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2021年12月 7日

「シリカ水」と「ケイ素」を巡る冒険

本日の記事は、昨日付の "「シリカゲル」は「尻陰る」じゃないことを巡る冒険" の勢いで書いてしまったものである。昨日付で一挙に掲載という手もあったが、長くなりすぎるので本日付として独立させた。

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Wikipedia の「ケイ素」の項には、”ケイ素(けいそ、珪素、硅素、英: silicon、羅: silicium)は、原子番号 14 の元素である。元素記号は Si。原子量は28.1。「シリコン」とも呼ばれる” と基本的な説明があるのだが、私としてはそれに続く次の記述が気にかかってしまった。

「ケイ素(シリカ)」のように書かれていることもしばしばあるが、「シリカ」とは二酸化ケイ素のことなので、誤った表記である。

ふむふむ、「ケイ素(シリコン)」は "Si" という元素で、「シリカ(二酸化ケイ素 )」は "SiO2" という化合物。「この 2つを一緒くたにするな」ってことだ。「大気中の炭素濃度が増えている」なんて言い間違えちゃいけないのと同様だ。増えているのは「二酸化炭素濃度」だから。

ところで、昨日「シリカ」を調べた際に、どさくさまぎれのように「シリカ水」という、個人的には初耳の商品がどっさりヒットしていた。そして「重箱の隅」的な話で恐縮だが、その多くが(というか、ほとんどが)説明文中で「シリカ(ケイ素)」という、残念な誤表示をしてしまっているのである。

この記事の冒頭に掲げた画像は「アオスタ」というサイトの「シリカ水 人気の 5商品ランキング」というページの冒頭の部分なのだが、この際だから、ここで紹介されている ”ベスト 5商品” というのを検証してみよう。

第 1 位  霧島天然水「のむシリカ」

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ご覧のように、「シリカ(ケイ素)・・・・・・ 97mg」なんて表示してある。まずはしょっぱなから、単純なまでに残念!

第 2 位  フィジーウォーター

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「シリカ 93mg/L」とあり、「シリカ(ケイ素)」という典型的な誤表示は免れているが、そもそも「シリカ」というのは「二酸化ケイ素によって構成される物質の総称」(参照)ということなので、成分表示としてはかなり灰色。さらに販売終了しているということも含めて、残念!

第 3 位  シリカ ビヨンド

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「シリカ(ケイ素)は地球上で酸素に次いで2番目に多く存在する元素です」というご丁寧なまでの誤表記は、当然ながら 残念!

第 4 位  玉肌シリカ天然水

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「シリカ(ケイ素)含有量 \凄い!/  97mg/L」なんてあるので、言うまでもなく 残念!

第 5 位  ガイヴォータ

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「命水乙部ボトラーズのミネラルウォターは(中略)『シリカ(ケイ素)』を多く含んでいます」とある。やっぱり残念!

5つのうち 4つが「シリカ」と「ケイ素」の基本的区別がついていないし、「フィジーウォーター」にしても、成分表示的には灰色なので、ベスト 5 は「残念率 100%」。この他でも、大々的に広告している「おいしい水のおくりもの うるのん」というのは、「残念度」がとくに高い

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一見もっともらしい体裁だが、「シリカとは?」という項目で「英語でシリコン」「元素記号は Si」などと言い切って自分で気持ち悪くならないのが不思議なほどで、何の意味もなさない画像との合わせ技というのもサムい。

ざっと見たところ、シリカ水というのは、どうやら「ケイ素(シリコン)」を多めに含むミネラルウォーターのことを指しているようなのだが、便宜的に「シリカ水」と称されているみたいなのだね。

あるいは「シリカ(二酸化ケイ素)の形としてケイ素を含む」というココロなのかもしれない。Wikipedia によれば、「自然界ではケイ素は多くの場合、シリカの形をとっている。最も一般的な形状は石英である。また、砂の主成分であり、ガラスの原料となる珪砂もシリカからなる 」とあるからね(参照)。

というわけで、「ケイ素水」ではお洒落じゃないし、 「シリコン水」だと半導体を連想してしまって飲料水っぽくないとか、語感的な抵抗があるので、その辺をテキトーにぼかして「シリカ水」に落ちついたんだろう。

その気持ちはわからないではないが、とはいえ説明文中で無防備なほどストレートに「シリカ(ケイ素)」と表示しちゃうのは、ビミョー以上に問題だ。Wikipedia で「ケイ素」の解説を書いた人は、このあたりの事情によほどムカついてしまってるんだろうと拝察される。

シリカ水の供給側の気分としては「雰囲気のモノ」というのが大きいみたいなのだね。この業界の人が自分の売り物の基本情報について、科学的に正確な記述をする発想がないらしいというのも、「気分/雰囲気優先」からの当然の帰結という気がする。

まあ、私は金を払ってまでそんな水を取り寄せて飲む気はないから、別にどうでもいいんだけどね。

 

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コメント

こんどはこんなエセ科学ですか。毎度毎度懲りないなあと思いますが、毎度毎度騙される人がいて、毎度毎度儲かるんでしょうね(笑)

>「ケイ素水」ではお洒落じゃないし、 「シリコン水」だと半導体を連想してしまって飲料水っぽくないとか、

ケイ素水だと、完全にブームも終わってどうやらインチキらしいと認知された「水素水」っぽくなるのを避けたのかも。
シリコン水だと、おぱーいを大きくするために入れるアレだと思われるからかと予想します(こういう層はシリコンと半導体がリンクしません←偏見)。

投稿: らむね | 2021年12月 7日 22:13

らむね さん:

>シリコン水だと、おぱーいを大きくするために入れるアレだと思われるからかと予想します(こういう層はシリコンと半導体がリンクしません←偏見)。

なるほど、納得です ^^;)

投稿: tak | 2021年12月 8日 01:12

豊胸に使うあれはシリコーン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B3
という物の一種で、またまた別物なのですが、まぁ区別できてないですよね。

投稿: automo | 2021年12月 8日 08:29

automo さん:

へえ! ちっとも知りませんでした。

世の中、本当に油断がなりません ^^;)

ありがとうございます。

投稿: tak | 2021年12月 8日 08:57

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