「お屠蘇」の文化の危機
正月に飲む酒のことを、言葉の上でだけちょっと洒落て「お屠蘇」なんて言うのだと思っていたが、駅前糸脈の 1月 3日付「北帰行」を読んで、そうじゃないと初めて知った。さすがにお医者様だけに、正月にはいつも「ちゃんとしたお屠蘇」を飲まれていたらしい。
ただ、昨年暮れはお屠蘇を買い求めることができなかったとのことで、次のように書かれている。
正月三が日とも日本晴れで休んでいるのが勿体ない気がしてしまう。お屠蘇を飲んでと言いたいところだが、 家内が暮れにお屠蘇を買いに行ったら「お屠蘇って何ですか」と聞かれ置いてないとのことで今年は酒味醂を合わせたもので済ませた。
上の画像からもリンクされる日本名門酒会の「お酒の歳時記/お屠蘇」のページに、お屠蘇とは「酒やみりんに生薬を付けた一種の薬草酒で、邪気を払い無病長寿を祈るおめでたいお酒です」とある。いやはや、そんなこととは明確には意識していなかった。
そう言えば、前に初詣で神社に正式参拝した時に、「屠蘇」と書かれた小袋に入ったティーバッグみたいなものを戴いたことがあるが、あれがその「薬草」だったのか。私は単なる「気分の問題」としか思っていなかった。不信心なことである。
私の父は「酒はお猪口一杯なら美味しいと思うが、二杯飲んだら死ぬ」というほどの下戸だったので、我が家では正月でも酒を飲むという習慣がなかった。そんなわけで、「お屠蘇」というものの本当の意味を知らないまま、この年になってしまっていたわけだ。
で、正式なお屠蘇ってどんな生薬を漬け込んだものなのかと調べると、同じページにこんな表がある。うむ、確かに体に良さそうだ。
ただ、東日本では「正月だからお屠蘇をいただく」と称して単なる酒をがぶ飲みするおっさんも多い。冒頭で紹介した「駅前糸脈」でも、店員が「お屠蘇」を知らなかったとあるので、私が「お屠蘇」の本当の意味を知らなかったのも仕方がないかもしれない。
というようなことで、昨今は「お屠蘇文化の危機」にさしかかっているのかもしれない。昨日のテーマの「お雑煮」はまだまだ健在のようなのに。
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コメント
子供に飲ませられないものは伝承の機会が大きく制限される、みたいなところはあるのかもしれませんね。趣味で飲むようなものでもありませんし。
投稿: 柘榴 | 2022年1月 4日 22:58
屠蘇問題(笑)も 雑煮と同じで地域性の問題かもしれませんね。
私は 普通に屠蘇散を使った薬臭いものと思っていました(両親が九州出身)が、妻は屠蘇散の存在すら知りませんでした(こちらは中部地方産)。
投稿: Sam.Y | 2022年1月 5日 16:43
柘榴 さん:
>子供に飲ませられないものは伝承の機会が大きく制限される、みたいなところはあるのかもしれませんね。
そうかもしれませんね。
今は核家族が多いので、酒の飲める年齢になってから結婚などで家を離れるまでの期間は短いですから、伝わりきれない部分が大きいでしょうね。
投稿: tak | 2022年1月 5日 17:00
Sam.Y さん:
>私は 普通に屠蘇散を使った薬臭いものと思っていました(両親が九州出身)が、妻は屠蘇散の存在すら知りませんでした(こちらは中部地方産)。
丸餅文化の地域は、お屠蘇文化が伝わっているという仮説を立てたくなりました (^o^)
私の生まれたところは、丸餅でも焼いて雑煮にするという点で、外れるということで。
ありゃ、しかし Sam.Y さんは丸餅を焼いて食う文化のある九州ご出身でも、屠蘇散をしっかり伝承されていたというので、そのあたりはなかなか複雑ですね。
まあ、ざくっと言って、東日本は「屠蘇文化」が薄まっているみたいですね。
投稿: tak | 2022年1月 5日 17:06
子供時分の我が家のお屠蘇は味醂でしたので清酒でも作るというのは家を出てからですね。
今在住の北関東でも薬屋には屠蘇散売ってます。
でも子供時分(横浜)年末の味醂におまけで屠蘇散ついてたぼんやりとした記憶が。
今年は誰も飲まずに余るからという事でお屠蘇なしでした。
投稿: automo | 2022年1月 5日 17:23
automo さん:
へえ、薬屋でも屠蘇散売ってるんですね。知りませんでした。私はよほど「お屠蘇」に縁遠いみたいです。
家族の誰も飲まないのなら、自分で作って自分で飲むしかないかもしれませんね。「屠蘇文化」継承のためにも (^o^)
投稿: tak | 2022年1月 5日 18:32