パジャマ以上おしゃれ着未満だと?
今朝ラジオを聞いていたら、「コロナ禍ならではのヒット商品」というタイトルで「パジャマスーツ」というのが紹介されていた。「パジャマ以上おしゃれ着未満」というのが謳い文句なのだそうだ。
テレワークで家にいながらにして仕事ができる上に、ちょっと外出できる程度の「きちんと感」があるというのがメリットなのだそうだ。ラジオでは、ネットワーク会議をする際にもスーツほどフォーマルではないが、カジュアルすぎない姿として画面に登場できると絶賛していた。
ただ、いつも「言葉」を重視したい私としては、「パジャマ以上」という言い方にしっかりと引っかかってしまった。話を聞き始めた当初は「それを着たまま寝て、そのまま起きて仕事もできる」、つまり「パジャマと仕事着の兼用が可能な服」(寝ても起きても着ていられる服)のことかと思った。
「そんなの、ありか?」「ランニングシャツ(wife beater)とサルマタじゃあるまいし!」である。
しかし「パジャマ以上」と言うからには、そう受け取るしかないではないか。例えば「3以上 10未満」と言ったら、「3」は含まれる。ということは、「パジャマ以上」と言ったら、「パジャマ」は含まれることになり、それを着たまま寝られる服でなければならない。
ところがネットで検索してみると上の写真のように、ソフォアで寝転がる分には問題なさそうだが、そのままベッドに入って寝るのはいくらなんでも憚られる。つまり「パジャマ以上」と言いながら「パジャマは含まれない」ということのようなのである。
というわけで、私としてはがっかりしてしまった。念のため断っておくが、「着て寝られない」ということにではなく、「以上」という言葉の意味をないがしろにして、単に雰囲気だけで訴求してしまうプロモーションの「言葉センス」の欠如にがっかりしたのある。
さらにそもそものことを言えば、「パジャマスーツ」というネーミングを聞けば、パジャマとしての用途の方がメインと思うのが自然というものではないか。パジャマとして使えそうにないものにこのネームングというのは、いかがなものかと思わざるを得ない。何と登録商標のようでもあるし。
ふと思い立って「以上/含まれる」というキーワードで検索してみたところ、「以上、以下、未満の使い分け」「含まれるか、含まれないか」を説明するページがくさるほどヒットした(参照)。ということは、曖昧なまま使っている人がずいぶん多いのかなあ。それもまた驚きである。
ちなみに私はこの季節、家で仕事するときは Tシャツにショートパンツである。そんなわけで、こんなのはちっとも買う気がしないので、そのあたり
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コメント
いやあ、ここまでくると言葉のアンテナの感度が良すぎというか(笑)。よくある例だと「友達以上、恋人未満」ですか。これって「友達と恋人の間にあるなにか」であって「(ただの)友達」は含まないですよね。
算数・数学の分野では明確にする必要があって、「100以上200未満の整数の中に偶数はいくつあるか」など、定義できていないと解けないわけですが、あくまで言語の成長過程にある10代初期ぐらいの子供に教える内容であって、参照ページのようにいい歳をした大人が本気で分からなくて誰かに教えてもらわないとというのは嘆かわしい限りです。
投稿: らむね | 2021年5月26日 09:48
らむね さん:
「友達以上、恋人未満」は、友だちも含まれるということで、問題ないと思いますよ。
元々は友だちからスタートして、そこから恋人に至るまでの薄ぼんやりとしたレンジでうろうろしている状態ということで、OK (^o^)
それにしても、「以上、以下、未満」の説明を改めてしてもらわなければならないというのは、「ちょっとね〜」と言いたくなりますね。
投稿: tak | 2021年5月26日 11:21
「友達以上、恋人未満」の語感は、「ただの友達」ではないが「恋人とまでは言えない」ではないでしょうか。
