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2021年5月17日

「ディープなアジア」の茨城バージョン

一昨日はたまっていた仕事を片付けてようやく一段落したので、「自分へのささやかなご褒美」としてつくば市にある日帰り温泉に行ってみた。ボーリング場や映画館などもある「つくば YOU ワールド」という複合施設で、日帰り温泉だけは「湯〜ワールド」と、駄洒落みたいなネーミングになっている。

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料金はフツーのスーパー銭湯よりちょっと高めだが、その訳は、温泉施設内の大宴会場で上演される大衆演劇の観劇料込みということのようだった。5月公演は「劇団炎舞」とやらの舞台で、私が入った時は歌謡ショーの真っ最中だったが、なにぶんコロナ禍で客入りが少なく、気の毒なほど淋しい印象だった。

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いずれにしても大衆演劇込みの日帰り温泉なんて、なかなかあるものではない。ここの茨城度は、かなりディープである。

とはいえ、別に芝居を観に来たわけでもないのでさっそく温泉に浸かり、一通り体と神経の疲れをほぐしてから館内着を着てロビーに出る。ソファで涼みながら汗の引くのを待っていると、後ろのテーブルがやたらと賑やかなのに気付いた。

振り返って見ると、還暦過ぎぐらいのおばちゃん 4人のグループが世間話に花を咲かせてダハダハ盛り上がっている。これがまたディープな茨城弁で、一人ずつしゃべってくれれば聞き取れるのだが、常に同時に 2人以上が(時として 4人いっぺんに)しゃべるので、何が何だかわからない。

茨城弁特有のうねるようなイントネーション(単語自体に固有のアクセントはなく、様式のあるようなないような、気紛れな抑揚のセンテンスの中に埋没する)が重なり合って、途切れることのない「ウォ〜〜ン」という響きになり、時に 4人同時の大爆笑が強烈な効果として加わる。これはもう、大変なものだ。

この喧噪に包まれながら、私は時々出張することがあった香港の大衆食堂を思い出していた。香港の洋食レストランはやたら高いばかりで旨くもなんともない(何しろ英国領だったんだから)ので、食事はフツーの香港人の行く大衆食堂に入る。ちなみに香港の人たちはほぼ 100%外食らしい。

こうした大衆食堂は嬉しくなるほど安くてうまいのだが、とにかくうるさい。ドアを開けた瞬間に、店内から噴出する凄まじい騒音の圧力で押し戻されそうな気がするほどだ。だから日本人同士で連れだって食事しても、まともな会話はできない。フツーの声で話したのでは全然聞こえないのだ。

こうした状況では、一応の国際スタンダードとなっている西欧的常識からすると、互いに迷惑にならないように小声で話すのがエチケットとされる。ところがそれとは逆に、皆が周囲に負けないようにさらなる大声でしゃべるというのが、中国的常識のようなのである。

これって、バスや地下鉄に乗るのに決して列を作らず、我先にドアに殺到するのと同じメンタリティだ。そして放っておけば何事も混沌のままなので、強烈な中央集権的権力で身も蓋もないほど抑え込もうとする。

私は日帰り温泉ロビーの喧噪の中で、「これが『ディープなアジア』の茨城バージョンなのだよね」と穏やかに納得しながら、汗の引くのを待っていた。中国の圧政の色が強まっている香港に比べれば、ここはずっと呑気でいられる。

負けるなよ、香港!(最後にこれが言いたかった)

 

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