人は案外、字を読まない(ましてや英語だとなおさら)
下の画像は、2019年 7月 17日付の「ファンタスティック過ぎる英語教材」という記事で紹介したものだ。i-smile という英語教材会社が、2年前頃にネット上で大々的に展開した広告の(参照)一コマなのだが、昨日の記事で蒸し返して思い出したので、敢えて別記事として深掘りしてみたい。
この広告のマンガに登場の若い女の子は、海外旅行の入国手続きで "Have a nice day." と言われて「幅ないっすね」に聞こえ(フツー、そうは聞こえないよね)、何か悪口を言われたのかと悩んでしまうほど英語ができなかったという設定である。そこで一念発起して、i-smile の教材で勉強を始める。
そして何と、「たった 2ヶ月で英語ペラペラ」になり(あり得ないよね)、街で "Exusse me. I want to go to Asakusa." と、妙にこなれない英語で話しかけてきた外国人に、自信満々で応える。それが上の画像である
"Even a train can go on a bus, but where do you go?" (列車さえもバスに乗って行けますが、あなたはどこに行きますか?)というのだから、まことにもって「ファンタスティック過ぎる英語」と言うほかない。おまけに「話せるようになれたんです」という日本語もおかしいし。
このマンガ、i-smile 側としても私がブログで槍玉に挙げたことを伝え聞いたか、ようやく "Oh, my God!" とアセったらしく、慌てて修正したようだ。私の記事にも、約 9ヶ月後の 4月 30日付として、次のように追記している。
書き忘れていたが、私がこの記事を発表して暫くすると、問題の広告の女の子のセリフが ”You can take a bus or train to go to Asakusa." に変更されていた。
いくらこっそり修正してても、私が証拠物件として保存した上の画像が残ってるので、トボけ切ることはできないのだがね。
ただ、今日の話で強調したいのは、この「デタラメ英語」そのものではない。どういうことかというと、"Even a train can go on a bus, but where do you go?" でググってみても、ご覧の通り、私の過去記事 1本しか検索されないってことだ。これには驚いた。
(これ、Even a train can go on a bus, but where do you go? だけでググると、類推検索でいろいろなページが表示されてしまうので、両側に " " を付けるのをお忘れなく。念のため)
さらに Twitter 内で検索してみても見つからない(参照)。(ただし、遅ればせながら今後話題になることがあれば、それなりの検索結果が表示されるだろうけど)
英会話教材会社ともあろうものがこんなファンタスティック過ぎる英語を、少なくとも 1ヶ月以上(実際には多分、3ヶ月以上)にわたり、大々的にネット上に晒していたのだから、Twitter で突っつかれて大炎上していたとしても不思議じゃない。しかし実際は、そんなことには全然ならなかったのである。
ということは、あれだけ派手なネット広告だったにも関わらず、このメチャクチャな英語に気付く人はほとんどいなかったってわけだ。要するに人って、案外字を読まないのだね。ましてや英語だとなおさらで、ほとんどまともに読まずに「雰囲気のもの」としてスルーしてしまうようなのだ。
Twitter でことさらな炎上劇を作りたがるユーザーは少なくないと見受けるのだが、そんなわけで、彼らもコンテンツに英語が入ると、格好の炎上ネタでもそれに気付くことすらないのだね。ずいぶんドメスティックな存在みたいなのである。
このことによる教訓は、以下のことである。
かなりビミョーでアブナいことを言いたい場合は、日本語でなく英語で書いておけば、余計な炎上は確実に避けて通れる。
ただし、ほとんど読んでもらえないことも確実ではあるのだが。
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コメント
例の東京メトロの “FIND MY TOKYO” まだやってるようですね。しかし以前ほど頻繁には見聞しません。
(東京メトロは年に5回くらいしか使わないので駅のポスターまでは確認してませんが、TVでは見ませんね)
世の中には英文をしっかり読んでる人もいるようです。
https://englishspa.hatenablog.com/entry/2020/03/08/221503
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12169265012
多分、メトロは「ヤベェ このまま静かに幕を引こう」ってなったのではないかと想像します。
石原さとみさんも長期に渡り変なCMに使われてかわいそう。バイリンガルの早見優さんだったらこの仕事受けなかったと思います。
投稿: ハマッコー | 2021年10月24日 00:51
ハマッコー さん:
このパターンは、枚挙にいとまがないですね。日本人にとっての英語は、まさに「雰囲気のもの」でしかないということでしょう。
毎度おなじみパターンの、「妙な英語コピー」(2018年11月 3日付)
Get Old With You (お前と共に年を取れ): ゼクシーの広告
Be a driver (運転手であれ): マツダの広告
Walk with You (お前と共に歩け): Docomo
Be Myself (私自身でありなさい): 森の仕事ガイダンスの広告
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2018/11/post-4018-1.html
ただ、"Even a train can go on a bus, but where do you go?" は、これらをも圧倒的に凌駕するファンタジーであります。世の中の「英文をしっかり読んでる人」の多くは、あまりのファンタジー加減に呆れて無視したのかもしれませんね。
全然気付かれないか、呆れられるかのどっちかということだったのでしょう (^o^)
投稿: tak | 2021年10月24日 08:31