オリンピックと、自民党的「老害」の本質
共同通信が昨日付で ”選手の活躍「政権に力」 五輪開催で自民河村氏" というニュースを伝えているが、当初は見出しの意味がわからなかった。そして記事本文を読んでやっと理解できたのは、自民党の「老害」が極まっているということに他ならない。
この見出しは「オリンピックの日本選手は自民党政権の宣伝部隊」と言ってるようにさえ見え、記事本文もまさに以下の 2点に要約される。
- 自民党の河村建夫元官房長官は 31日、東京五輪で日本代表選手が活躍すれば、秋までにある次期衆院選に向けて政権与党に追い風となるとの認識を示した。
- コロナ禍の中でのオリンピック開催に対する批判もあるとの指摘に、「五輪がなかったら、国民の皆さんの不満はどんどんわれわれ政権が相手となる。厳しい選挙を戦わないといけなくなる」とも語った。
これをもっと直接的な表現に翻訳すれば、「日本選手が活躍すれば国民の政権への不満はきれいに解消され、秋の衆院選で自民党に有利」で、「オリンピックは国民の不満を遮るスクリーン」ということになる。炎上ものの言い草だ。
ここまで勝手なものの見方ができて、それをいけしゃあしゃあとマスコミに語れるというのは、もはや「老害」以外の何ものでもない。
森喜朗(84歳)が今回の騒ぎでほんの少しだけおとなしくなったと思ったら、今度はこの人がいろんなことを言い出した。年は順番にとっていくので、老害発揮も順番に担当することになる。
彼は山口 3区で、林芳正との間で党の公認争いになるのが必至とみられていて、馬鹿馬鹿しいほど生臭い様相を呈している(参照)。この人ももう 78歳にもなるのだから、そろそろ縁側で猫でも撫でていればいいのに、そんな様子はまったくない。
それは「(総理と同格の)桐花大綬章を受けるために、最後に衆議院議長をやって辞めたい」(参照)ということのようで、前々から周囲に吹聴もしているらしいのである。今さら後には引けないのだろう。
一方、菅首相は 73歳と、上述の 2人に比べればまだ若いが、老害振りはひけをとらない。AERA では "菅首相会見が NHK 中継されると「支持率下がる」官邸で嘆きの声" と伝えられている。以下、官邸関係者の語ったコメントだ。
NHK は生中継で会見を流していますが、相当程度、支持率低下に貢献していると思います(笑)。首相のボキャ貧はもとより、政治家としての発信力が決定的に欠如しています。プレゼンのトレーニングをした方がよいレベルです。
菅首相と言えば、その素顔に迫る映画『パンケーキを毒味する』というのが話題だ。この人、その筋ではパンケーキが好物と伝えられ、昨年秋には「パンケーキ記者懇談会」なんてものを開いている。
この映画の企画に関わった元官僚、古賀茂明氏の語ったことをまとめた、 ”古賀茂明氏、菅義偉首相について「本当にしゃべらない。本心を見せない」” という日刊スポーツの記事を見つけた。ちょっとおもしろいので、オススメしておく。
要するに菅首相という人、実は「発信力が不足している」というよりむしろ、「発信しない」という手法を自ら積極的に選択してきたと見る方が正確なようなのだ。つまり「自らは決して発信しないかわりに、時々ぶちキレて見せる」というスタイルを武器として、ここまでのし上がってきたわけだね。
これって、自民党的、もっと言えばヤクザ的な「老害」を形成する本質と密接に関連すると思う。
ただ、そもそものことを言えば、こんなスタイルの人が首相なんてやっちゃいけないよね。あまりにも長い間避け続けて来たために習い性となって、ついに「発信」ってどういうものかすら、理解できなくなっているわけだから。
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コメント
菅さんは地元選挙区の横浜に賭博場を作ることを推進してきたのに、親分(小此木彦三郎)の息子の小此木八郎氏が「横浜での賭博場建設には反対(他地区での建設には賛成)を掲げて横浜市長選に出馬表明してしばらくしたら「全面的に八郎氏を支持する」と言い出した。
何を考えているのかさっぱり分かりません。菅さんも小此木さんもです。こういうのを魑魅魍魎というのですね。
*横浜市議の自民党勢力は36名、彼らは最近まで全員賭博場建設に賛成でした。財政のためにはどうしても必要であると力説していましたが、小此木氏が賭博場建設に反対を掲げて出馬表明すると36名中30名が小此木氏支持に回ってしまいました。
政治家って何を考えているか分からない。一つ分かることは次の選挙の為ならなんだってするということです。余談でした。
投稿: ハマッコー | 2021年8月 1日 23:03
ハマッコー さん:
例の「IR」ってやつですね。
3年前に「IR 法案、衆院通過」というのが話題になりましたが、あれからちっとも進んでいないようですね。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2018/06/post-d742-2.html
菅首相としては、横浜に IR (つまり「カジノ」)を作りたいという「強い意向」(まさにヤクザっぽい発想)だったはずですが、それが今、グチャグチャになっているわけですか。
つまり、政府目線としては「カジノ推進」でも、地元目線だと「それを言っちゃあ、市長選で野党に負ける」という板挟みになっちゃったわけですね。
>政治家って何を考えているか分からない。一つ分かることは次の選挙の為ならなんだってするということです。
まさに因果なお話で、このあたりからして、管流の手法は既に破綻していると見ていいようですね。
投稿: tak | 2021年8月 2日 05:39
トップの意向で、政治家としての生命線「政策」を掛け替えなきゃならない若手議員ってのは、かわいそうっちゃぁかわいそう。
結局のところ、親なりおじさんなりじいちゃんの後釜が、なぁんも考えなくて出馬できるから、右を向いても左を見ても、そんなのばっか!
投稿: 乙痴庵 | 2021年8月 2日 12:54
乙痴庵 さん:
政策というのは、結構「親分」の言いなりで変わったりするもののようですね。
本当に考えがあって出てきた若手が、なぁんにも考えてない二世議員なんかの言いなりなんてことになるのは、気の毒な限りです。
投稿: tak | 2021年8月 2日 16:50