カーシャ/むきそば/年越蕎麦
「はてなアンテナ」からのリンクで、ジェーニャさんという方の「蕎麦」についての tweet (参照)にアクセスしてみた。彼女は日本でプロの声優をしているロシア人なのだそうだ。
この tweet には「ソ連育ちエピソード」として次のようにある。
一番手に入って安かった食糧は、蕎麦の実。
そればかり食べて、私にとって、貧乏の味。好きな人もいるけど、私は仕方なくそれを食べていたので、好きじゃないし懐かしくも思わない。
だから、ここだけの話、日本の蕎麦も少し苦手(美味しいとは思うけど!)うどんの方が好き❤️
大の蕎麦好きの私としては、「日本の蕎麦も少し苦手(美味しいとは思うけど)」という部分で、ちょっと複雑な気分になった。「不味い」と言ってないだけ救われるが、食べ物の嗜好というのは、気分の問題に大きく左右されるのだね。
ところで、この tweet に添えられた写真は、ロシアの蕎麦料理で「カーシャ」というものなのだそうだ。ググってみると、石田ゆうすけさんという方の「蕎麦の実でつくるロシアのお粥カーシャとは?」というページに遭遇した。こんな風に書かれている。
モチモチした食感にソバの香り。これはこれで悪くないが、麺の蕎麦を食べ慣れている僕にはほんの少し違和感があった。
ところが、カーシャが大好きだという日本在住のロシア人翻訳家に「日本の麺の蕎麦はどう思う?」とたずねると、こんな返事だったという。
「なぜわざわざ粉にして麺なんかにするんだ?バカじゃないのか?ソバに全然合わないあんなつゆにつけて。ほんとサイアク。俺は日本蕎麦なんて絶対食べない。まずすぎる。ソバは粥だ」
食べ物の嗜好に関する「気分の問題」というのは、極端に走るとこんな風に「カーシャ・ナショナリズム」なんて言いたくなるほどになる。日本にも「米のメシ・ナショナリスト」みたいなのがいて、外国で 3日過ごすと禁断症状が出てきたりしてるしね。
そういえば、我が郷土、山形県の酒田にも、蕎麦を粉に挽かないで食べる文化がある。「むきそば」という蕎麦のおかゆみたいなものだが、冷たい汁で食うので、ロシアのカーシャ(見た目は暖かそう)とはかなり違う風合いだと思う。
これ、私も酒田の生まれなので何度か食ったことがある。ただなんとなく料亭の「お通し」みたいな上品すぎるイメージで、「確かに美味しいけど、蕎麦はやっぱり麺でツルツルッとすすりたい」と思ってしまうのだよね。ジェーニャさんの日本の蕎麦に関する印象の、裏返しみたいなのがおもしろい。
とはいいながら、「むきそば」を思い出したら久しぶりで食ってみたい気がしてきたし、「カーシャ」というロシア流そば粥も、機会があれば試してみたい。私は「麺の蕎麦ナショナリスト」ってわけでは決してないので、いろいろなバリエーションがあるのはいいことだと思う。
というわけで、今日は大晦日。夜になったら「年越蕎麦」をいただくことにしよう。
============================
今年一年、ご愛読ありがとうございました。この年を気持ちよく締めくくって、さらによいお年をお迎えください。
最近のコメント