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2021年10月 7日

写真はイメージです/言葉は雰囲気です

栗の美味しい季節になった。クルマで長距離運転して口寂しくなった時などのために、パッケージに小分けされたゆで栗を買ってきて重宝しているが、気になるのは、パッケージに印刷された「写真はイメージです」という言葉である。

211007

この言葉、ありとあらゆるパッケージや広告に使用されている気がするのだが、私としては「写真がイメージなのは当たり前じゃん!」としか思えない。バリエーションとして「画像はイメージです」なんていうのもあるが、画像がイメージなのもさらに当たり前である。

ちなみに "image" という単語を「英ナビ」で調べると、「表象、心像,イメージ、画像,写真,映像;彫像,偶像・・・」なんて出てくる(参照)から、意地悪く読めば「写真は写真です/画像は画像です」ということにしかならない。ナンセンスの極みみたいな文言である。

私はその昔、ワセダで「芸術学」なんて学問を専攻していて、「写真論/映像論」は「イメージ論」として学んだ。そんなわけでこの文言に関する「なんじゃこりゃ?」感は、人一倍強い気がするのである。

そして今日に至ってふと思いついて、「写真はイメージです」というキーワードでググってみたところ、同じような感覚の人が少なくないと確認でき(参照)、ちょっと安心した。そりゃそうだ。これを「変な言い方」と思わない方がおかしいだろう。

調べてみると、この文言はどうやら消費者からのクレームを防止するための「苦し紛れ」みたいなものとわかった。Quora には、スイスタジオ代表の渡辺剛さんという方の次のような説明が出ている(参照)。

この一文を入れていないと、「チラシのようなキレイなモデルのようになれると思ったのに(怒)」みたいなお叱りをうけてしまうであろう事が日本市場では予測できます。

いやはや、「そりゃ消費者がおバカすぎだろ!」と言いたくなるが、商品そのものの写真撮影の予算も時間もないときは、フォトストックの中から使うこともあるらしく「大体こんな感じですよ」ということになるらしい。要するに、次のような言外の意味をそれとなく表現しているもののようだ。

「写真はイメージです。(よって、まったく写真の通りに仕上がることの保証はできません。広告はあくまでもイメージアップ用です。嘘ではありませんが、大体こんな感じになりますよ、でもそうでないケースもあるかもしれませんねって感じです)」

というわけで、「写真は単なるイメージでありまして、そしてこの文言自体も単なる『雰囲気のもの』なのであります」ということのようなのだ。私は「雰囲気のもの」という言葉をよく使う(参照 1参照 2)が、これ、かなり便利な、まさに「雰囲気のもの」そのものの文言である。

ちなみに、クレーム防止策としての英語圏での決まり文句は、実際の英米人からの回答で、以下の例のようになると示されている(参照)。

Product image for illustration purposes only. Actual product may vary.
(商品写真の目的は単に例を示しているだけ。実際の商品はいろいろ)

This photo is a simulation.
(この写真は模擬的なものです)

This photo is for illustrative purposes.
(この写真は例を示すという目的)

さすがに英語は「雰囲気のもの」以上の具体性があるようだが、そのまま日本語に置き換えてしまうと「雰囲気を損ねる」と捉えられてしまうのだろうね。それで日本では、具体性より「雰囲気」に頼ってしまうのだろう。

【同日 追記】

「雰囲気」を「ふいんき」と読む人が増えているが、正しくは「ふんいき」なのでよろしく。とはいえ、この誤読が将来定着してしまいそうだという話を、3年半前の "「雰囲気」の読みが「ふいんき」で定着するのは 2035年頃" という記事で触れているので、併せてお読み頂きたい(ただし、日付にご注意)。

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コメント

冷凍の中華どんぶりを買ったら中身は写真と大違い。
牛丼にしても同様ですね。肉のクズが入ってるだけです。
中身が写真と大違いなのはすごく多い。色合いが違うのは
許せますが、具の量が全く違うのは許せませんね。現状は詐欺に近いです。

‟写真はイメージです”を翻訳すると、‟写真を頭に思い浮かべて食べてください”ですね。

投稿: ハマッコー | 2021年10月 7日 16:45

ハマッコー さん:

けだし名訳ですね! 素晴らしい (^o^)

投稿: tak | 2021年10月 7日 16:56

あらたしい が、いつの間にか あたらしい になってしまったのは数の力ですね。

ふいんき も多分おなじ運命を辿ると思います。2035年頃でないことを祈ります。

投稿: ハマッコー | 2021年10月 7日 20:48

ハマッコー さん:

「ふいんき」が定着するのは、できたら、私が死んでからに ^^;)

投稿: tak | 2021年10月 7日 22:28

ハマッコー さん

上手い!!! 思わず吹き出しそうになりました。(^^)
   ↓
‟写真はイメージです”を翻訳すると、‟写真を頭に思い浮かべて食べてください”ですね。

投稿: さくら | 2021年10月 8日 16:28

さくら さん:

これからは、「写真はイメージです」という表示を見たら、条件反射としてすぐにこの翻訳が思い浮かぶようにしましょう (^o^)

投稿: tak | 2021年10月 8日 17:45

定食屋の食品サンプルがあくまでイメージ(実物ではない)みたいなものですかね。あれにも「表の見本よりチャーシューが小さい!」とかクレームつける人がいるんでしょうか。

投稿: らむね | 2021年10月 8日 20:52

らむね さん:

私の学生時代の定食屋のサンプルは、作成技術が低かったせいか、あるいは作成代をけちったせいか、はたまた大昔に作成したままで埃にまみれていたせいか、どれをみてもまったく美味しそうには見えませんでした。

それを見れば、「まあ、こんなようなものなんだろうけど、いくらなんでも、こんなにひどいはずはない」と思うほかなく、今の広告写真などとは逆の効果を発揮していたように思います。

世の中、何が幸いするかわかりません (^o^)

投稿: tak | 2021年10月 9日 08:04

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