「理想的な気候」と「ダイナミックなカタカナ英語」
暑い。こんな中でオリンピックをやってるんだから、ご苦労なことである。まあ、私は開会前から「どうぞご勝手に」と言ってるので、無関係を決め込んでいられるが、屋外競技に出ている選手はまったくもって気の毒だ。
この件について、日本は 2013年の IOC でのオリンピック招致のプレゼンテーション文書で大嘘をついていたとの批判が、国際的に高まっているという。(参照)
そりゃそうだ。「温暖で晴れた天候が多いこの時期は、アスリートにとってベストのパフォーマンスができる理想的な気候」(With many days of mild and sunny weather, this period provides an ideal climate for athletes to perform their best.)なんて、当たり前の感性ではとても言えない。
ちなみに IOC 総会での関係者のプレゼンは絵に描いたようなカタカナ英語のオンパレード(参照)で、滝川クリステルのフランス語はさすがに上手だが(参照)、「お・も・て・な・し」なんていうのは「裏ばかり」ってことかと、思い出すさえ気色悪い(参照:「おもてなし」には、やっぱり裏があった)。
福島の原発の状況を "under control" (制御下にある)とほざいた安倍晋三(当時の首相)は、もっとヒドい(参照)。
表情だけは根拠不明の得意満面さだが、そのスピーチとなると「小学生を相手にしてるみたい」と言いたくなるほどのことさらな単語区切りの上に、その「カタカナ英語」がかなり舌っ足らずのため(この人、母国語も舌足らずで滑舌が悪いし)、「二重の幼稚さ」が印象付けられる。
とにかく最初の一言、"Mr. President" のつもりで「ミスター・プレゼント」なんて言ってるので、8年前のニュースでものっけからコケたのを思い出してしまったよ。
さらに東京について、”one of the safest cities in the world" (世界で最も安全な都市の一つ)と言いたかったんだろうが、どういうわけか、やたらと、区切り、ながら、”one of the, safest, sixties, in the world" (世界で、最も安全な、60年代の、一つ)なんて言ってる。
まあ、多くの出席者はイヤフォンで自国語による同時通訳を聞いてるから、満場がコケずには済んだようだが。
この関連で、当時の都知事で「ダイナミックなカタカナ」(末尾の「注釈」参照)による招致プレゼンをしていた猪瀬直樹という男が後にテレ朝系「大下容子ワイド!スクランブル」 に出演した時の模様を、スポーツ報知が 2019年 10月 30日付で伝えている(参照)。これ、しっかりとむし返しておこう。
杉村氏が「マイルド・サニーじゃないんじゃないかって気もする。それは後ろめたい気持ちはない?」などと聞くと「マイルド・サニーって書いてあるの? ハハハッ…それはそのくらいプレゼンテーションはそんなもんでしょ」と返していた。
いやはや、テキトーなものである。そばにいたら、どつくよ。
さらに言わせてもらえば、真夏の東京が殺人的な暑さであることは、何も今年に始まったことじゃない。かなり前から世界の常識なのだから、ほとんどの IOC 委員たちにしても知らないはずがないではないか。
プレゼン資料の大嘘が何事もなくスルーされちゃってるのだから、まさに徹頭徹尾「おもてなしで裏ばかり」(つまり損得勘定)というわけだ。日本が「大嘘つき」というだけでなく、それをすらりと受けた IOC 全体が欺瞞的だったのだと言わなければならないだろう。
始まってしまってから「苛酷な暑さ」なんて言い出すのは、率直に言えば「今さら感」ありありだ。
【注釈】
猪瀬直樹のプレゼンを、つい「ダイナミックなカタカナ」と表現してしまったのは、プレゼンテーション・スピーチがまさにそんな感じだったからである。
まず東京という都市について語ろうとして、”Tokyo is the city that is Dynamic..." と言い出したのっけ(開始 7〜8秒あたり)から、「ダイナミック!」(「ミッ」にアクセント)なんて言いつつわざとらしく拳まで振り上げたりしておいでだ。
これ、本来のアクセントは、「ダイナミック」(「ナ」にアクセント)ね。でもまあ、安倍前首相の「ミスター・プレゼント」も含めて、「プレゼンテーションなんだから、そんなもん」か。
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