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2022年1月24日

ひらがなの「そ」の字の書き方

Quora の「昔は大丈夫だったけど今はアウト!ってどんなものがありますか?」という質問にはいろいろな答えが寄せられているが、最近驚いたのが、ひらがなの「そ」の字の書き方に関するものだ(参照)。今は一画で書くのが正しいとされていて、小学校では二画で書くと先生に訂正されるらしい。

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竹尾康代さんという方が ”私の知っている「そ」は二画” と書かれていて、何を隠そう、私もフツーは竹尾さん同様、二画で書く。

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確かに今どきは、ほとんどの活字が一画の「そ」になっている。しかしこれは、どちらか一方が正しくて他方は間違いという問題ではない。こんなのは今さら文科省が定めるようなことではないのである。

それは、ひらがなの「そ」の字の成立過程を見れば明らかだ。言うまでもなくひらがなの「そ」の字は漢字の「曽」の字の草書体からできている。

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この「曽」の字の上の部分を続けて書けば一画になり、放して書けば二画になる。ただそれだけのことだ。一般的な明朝体やゴシック体の漢字の「曽」の字は離して表現されているのだから、ひらがなになった途端に「離して書くのは間違い」と言い出すのは乱暴すぎる。

それどころか、元の漢字の「曽」は楷書体で離して書くのだから、ひらがなの「そ」も本来は離して書くのが正統という屁理屈だって成立しそうだ。(注: これは文字通り「屁理屈」でしかないので、あまり振りかざさないように)

そもそも手書き文字というのは、そんなにきつく縛り付けるようなものじゃない。デジタルじゃなくアナログな次元の問題なのだから、どちらか一方に決めつけるのはおかしい。

ただ、この方面の専門家であるらしい押木秀樹氏は、"ひらがな「そ」の字形と知っておくことの意味" というページで、無用の混乱を避けるために対象の年齢層によって、次のように指導すればいいとしている。

  • 小学校1年生くらいなら:どっちも間違いじゃないけど、つなげて書こうね!
  • 同  中学年くらいなら:どちらも間違いではないけど、つなげて書く方が一般的です。
  • それ以上なら:社会的にどちらも「そ」という文字として認められています。一般的には「つながった字形」が多く使用されていますが、これは個人の使用に任せられていると考えられます。

なるほど、これなら納得できる。同様の問題は「さ」と「き」の字についても言える。要するに下図のようにつなげても離してもいいのだが、押木氏はこの点についても "ひらがなの字形はどう教えたらよいのでしょう?" というページで妥当と思われる説明をしておられる。

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それにしても小学校の教師ごとき(ムカついたので、この際敢えて「ごとき」と書いてしまう)が、離して書いた「そ」の字に「ダメ出し」をするなんて、鬱陶しい世の中になったものである。

 

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コメント

「そ」「さ」「き」とも離して書きますねぇ。でも確かにこうやって入力してみると、フォントではどれもつながっている。

もっとも最近では手書きの機会そのものがほとんど無くなっていますが(努めて書くようにしないと、本当に書けなくなりそう…)

投稿: 山辺響 | 2022年1月24日 09:28

山辺響 さん:

離して書くのは、高年齢層のようです (^o^)

ちなみに私は、PC を日常的に使っている割には、手書きの機会がかなり多いです。取材やミーティングなどの際のメモは全て手書きにしていますので。

ミーティングのメモなどは、40〜50代の頃は直接 PC で打ち込んで、会議が終わったらそのままプリントアウトして議事録として発行できるようにしていましたが、最近はそうした事務局的仕事を離れたので、手書きに戻っています。

昔の仕事柄、手書きはかなり早いです。ただ急ぎ過ぎた場合は、後になって自分の字の解読に苦労する場合もありますが ^^;)

投稿: tak | 2022年1月24日 10:51

>離して書くのは、高年齢層のようです (^o^)

5才下の家人は、「つなげて書くように習った」と申しております…。そのあたりで世代の断絶が(笑)

10年ほど前、手書きで翻訳してからPCで入力しなおしてメールで納品する、なんてこともやっていたのですが、余裕のあるときはそれをまた復活させようかなぁ…。

投稿: 山辺響 | 2022年1月24日 16:27

山辺響 さん:

ウチは半年違いですので、二人とも「離して書く派」です。

ちなみに、手書きはボケ防止にいいらしいですよ (^o^)

投稿: tak | 2022年1月24日 16:47

私はこういう件では大体教師の味方ですが(笑)

私も二画の”そ”をみたら「間違いでは無いけどこっちのがいいよ」と一画の”そ”を教えると思いますね。元ネタ記事では
>二画の「そ」を使って書いていたら、先生から訂正が入ったのだとか。
とあり、これがどれほど強い禁止の意図をもって指導されたかわかりませんが。

リンク先の押木秀樹氏の言はとても上手くまとめられていて私の考えにも近いです。ご覧になられたかと思いますが特に関係する部分を引用します。

>習い始めの子どもたちにとっては、「とりあえずどう書けば良いのか」ということが重要であり、曖昧な内容ではなかなか学習が進まないのです。
>もし小学校1年生を担当した先生の「そ」と、2年生を担当した先生の「そ」とが異なっていたら、混乱してしまう子どももいることでしょう。
>許容という概念や字形のゆれについて理解できない子どもたちを相手にする小学校教師の場合は、一方に統一することが望ましい、現在ではつながった形が一般的ですので、そちらが望ましいといえそうです。

投稿: らむね | 2022年1月25日 11:46

らむね さん:

おっしゃることはよくわかります。「とりあえずのお約束」ってことですね。

ただ、一方が正しく、他方を「間違い」とされると、これまで二画で書いてきた人たちの「ショック」ってものがありますので、そちらもご考慮いただきたいという話です。

「俺ら、もう古いってことかよ!」てなことにならないように、高年齢層には「両方ありですよ」ということで (^o^)

投稿: tak | 2022年1月25日 15:33

「間違い」と言われるとショック、という意味では、漢字の異体字の問題もありますね。「吉田」とか、士ではなく土の人もいると思うのですが、漢字テストで「間違い」と言われたら傷つきそう…。「高」のハシゴとかも…。

投稿: 山辺響 | 2022年1月28日 13:35

山辺響 さん:

名前の漢字が異体字の人は、もう「そんなもの」と思ってるようですけど、深いところでは「何なんだよ、まったく!」という思いが沈殿してるかもしれませんね。

投稿: tak | 2022年1月28日 16:18

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