外来語の表記「テン/ティン/テイン」問題
昨日、ラジオを聞いていたら、ファッション関係の専門家らしい女性が出てきて、「靴下と SDGs」という、ちょっともっともらしく聞こるが、よく考えると「で、一体何が言いたいの?」という話を始めた。
「SDGs」というのは最近の流行りみたいで、この言葉を使いさえすれば「賢い人」みたいに聞こえるってことのようだ。ただ彼女は、「S はサステナブル」だとは言ったものの、残りの D と Gs に関してはスルーしていたのだが。
もちろんこれは ”Sustainable Development Goals” のことで、和訳すれば「持続可能な開発目標」となるのだが、それはまあいい。ここで問題にしたいのは、外来カタカナ言葉の発音だ。
彼女はこのカタカナ言葉を「サステナブル」(「ナ」にアクセント」)と発音していた。これって、かなり奇異に聞こえて耳障りである。
私としては元の言葉は ”sustain" (カタカナで書けば「サステイン」: 維持する、支える、持続させる)なのだから、外来語としても「サステイナブル」(「テ」にアクセント)と発音してもらいたいところだ(上の画像の『コトバンク』参照)。ところが今どきは、これをちゃんと発音する人が少ない。
仕方がないから「サステナブル」(「テ」にアクセント)なら、まだ見逃そう。しかし「サステナブル」では、「それ何?」となってしまうじゃないか。「お前、元の英語知らないだろ」とまで直接言ったら嫌みだから、控えておくが。
この問題について、「待てよ、前にもこんなようなことを書いた覚えがあるな」と思って自分のブログを検索してみたところ、以下の 3つの記事が見つかった。
「サステナブル」「エンターティナー」「プロテイン」(2021年 5月 18日)
「エンタテインメント」という言葉を巡る冒険(2014年 9月 8日)
「エンタテインメント」という言葉を巡る冒険 その 2(2014年 9月 9日)
我ながらこの種の問題には、よっぽどこだわってしまう性分なのだね。ちなみに今年 5月の記事では、「サステナブル」が定着したのは、AKB 48 が 2019年に歌った『サステナブル』が重要な役割を果たしたようだと書いている。アイドルの影響力って、『日本大百科全書』(ニッポニカ)をも上回るのだね。
ついでだから、英語で "-tain" と綴る単語が外来語として取り入れられた場合の日本語表記と発音に関して、ちょっと例を挙げてみよう。
curtain - カーテン
captain - キャプテン
mountain - マウンテン
Great Britain - グレート・ブリテン
stainless - ステンレス
とまあ、大抵は 発音が「テ」に置き換わっており、"sustainable" が「サステナブル」になるのは、この原則に沿っているようにも見える。ただ、「カーテン」「キャプテン」「マウンテン」「ブリテン」は、元の発音からそれほどかけ離れているわけじゃないからいいが、「サステナブル」は気になるなあ。
”T" の発音以外だと、"Rain" は「レイン」、"main" は「メイン」と、二重母音を維持するが、"brain" は「ブレーン」、"chain" は「チェーン」、 "training" は「トレーニング」と、単に長音になるだけ。"-ain" のカタカナ発音は、かなり例外が多くてウザい。
ただ、"entertainment" は例外中の例外だ。映画 ”That's Entertainment" が邦題「ザッツ・エンタテインメント」として公開されて以来、「エンタテインメント」が主流として定着しているように思われる。
ただし、この映画以前は「エンターティメント」なんて言っていた時期もあったようだし、YouTube で公開されているこの映画のテーマ・ミュージックのタイトルは「ザッツ・エンターテイメント」なんてことになっていて、ちょっと笑ってしまう。表記の揺れは、簡単には収まらないのだね。
さらに "entertainer" という言葉は「エンターティナー」になって、この揺れの大きさを証明している。私なんかがフツーに「エンタテイナー」と言うと、「エンターティナー」の訛りと思われてしまうらしい。いやはや。
そうかと思うと、前にも触れたが "protein" (英語の発音は「プロゥティン」に近い)は「プロテイン」と、モロにローマ字読みだ。そう言えば "cocain" (コゥケイン)も「コカイン」とローマ字読みになるが、この類いの外来語はドイツ語由来("protein" "kokain")なのかなあ。よく知らんけど。
ちなみに発音はだいぶ違うが、今が旬の "halloween" は、日本では「ハロウィン」(「ハ」にアクセント)に収束しつつあるようだ。Wikipedia の項目も「ハロウィン」となっていて(参照)、「ハロウィン、あるいはハロウィーン(英: Halloween または Hallowe'en)とは・・・」の書き出しで始まる。
本来の発音は「ハロウィーン」(「ウィ」にアクセント)に近いが、すっかり日本語化しちゃったんだということで見逃しておこう。もっとも、「ハローウィン」(「ロー」にアクセント)なんて言われると、やっぱり気持ち悪いけど。
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コメント
カタカナ語の本来のスペルを確認すれば、おかしなところにアクセントをつけたり、切れ目をつけたりすることはほぼ無いと思いますが、それを一般の人に言ったりすると、「理屈屋」とか「変人」とか言われかねないので、黙っていますけど、聞いていて耳障りであることは否めません。
投稿: K.N | 2021年10月31日 00:39
「チェーンストール」
って電気屋さんの看板もありましたので、なにとぞお目こぼしを…
投稿: 乙痴庵 | 2021年10月31日 01:27
K.N さん:
まさにおっしゃる通り。ただ、黙ってるのも辛いので、つい書いてしまいます ^^;)
投稿: tak | 2021年10月31日 08:50
乙痴庵 さん:
そりゃまたスゴい!
ちなみに、イタリア語だと "store" で 「ストール」と発音するようですが、そのチェーンはイタリア系なんでしょうかね。
だとすると、そこで買った家電はすぐに故障しちゃいそう。(イタリア人の方々、ゴメンナサイ)
投稿: tak | 2021年10月31日 09:17
チェーンストールは多分茨城県にゆかりのある会社のことだと思います。
ところで、今年一番使われた外来語は サステナブルですね。(サステイナブルではない)企業はやたらとこれを使いたがる。実体はどうあれこれを言っとけば風当たりが弱くなると思っているらしい。
投稿: ハマッコー | 2021年10月31日 23:14
ハマッコー さん:
>チェーンストールは多分茨城県にゆかりのある会社のことだと思います。
ゲゲッ ググって見たらちゃんと出てきました ^^;)
SDGs は、すっかり雰囲気の言葉になってしまいましたね。
投稿: tak | 2021年11月 1日 13:09