮することはできても、「たった 1割の人にだけアピールするようなユニークな面白さ」には欠けることが多いというのも道理である。社風そのものなのだね。なるほど、なるほど。
「面白さ」とは「無駄」の中にあることが多いものだから。
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コメント
「たった 1割の人にだけアピールするようなユニークな面白さ」
トヨタは昔からこのような車造りはしないと言ってました。
それより万人に80点を貰える車を作る80点主義でしたね。ビジネス的には大成功です。
トヨタは25万、スバルは36万、フェラーリは1200万、この数字は単純に車を一台売ったらいくら儲かるかという大雑把な数字です。
この数字からするとスバルはトヨタより“クルマ屋”の度合いが強い。
スバリストという言葉があるようにスバルには根強いファンが多い。だから高く売れるのでしょう。
どっちがいいかということではありませんが。
投稿: ハマッコー | 2021年4月14日 06:29
ハマッコー さん:
なるほど。そういう哲学に徹しているわけですね。
>どっちがいいかということではありませんが。
これはまさにその通りで、トヨタはマジョリティに受け入れられることを最大のセールスポイントとしているので、「超合理的」な志向なのでしょう。
ただ、世の中には「それじゃつまらん!」と思う人もいるので、トヨタの寡占状態になるってことはないのでしょうね。
投稿: tak | 2021年4月14日 08:42