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2022年1月12日

「ヤード・ポンド法」のストレス

Twitter で、Takuro Daimaru さんという方が、興味深い tweet をしておいでだ(参照)。仕事の面白さも待遇も問題ない会社に引き抜かれた元同僚が「早く転職したい」と言っており、その理由は、その会社の使ってる単位がヤード・ポンド法だからなのだそうだ。

220113

これについて Twitter では「#ヤード・ポンド法を滅ぼそう!」という動きもあり、上の図の下にあるようなステッカーまで作られている。大方の思っているよりは、ずいぶん大変な話のようなのである。

Wikipedia によれば 2019年時点でヤード・ポンド法を公式に使っている国は、 アメリカ合衆国、ミャンマー、リベリアの 3カ国のみ(参照)なのだそうだ。しかも「リベリアでは民間主導でメートル法への移行が行われ」ており、ミャンマーでも「2013年に、メートル法への移行を準備」しているとある。

一方でヤードポンド法の本家本元みたいな英国はなかなか複雑な話になっており、1990年代の EU のメートル法化の動きに一応は倣ってはいるものの、実際には随所にヤードポンド法の表示が残っているという。少なくとも日本の尺貫法より、ずっと強力に続いているようなのだ。

実は私もその昔、英国に本部を置く団体に所属して、毎日のように英語で送られてくるプレスリリースを日本語に翻訳する仕事をしていたことがあるので、ヤード・ポンド法には結構お馴染みだった。当時、英国発の文書では当たり前のようにヤード・ポンド法が使われていたのである。

とはいえ、私の場合は単に言葉上で翻訳すれば済む話だったので、それほど悩まなくて済んだ。ところが実際のもの作りをする現場では、製品のサイズ表示の際にきちんと換算する必要があるので、かなりややこしいことになる。

とくに「ねじ」などの場合は、大変なことのようなのだ(参照)。ホームセンターなどのねじ売り場でも、「ミリねじ」と「インチねじ」というのがあり、しっかりと区別して売られている。

私のような数字音痴がこんな業界にいたら、確実に気が狂ってしまうだろう。冒頭に紹介した tweet にあるように、かなり条件のいい職場でも転職したくなるという気持ちも、わかるような気がする。

ちなみに細かいことではあるが、「ヤード・ポンド法」という名称は、日本における呼称で、直訳しても国際的には通じないらしい。さらに日本の計量法における表記は、「ヤードポンド法」(中黒「・」を挟まない)ということのようなのだ。こんなところにいたるまで、面倒な話なのだね。

 

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

ゴルフ以外ではあんまり聞かないですね
(´・ω・`)

投稿: ひろゆき王子 | 2022年1月13日 09:28

ひろゆき王子 さん:

それと、ボクシングのウェイト。
https://www.jbc.or.jp/info/howtobox/kiso.html#class

プロレスもですね (^o^)

投稿: tak | 2022年1月13日 10:44

結構深刻なことで、このせいで火星探査機数百億円がパーになったり、飛行機が墜落したりしてるみたいですね。

ミリオタとして知ってるのは、戦間期に巡洋艦の主砲弾の直径を8インチ(20.3センチ)と条約で決めたとき日本はメートル法だったのでキリのいい20センチちょうどで作ったところ、その3ミリで砲弾の威力が大幅に下がってしまい結局20.3センチで作り直した、とか。
またWWⅡでフランス戦艦がドイツの占領からアメリカに逃げたとき、主砲が38センチなんですが米英で用意できる弾が38.1センチ(15インチ)だったので砲身を削りなおした、とか。
そんなことがあったようです。

投稿: らむね | 2022年1月13日 23:06

らむね さん:

へぇ〜〜〜!

知らなかった。大変な話なんですね!

投稿: tak | 2022年1月14日 05:47

ミリネジとインチネジ…

もう30年近くも前になりますが、HDD商社にいた頃、
そのHDDの固定用ネジがミリ/インチで面倒だったことを思い出しました。
いわゆる国産(東芝や富士電機、アルプス電気など)のHDDはミリネジ、海外産(SeagateやWestern Digitalなど)はインチネジが仕様で、PCへ内蔵する際によく間違ったものでした。

確かに、ネジ問題は未だに続いていますもんね。

投稿: もりけん | 2022年1月15日 04:56

もりけん さん:

そりゃまた、面倒なことでしたね。

クルマの仕様の右ハンドルと左ハンドルみたいなことだったら一目瞭然ですが、小さなネジでは、仕様書を確認しないと実際にやってみるまでわかりませんね。

いや、そもそも、完成品としての PC 仕様書にそんなところまで触れられてるんでしょうか? メーカー名を確認して、そこから推定するしかないんでしょうかね。

いずれにしても、フラストレーションのたまる話ですね ^^;)

投稿: tak | 2022年1月15日 08:06

さらに 分数方式に戸惑いますよね。
定規も目盛りの数に注意しないと間違うことがあります。
1インチの間を 8目盛りとか 16目盛りに分割してあるので 1インチから右に3つ目の目盛りの読みは 1.3ではなくて 1 3/8 みたいになります。

ねじは 3mmくらいのところが鬼門です。
<a href="https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_inchikikaku.html">こんな具合</a> ちなみに メートルねじだとM3(外形 3mm ピッチ 0.5mm 角度60度)なので 入りそうで途中で引っかかったり無理をしてつぶしたりします。

投稿: Sam.Y | 2022年1月16日 17:54

すみません 確認画面だと リンクが使えたんですけど、、
https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_inchikikaku.html
です。

投稿: Sam.Y | 2022年1月16日 17:58

Sam.Y さん:

うわぁ!

リンク先画面を見た途端に、目まいがしました ^^;)

投稿: tak | 2022年1月17日 08:05

水配管は今でもよくインチサイズを使ってますね。
慣れると見ただけでこのネジはインチだな、と分かるようになりますが他では役に立たない特技です。
分かるのはインチ、ミリの違いだけで、9/16インチとか言われてもサイズ感がつかめません。インチに加えて分数なんて何がなんだか。

バイオリン等の弦楽器も子供用は1/2とか1/4サイズですし、なぜそんなに分数が好きなんでしょうか。


投稿: ウサマロ | 2022年1月18日 11:47

ウサマロ さん:

確かに、分数ってかなり多くの分野で使われてますね。数字音痴の私としては、戸惑うばかりです ^^;)

投稿: tak | 2022年1月18日 20:50

以前はけっこうPC自作派だったので、HDDの固定などでのミリねじ/インチねじ問題は懐かしいですね。もっとも、自作派用のネジセット(ミリ/インチ両方けっこうな数が揃っている)が入手しやすかったので、現実問題としては、「あ、これミリか」などと適当に見た目が違う奴を選ぶだけで済んだのですが。

ラグビーだと、優劣の判断においてもルールの面でもわりと大事な「22メートルライン」。他のラインは10メートル、5メートル、15メートルと切りがいいのに、なぜこのラインだけ中途半端なのかというと、かつて「25ヤードライン」だったのを、それに一番近い22メートルにしたのだとか(四捨五入だと23メートルになりそうですが)。

投稿: 山辺響 | 2022年1月24日 16:24

山辺響 さん:

へえ、ラグビーの「22メートルライン」も、ヤード・ポンド法の名残ですか。掘り下げれば掘り下げるほど、かなり根深いですね。

投稿: tak | 2022年1月24日 16:44

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