« ユニクロ「エアリズムマスク」で夏を乗り切るか | トップページ | 庄内弁から見えてくる、日本的発想の「自他」 »

2021年7月24日

「ジョン万次郎英語」というもの

昔、知り合いに「英語で『今、何時ですか?』と聞きたい時は、『掘った芋いじるな』と言えば通じるんだってね!」と言われ、即座に「通じないよ。そんなもん!」と返事したことがある。

ところがこの類いの話は、世間では「ジョン万次郎英語」と称され、意外にもマジで語り継がれているらしい。太平洋で漂流して米国に渡り、幕末から明治にかけて日本と米国の橋渡し的役割を果たしたといわれる、あのジョン万次郎の英語という意味だ。

米国に渡ってからの彼は、耳から聞こえるままの英語をそのままカタカナにして覚えていったと伝えられる。「英語の超裏技勉強法」というサイトの「ジョン万次郎の発音法」によれば、こんな感じだ。

「America - メリカ」「Japan - チャパン」
「cat - キャア」「cold - コオル」
「girl − ゲエル」「lip − レップ」
「man − メアン」「net − ネ」
「night − ナイ」「railroad − レーロー」
「river − レバ」「wind - ウィン」

なるほど、確かに「ど」が付くほどのカタカナ英語よりは実際の発音に近いだろう。

とくに「Japan - チャパン」はある意味秀逸で、最初の ”Ja" にはアクセントがないから、「ジャ」よりビミョーに軽い「チャ」と思う方が面倒がないよね。ただ、ここから入って妙にとらわれちゃうと、文字にした時につい ”Chapan” なんて書いてしまい、中国との間に余計な軋轢を生じそうだが。

単語の連なりとして見れば、"Let it be" はフツー 「レット・イット・ビー」じゃなく「レリビー」となる。そして問題の「What time is it now? - 掘った芋いじるな」は、その延長線上の一例とされているらしい。

しかし断言させてもらうけれど、フツーの日本語流の平板口調で「掘った芋いじるな」と言っても、相手は「???」になるだけである。ネタバレした後なら、「強いてそう聞こうとすれば、聞こえないこともないかもしれないかも・・・」ぐらいにはなるだろうが。

上述の「net − ネ」を例に取れば、ただ平板に「ネ」と言っても "net" のことだなんて思ってもらえないのと同じだ。これ、「ネッ」(強調するなら「ネェッ」)ってな感じで、最後に舌を上歯茎の裏に当てた感じにすれば、確実に "net" になる。

同様に「cold - コオル」も、この「まんま」ではまず無理だ。「コゥ」と発音して、舌を上歯茎の裏に当ててすぐに離せば、立派な ”cold" になるが。

とはいえ、これは「英語耳」で対応すれば実に単純な話なのだが、「カタカナ耳」しか持っていない人には雲をつかむようなことであるらしいのだね。

このあたりのことは、冒頭の YouTube 動画「英語耳をつくる最終兵器」で、とても上手にわかりやすく説明されている。要するに「ジョン万次郎英語」というのは、「英語の音がすごく苦手」という人のために限っての「最終兵器」としてならオススメということだ。

つまり、音感があって「ちゃんと耳コピーのできる人」は、そんなものに頼らない方がいいということである。そりゃそうだろう。"Railroad" をちゃんと ”railroad" と聞き、自分の口でも ”railroad" と発音することこそが正攻法であり、初めから「レーロー」なんて廻り道を辿る必要はない。

それにそもそも、”railroad" をどうしてもカタカナで表記したいなら「レーロー」じゃなく「ゥレイゥロゥ」の方がいいと思うがなあ。いや、音感が不足してると、これだとかえって訳がわからなくなってしまうから、せいぜい「レイロゥ」程度かなあ。

最近 Quora に、"日本語で「あぶない!」と叫んだら、英語では「Have an eye!」と伝わって、意味が通じるという話を聞いたことがあるのですが、本当ですか?" という質問が挙がっていた(参照)。これに対する答えは下記のようなことで、これもかなり納得である。