数値と数値以外では意味する範囲が違うようです。
投稿: McC | 2021年5月26日 16:01
数量でなく観念的な話になると、「以上」も「以下」も基準を含まない意味合いになってくるような気がしますね。「以下」の場合は基準を含まないことを強調する意味で「未満」にしたりしますが(恋人"未満"なわけです)実質的にあまり変わらない印象はあります。「以上」は適当な言い方が無いことも関係あるかもしれません。
「銀メダル以上は確実」と言えば銀か金を指しますが、「彼にとってこの経験は銀メダル以上の価値がある」と言えば銀メダルなりの価値という意味合いは含んでいないんじゃないでしょうか。
「同等かそれ以上」なんて言い方もよく聞きますね(笑)
投稿: タニー | 2021年5月26日 18:19
McC さん:
私の言いたかったのは、「友だち」も含まれはするものの、さらに「そこから恋人に至るまでの薄ぼんやりとしたレンジでうろうろしている状態」ということでありますので、よろしく。
投稿: tak | 2021年5月26日 18:35
タニー さん:
>数量でなく観念的な話になると、「以上」も「以下」も基準を含まない意味合いになってくるような気がしますね。
「基準を含まない」と言い切ってしまうのは、問題のように思いますよ。
>「以上」は適当な言い方が無いことも関係あるかもしれません。
であればこそ、わざわざ、そして敢えて、こんな言い方をすべきじゃなかったでしょう。
本文に書き足しましたが、そもそも「パジャマスーツ」というネーミングである以上、「パジャマ以上」と聞けば「パジャマとして使える」と受け取るのはごく自然のことと思うわけです。
投稿: tak | 2021年5月26日 18:38
>そもそも「パジャマスーツ」というネーミングである以上、「パジャマ以上」と聞けば「パジャマとして使える」と受け取るのはごく自然のことと思うわけです。
うーんそうでしょうか。私は前述のとおり以上以下超未満の定義には敏感な方ですが、このような商品で「パジャマ以上おしゃれ着未満」とあれば、「以上」と「~を超える」の混同を承知の上で「実際は純パジャマとしては捉えづらく、お昼寝以上コンビニ以下ぐらいだろうな」と抵抗なく推測します。「友達以上恋人未満の関係」とあったときに「ただの友達よりは深い関係なのだろうな」と捉えるのと同じようにです。「~を超える」に相当する適度な日本語がないのが原因でしょうね。
投稿: らむね | 2021年5月26日 22:10
らむね さん:
>「~を超える」に相当する適度な日本語がないのが原因でしょうね。
タニーさんのコメントへのレスでも書きましたが、そうであればこそ、敢えてこのような紛らわしいレトリックを使うのは、いかがなものかと。
投稿: tak | 2021年5月27日 05:31
>そうであればこそ、敢えてこのような紛らわしいレトリックを使うのは、いかがなものかと。
この論理はよくわかりません。
≧と>を区別する、「~を超える」に相当する口語で簡単に使える表現が無いからこそ「以上」の中に「~を超える」の意味が含まれるようになったのでは?
また「敢えて」とはどのような意味で使われていますか?この商品の販売者が「実際はパジャマとしては使えないけどふわっと「パジャマ以上」と書いておけばパジャマとして使えると勘違いした人も買ってしまって儲かるから、敢えて以上を使おう」という意味でしょうか。だとしたら邪推だと思いますが。
投稿: らむね | 2021年5月27日 22:46
らむね さん:
ごくごく単純な話に還元すれば、パジャマでもないのに「パジャマスーツ」というのは紛らわしいというだけのことです。
実際ラジオでこの話が紹介された時、初めは自然に「パジャマのまま起き出して、ネット会議にも出られる服」だと思い、そんな服って着たくないなあなんて感じてましたから。
というわけで、こんなことで勘違いで売れるなんて邪推するほど陰険じゃありませんので、よろしく。
投稿: tak | 2021年5月28日 05:19