「サステナブル」「エンターティナー」「プロテイン」
昨日の昼にラジオを聞いていると、「生活にちょっと役立つサステナブル・クイズ 」というのをやっていた。まあ、いいんだけど、私としてはどうしても「サステナブル」というカタカナ言葉にはむず痒さを感じてしまうのだよね。
「サステナブル」(sustainable)というのは "sustain" (サステイン: 持続させる)という言葉から来ているので、私としては 40年以上前から「サステイナブル」と言ってきた。海外との関連で、そっちの方の仕事もしていたので。
一時、これを「サスティナブル」(「ィ」が小さい)と言う風潮が広まりかけ、"SDG" を「サスティーナブル・デベロプメント・ゴールをご存知ですか?」なんて、したり顔で言う人まで現れて、むず痒さは最高潮に達していた。今は「持続可能な開発目標」というまともな日本語に落ちつき、ほっとしている。
「サスティナブル」って、どうしても「うぅむ、それって "entertainer" を『エンターティナー』と言うのと同類の勘違い英語じゃん!」となってしまっていたのだよ。"Entertainment" はまともに 「エンタテインメント」で定着してるのに、"entertainer" はどうして「エンターティナー」なんだ?
探ってみると「エンタテインメント」というのは、あの名作映画『バンド・ワゴン」中のヒット曲 "That's Entertainment" が、後に大ヒットしたアンソロジー映画のタイトルとなり、日本では『ザッツ・エンタテインメント』というカタカナでプロモートされたので、それで落ちついたようなのだ。
さすが、「名画と名曲のチカラ」である。
一方で "entertainer" の方は、それとはほとんど無関係みたいに「エンターティナー」と表記されることが多い。下のビデオ、スコット・ジョプリン作曲によるラグタイム・ピアノの名曲 "The Entertainer" も、例に漏れず『エンターティナー』になっちゃってる。
これ、曲としてのメロディは多分 "That's Entertainment" よりも有名で誰でも知っていると思うのだが、実はタイトル(念のため: カタカナでは『ジ・エンタテイナー』)は意外なほど知られていない。
「ほら、あのチャチャンカチャンカチャン、チャチャカチャカチャカァチャンカチャン・・・っていう曲」で通じてしまうので、「ザッツ・エンタテインメント」ほどには、まともなカタカナが定着していないみたいなのだね。
話は最初に戻るが、"sustainable" は、「サスティナブル」になりかかっていたのがどうして急転直下「サステナブル」に固定されちゃったのかというと、どうやら 2019年に AKB 48 が歌った『サステナブル』が、まさに持続可能な決定打となったようなのだ。これは「アイドルのチカラ」である。
今月 11日付の「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」の話じゃないが、本当に言葉というのは、どんなきっかけでどう変わってしまうか知れたものではない。
そして次なる疑問として残るのは、「プロテイン」(たんぱく質)だ。英語は "protein" で、その発音をカタカナで表記するとすれば、「プローティーン」(「ロー」にアクセント)が近いはずなのである。
ただし知る限りの米国人の発音は、下のビデオのように短めの「プロゥティン」に聞こえるので、私も英語で話す時は、「たんぱく質という重要テーマ」をことさら専門的に掘り下げるのでもない限り(そもそも、そんな専門知識ないし)、短めの発音に倣っている。
もしかしてこの手の言葉はドイツ語かなと思い、ググってみたところ、綴りは英語と同じで、発音は「プロティイン」のようだ(参照)。フランス語になると、綴りは "protéine" だが、発音は「プロテイン」(参照)。両方ともアクセントは「イン」にある。
日本ではどうしてまた、「テ」にアクセントを置く「プロテイン」になってしまったのか。この手の言葉って、カタカナになると「プロティーン」みたいになりやすいのだが、こればかりはベクトルが「エンターティナー」の真逆で、どうしてこうなったのかはまったくの謎だ。
もしかしたら、「プロティーン」とかじゃバタ臭すぎて馴染めないというわけで、マッスル系の業界の人たちが「えいや!」とばかりに質実剛健なローマ字読みで、「オロナイン」とか「セメダイン」みたいな語感にしちゃったのかも知れない。
というわけで、本日のエントリーはいろいろな動画を散りばめた大サービスとさせていただいた。
【5月 20日 追記】
2014年 9月 8日付で、"「エンタテインメント」という言葉を巡る冒険" という記事を書いていたことを思い出したので、合わせてよろしく。
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コメント
「」の言葉だけで、なんか五七五調。
以前の職場は、ISO取得目指しているときに、「サスティナブル」って言葉を多用してましたねぇ。
そんな走りの時代だったんですね。
アタクシは、エビデンスもペンディングもフィックスも大っ嫌いだったため、まったく響きませんでした。
投稿: 乙痴庵 | 2021年5月27日 19:51
乙痴庵 さん:
>「」の言葉だけで、なんか五七五調。
ホントだ (^o^)
ISO とかの話になると、本当にやたらカタカナ言葉が増えてうんざりしますね。
投稿: tak | 2021年5月27日 20:08