プーチンはまだ「戦争では誰も勝たない」と知らない
「文春オンライン」が "《ウクライナ侵攻》「太平洋戦争中の日本のような状況」" と伝えている。うむ、我々はこの「太平洋戦争中の日本」というのを忘れてはならない。
冒頭にウクライナの破壊された高層アパートの写真が配されたこの記事は、【「洗脳されてしまう」プーチン指揮下ロシアの恐ろしすぎる “プロパガンダの実態” と内部に芽生えた “希望” とは】というサブタイトル付きだ。確かに太平洋戦争中の日本国民も、ほとんど洗脳されていたようなのである。
1941年 12月、電撃的な真珠湾攻撃の成功が伝えられた時、日本国内は湧き立ったと伝えられている。恥ずかしい歴史だ。
その点、ロシア国内ではウクライナ侵攻後に反戦デモが行われた。そして国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のオンライン非公開会合で、ロシア代表が自国によるウクライナ侵攻の正当性を否定した上で謝罪を表明している(参照)。こうした点では、まだ少しはマシなような気がする。
「洗脳」のひどかった日本とドイツは先の大戦で大敗して目が覚め、今は世界の主要国の中では最も平和的な国と(一応)思われている。その他のヨーロッパ主要国も植民地の独立運動などで、戦いの無益さを思い知らされた。米国は調子に乗ってベトナム戦争に突入したが、どうにもならなくなって手を引いた。
世界の主要国の多くは、既に多かれ少なかれ戦争には懲りている。そして現代の戦争は「明確な勝ち負け」で決着が付くというよりも、その過程で拡大する自己矛盾に当事国自身が耐え切れなくなり、止むなく手を引いて終わるのである。やはり「戦争では誰も勝たない」のだ。
ただ世界には、このテーゼを未だ知らない大国がある。ロシアと中国だ。この二つの国は、今の世の中でも「戦争に勝てば利益を得られる」と信じているフシがある。
今回ウクライナに攻め込んだロシアはソ連時代、第二次世界大戦終了間際に日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦布告した。その結果、北方四島などを火事場泥棒的に占領して今に至る。2014年のクリミア危機に介入した際にも、結局は自国領土を拡張する結果となった。
つまりロシアは、「戦争で懲りる」という経験をまだしていない。独裁者プーチンは 1991年のソ連邦解体の意味をまともに理解しておらず、むしろそれ以前の(彼にとっての)「よき時代」への回帰を望んでいるようにさえ見える。この点で彼は、「精神的にはまだ子ども」である。
今回のウクライナへの一方的な侵攻には世界のほとんどが批判的で、経済制裁などを行う方針である。短期的な解決は期待できないかも知れないが、いずれにしてもプーチンの期待する果実など得られるわけがない。
ロシアは戦略核を運用する部隊を「特別態勢」に置いたと伝えられる(参照)。つまり「いつでも核のボタンを押せるぞ」というアピールだ。一部では彼の精神状態を疑問視する声も出ている(参照)ほどである。確かに彼の精神状態が「まとも」だったら、そもそも今回の事態は起きなかっただろう。
しかし私は、プーチンが「戦争では誰も勝たない」ことに最後まで気付かないほど頭が悪くはないと信じたい。完全に気が狂ったわけではないだろうから、できるだけ早く気付いて戦争終結に向かってもらいたいと思う。
そして同時に、中国がそれに学ぶことも期待する。自らの直接体験として戦争に懲りるまでは気付かないとしたら、それは世界の不幸である。
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コメント
おそろしやとゆーくれいんの一悶着の様子見で、大陸が中華民国(あえてこの表記)に侵攻するのではないか?と言うご意見も散見します。
「攻め滅ぼして」を繰り返してきた大陸文化は、「過去に学ぶ歴史に学ぶ」ことなど微塵もないんでしょうねぇ。
もう信憑性のかけらもない「南京」のお話、今起こっている「チベット・ウイグル」のこと。
一括りにはできないことですが、おまはんたぁ、自国の歴史は「なかったこと」なんやなぁ。
よっぽど、その歴史や風習は、日本の方が根強く残ってますねぇ。
もうすぐ桃の節句ですねぇ。
投稿: 乙痴庵 | 2022年3月 1日 19:56
乙痴庵 さん:
昔からいろいろすったもんだしてきた西欧と、単純に東に向かって拡大してきたロシア、そして大体決まり切った領土の中での王朝交替の経験しかもたない中国とでは、同一に論じることはできませんが、いずれにしても、西欧の方が「揉まれてきた」のは確かなのでしょうね。
日本は早めに「戦争に懲りる」経験をしただけ、幸せなのかもしれません。
投稿: tak | 2022年3月 1日 21:00