と言う事は、それを叫ぶ状況だという事ですね。それだったら「叫ばれた人は何かに気が付く」でしょう。それが「気をつけて!」と言う意味合いと取るかどうかは疑問です。

要するに「あぶない!」と叫べば、叫ばれた人はハッとして立ち止まるか何かして、とりあえずその場の目的は果たされるだろうが、それは "Have an eye!" とは無関係のストーリーということだ。実際問題として、そんな風に聞こえるというのはほとんど無理だろう。

そもそもこうした場合は、Quora の回答者が指摘されているように "Watch out!" (万次郎英語的には「ウォッチ・アウト!」じゃなく、「ヮチャウ!」ね。念のため)と叫ぶのが定番で、"Have an eye!" だと「見る目を持ちなさい」みたいなことになるだろう。

というわけで、「ジョン万次郎英語」というのは「最終兵器」と言えば聞こえがいいが、そのココロは「溺れかかって苦し紛れにつかむ藁」みたいなもので、初めから積極的に頼るようなものじゃないと思うのである。

 

|

« ユニクロ「エアリズムマスク」で夏を乗り切るか | トップページ | 庄内弁から見えてくる、日本的発想の「自他」 »

言葉」カテゴリの記事

コメント

鉄道会社の駅務室や観光バス会社の運転手控室には“英会話集”なんてのが張り紙にして壁に貼られているのをよく見かけますが、すべてカタカナでローマ字読みで書かれてます。

これじゃ覚えにくいし通じないけどなぁと思いながらながめてます。
みんな間違いなく高校は出ているのだから、英文で書けばスッキリする。
発音に自信のない人は ジョン万次郎発音で添え書きしてあげればと思う。

社名を聞けば誰でも知ってる大手企業なんですけどね。
カタカナで発音を書いてあるのでいつもちょっとびっくりです。

あと五年も経てば全てスマホがやってくれるので張り紙も撤去されるでしょう。

投稿: ハマッコー | 2021年7月25日 00:48

ハマッコー さん:

へえ、そうなんですか。ちょっと驚きですね。

少なくとも、よくある質問は、万次郎英語式で書いてあげればいいのにと思います。

例えば、「ハウケナイ ゴゥトゥ 〜〜」(How can I go to...?) とか。

〇〇への行き方を聞かれてるとわかりさえすれば、ローマ字式英語で答えても、向こうは必至に聞き取ってくれるでしょう。

「ハウ キャン アイ ゴー トゥー」だと思っている限りは、何を聞かれているのかもわからないでしょうね。

投稿: tak | 2021年7月25日 07:01

姉ちゃん氷水!

トイレに行きたいときに、店員さんに言うと「なんとなく通じる」ってテレビで言ってました。(もう30年も前かぁ…)

投稿: 乙痴庵 | 2021年7月26日 14:33

乙痴庵 さん:

>姉ちゃん氷水!

これで "Nature is calling me!" は、あくまでも「駄洒落」ということにしときましょう (^o^)

投稿: tak | 2021年7月26日 20:27

私も知ってるネタを一つ。
高度成長期、大量の日本人が団体ツアーで海外旅行に行くわけです。全部ガイドさんにおんぶにだっこなわけですが、入国審査だけは個人でクリアしなくちゃいけない。だからガイドさんに口を酸っぱくして言われるんだそうです。
「いいですか、とにかく、『斉藤寝具店』これを言ってください。忘れないでくださいね」
さて海外など初めての日本人、必死に覚えるのですが緊張のあまりこう言うのだそうです。
「高橋工務店!」
ちゃんちゃん。

投稿: らむね | 2021年7月27日 02:28

らむね さん:

わはは (^o^)

入国審査の人も、「日本人が "Sigh toe thing good ten" みたいなこと言ったら、それ ”sight seeing" と言ってるつもりだから、わかってやれよ」なんて口伝になっていたかもしれませんね。

投稿: tak | 2021年7月27日 09:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ユニクロ「エアリズムマスク」で夏を乗り切るか | トップページ | 庄内弁から見えてくる、日本的発想の「自他」 »