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2021年11月25日

中国に対する IOC の態度は「スポーツ・ウォッシング」

中国の前副首相から性的関係を迫られたと告発した女子プロテニスの彭帥選手に関して、国際オリンピック委員会(IOC)が「元気で安全だった」などと発表して火消しに走っていることを、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)が批判している。WTA(女子テニス協会)も同様に批判的だ。

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HUFFPOST の記事(参照)を初めとする複数のニュースに沿って彭帥選手の消息に関する経緯を簡潔に整理すると、次のようなことになる。

  • 11月 2日に彭帥選手が、中国の張高麗前副首相から性的関係を迫られたことを SNS で告発(参照)し、その直後から連絡が取れなくなった。

  • 11月 14日、WTAは「彼女の訴えは、完全かつ公平に、透明性をもって、検閲されることなく調査されなければならない」との声明を出した(参照)。

  • 11月 18日、中国国営グローバル放送の CGTN が、彭選手が WTA に宛てて書いたとされる「私は行方不明ではなく、安全で、全てが良い状態だ」というメールを公表。しかし WTA のスティーブ・サイモン CEO は「本人が書いたとは信じられない」と懸念を表明した(参照)。

  • 11月21日、中国共産党機関紙の人民日報系「環球時報」の編集長が、コーチ、友人とともにレストランで食事している彭選手の姿とされる映像を Twitter に投稿(参照)。WTAは、彭選手が危険にさらされていないかどうかの確認は「このビデオだけでは不十分」と述べた(参照

  • 同じ 11月 21日に、IOC がトーマス・バッハ会長らが彭選手とテレビ電話で話したと発表(参照)。バッハ会長は「彭選手は安全で元気に北京の自宅で暮らしていたが、今は自分のプライバシーを尊重してほしいと述べ、友人や家族と過ごすことを希望していた」と説明した。

  • これに関しては「30分間のテレビ電話には、中国オリンピック委員会の幹部も同席した。彭さんはなおも自由に発言できない状況に置かれている可能性もある」と報じられている(参照)。

このように「彭帥選手は無事」とする情報はすべて、伝言、真義が不確かなメールやビデオ、不自由な状況下でのテレビ電話などによるものでしかない。

11月 18日の「CGTN によるメール公開」というニュースに関連し、WTA のスティーブ・サイモン最高経営責任者は同日に出した声明で、「私はさまざまな手段を通じて彼女と連絡を取ろうとしたが、できなかった」と明かし、「彼女の安全について独立した確証が必要だ」と要求した(参照)。

そもそもこれに関しては、どうして彭選手が WTA 宛に書いたメールが CGTN の手に入るのか、メチャクチャな話である。国内でメール検閲が日常的に行われていることを、中国が自らバラしてしまったようなものだ。

さらに 11月 21日の IOC の発表は中国の官製メディアによるアヤシい情報と同レベルというほかないし、何しろあのバッハ会長の言うことだから、ますます信用できない。

この翌日の 22日、HRW のシニア中国研究者の王亚秋氏は、Twitter 上で「IOC は中国政府による行方不明や抑圧、プロパガンダ構造に積極的に加担している」と強く批判した(参照)。

彭帥選手が公開の場に元気な姿を現し、この間の経緯を自分の言葉できちんと説明し、さらに、それによる弾圧が一切ないということが確認されない限り、中国が「ヤバい国」であるというレッテルを剥がすわけにはいかない。

さらに言えば、チベット自治区のウィグル民族弾圧なども即座に止めなければ、中国は「ヤバい国」であり続けることになる。

IOC の態度は、オリンピック・ボイコットの気運が高まることのないように、まさに「スポーツ・ウォッシング」に終始しているだけと見られてもしかたがない。こんな状態での北京オリンピックは「外交的ボイコット」程度じゃ生ぬるい。個人的には「全面的ボイコット」すべきだとさえ思っている。

【2021年 12月 20日 追記】

HUFFPOST に 12月 20日付で「彭帥さん、海外メディア取材に性的暴行を否定。掲載された一問一答の内容は?」という記事が載った。

内容はリンク先を読んでいただければわかるように、彭帥さんが自ら性的暴行を受けたことを否定しているというもの。ただ、彼女の発言は矛盾点が多く、そのままには到底信じられるものではない。かなりの圧力で、暴行否定発言をさせられているとしか思えない。

 

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コメント

ナントカ男爵さんの表明のニュースを聞いて、「また買収されたんかい!」と脊椎反射で思っちゃいました。

そうでなくても、ちうごく政府か高官かの意向を、「なんとなく第三者的発言」の体で世界に発信した時点で、男爵さんの信用は失墜どころか地中深くに落ち込みましたねぇ。(そもそも信用ないしなぁ…)

そのテニスプレーヤーの元気な姿さえ見せればすべて解決するのに、できない事情があるってことでしょう?

まるで、領収書や黒塗りしてない文書を開示しない姿勢とかわらねぇなぁ。

投稿: 乙痴庵 | 2021年11月25日 19:23

乙痴庵 さん:

今や、IOC の権威は地に墜ちましたね。

そもそもあのおっさんの爵位は、「ぼったくり国」でしか通用しないもののようですね ^^;)

投稿: tak | 2021年11月25日 20:53

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