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2021年5月16日

「図を使って考える」というより・・・

東洋経済 ONLINE に 「頭のいい人が図を使って考える 3つの訳」という動画記事がある。YouTube の動画によるプレゼンみたいな形の記事だ。

「3つの訳」(動画のタイトルは「3つの理由」となっているが)というのは、図を使って考えると次のような効果があるというのである。

  1. 枝葉末節がそぎ落とされて本質がクリアになる
  2. ビッグピクチャーを得られる
  3. 思考の「見える化」ができる

かなりもっともらしく聞こえるが、私は「ちょっと待てよ」と言いたくなった。というのは、ここに挙げられた 1番と 2番は矛盾するのである。

1番では「情報が多すぎると、情報を整理するだけで手一杯になって思考の低下を引き起こす」と言い、2番では「正しく深く考えるためには、今考えていることに対して影響を及ぼすすべての要素を、視野を広げて大きく捉えることが必要」と言っている。

1番で「航空写真は情報量が多すぎて役に立たない」と言いながら、2番では「視点を上げることによる『鳥の目』が必要」と言う。頭の中にきちんと「図」を描きながら聞いたら(この場合は並列的な図となるが)、その図の中の 1番と 2番はケンカしてしまう。

私の場合でいえば、思考する時には順序としてまず「ビッグピクチャー」を描き、そこからだんだん絞り込んでいく。つまり 1番と 2番は同時には不可能なので、必然的に「時間軸」の要素が必要となり、そうすると順序を逆にして言う方が自然なのだ。

さらに経験則から言うと、「枝葉末節をそぎ落とす」ことが文字通り有効となるのは、「自分で考える時」というより「考えたことを提案する時」だと思う。

私としてもプレゼンをする時にはよく図を使うが、それはある意味、相手に「余計なことを考えさせない」ためである。ストレートに納得してもらうために、敢えてとりあえず視野を狭めて集中してもらう。いわば pursuasion(説得)の手段だ。

その上で、プレゼンが終わってから視野を広げて考え直してもらう分には一向に構わない。それで「待てよ、それって変じゃない?」なんて思われるようでは、プレゼンター側の最初の「ビッグピクチャー」の描き方がお下手なのだ。

このビデオ序盤のストーリーは「頭のいい人たちを見ていて、その共通点は『よく図を使う』ことだと気付いた」ということになっているのだが、それは彼らがプレゼンや会議の際に、上手に図を使うのを見てのことだろう。そもそも実際に思考に没頭している姿なんて、あまり人前にさらさないものだし。

ということは、これは「図を使って考える」というより、「図を使って説明する/提案する/納得させる」あるいは、「会議の内容をその場で図にまとめて整理し、結論に導く」(これは実際に、かなり有効)と言った方がいい。

少なくとも私は、紙やホワイトボードに図を描きながらものを考えるなんてことは、ほとんどしない。いちいち図を描きながらでないと考えられないなんて、そもそも頭が悪んじゃないかと思うほどだ。

そのかわりもっぱらしているのは、プレゼン資料を作る際に、頭の中で構築したアイデアを PC 画面上に「図として清書」するというテクニカルな作業である。経験から言うと、プレゼンに説得力をもたせるのは、矢印多用の「もっともらしい図」よりごく単純な「わかりやすい図」だ。

それにそもそもこのビデオって、画面に登場するのは「図らしきものの漠然としたイメージ」ばかりで、話の内容はちっとも具体的な「図」に落とし込まれてないよね。まあ、図にしなきゃ伝わりにくいほどの内容でもないけど。

 

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