資生堂の「ドルガバ撤退」のニュースで思ったこと
昨年秋頃のことだったと思うが、ラジオで「君の『どーるちぇあぁんどがばぁなぁ』のその香水のせいだよ〜」(リンク先ビデオの 1分 11秒あたりから)という妙な歌を聞いて、一瞬「何それ?」と思い、その数秒後に「ああ、 "Dolce & Gabbana" も、もう終わりだな」と直感した。
で、そのほぼ半年後に東洋経済 ONLINE に ”資生堂、「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦” という記事が出るに至って、「ほほう、俺のアンテナも、まんざら錆び付いてないじゃん」と思った次第である。もう、ブランドでビッグビジネスをする時代じゃないのだ。
今はガタガタになってしまったアパレル・メーカーの オンワード が 1989年に "Dolce & Gabbana" と契約(参照)した時の記者会見には、実は私も参加していた。当のドルチェとガッバーナのご両人も来日して参加していたが、はっきり言って 2人とも「もっさりしすぎ」という印象だった。
こちらが啞然としてしまうほど、意味のあること(自らのファッション哲学とか、デザイン・テーマとか)は何も語ることができず、気の利いたジョークすらも言えなかった。要するにこの 2人、自分たちに深い考えなんてなく、周囲の「悪いオジサンたち」に動かされてるのが見え見えだったのだよ。
そんなことだから最近ではプロモーション面で余計な問題まで起こし(参照 1、参照 2)、さらに本業は洋服のデザインなのに、実際は小物やコスメ、香水関連でメシを食ってる印象があって、要するに「もう終わってる」ってことなんだろう。実質以上のビッグネームに仕立て上げられた悲劇である。
そういえば、昨日の "「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」の使い分けって・・・" という記事で、次のようなことを書いている。
私は昔、繊維・アパレル業界で仕事をしていたから、「ブランドのライセンサーに支払う『ロイヤリティ』が馬鹿にならないんだよね」とかいう言い方をよく耳にしていた。
当時は、「そんなに『ロイヤリティ』とやらの支払いが負担なら、欧米のブランドなんかに頼らずに、自前のちゃんとしたブランドを開発すればいいじゃん」と思っていたものである。で、改めて「最近の代表的なライセンス・ブランドって何かな?」と考えたが、急には思い浮かばなかった。
あの頃のアパレル業界大手といえば、オンワードの他には「アーノルド・パーマー」なんてゴルファーの名前でポロシャツや靴下を売るという妙なビジネスをしていた レナウン とか、「バーバリー」のライセンスによるコートに頼りきりだった三陽商会 とかだった。今はどちらもガタガタだが。
その他にも、誰も知らない(プロの私でさえ知らない)ような海外のどうでもいいブランドに「ロイヤリティ」を払って展開しているメーカーも、どことは言わないが少なからずあった。私は「それって、全然意味ないよね!」と思っていたよ。
一方、この頃は山口県のローカル企業に過ぎなかった「ユニクロ」は、どこにも「ロイヤリティ」なんて支払わずに、自前のブランドでここまで成長した。
余計な「ロイヤリティ」とやらを払いながら、他人のネームバリューによりかかる仕組みのライセンス・ビジネスは、地道に自前の財産を構築する本道のビジネスに負けるのである。「ロイヤリティ」とやらの収入に頼るビジネスも同様だ。
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