留学と海外出張
Q&A サイトの Quoraに、「留学をして英語が話せるようになる人とならない人には、どのような違いがありますか?」という質問が寄せられている。
確かに「米国への留学経験がある」なんて言ってるくせに英語が下手っぴいな人って、少なくない。ここで某元首相の名を持ち出す必要もないだろうけど。
私なんかそんなに裕福な家庭で育ったわけじゃないので、自分が留学するなんてことは一度も考えたことがない。夢のまた夢みたいに思っていたものだ。
ところが、「米国に 2年間留学してた」なんていう「留学経験者」の英語を聞くと、「あんた、その程度の英語力で『留学経験がある』なんて、よくまあ恥ずかしげもなく言えるよね」なんて言いたくなることが結構多い(実際には言わないけどね)。はっきり言って、投資効率悪すぎじゃなかろうか。
これに関して、冒頭の Quora のサイトで英語講師の Nicky Sekino さんは、「私の経験からいうと、留学をしてもあまり英語が話せる様にはなりません」と明確に答えておられる。私は経験がないから「へえ、そうなんだ!」と思うばかりだ。
彼によればフツーの留学生活というのは、授業に出てアパートに帰り、予習復習をするだけなんだそうだ。たまにコンビニで買い物をして、店員に "Hi" と声を掛けられ、精算し終えて ”Thank you." と言うだけでは、せっかく外国で暮らしながら、会話の機会が圧倒的に少なすぎる。
英語が上達する人というのは、学校以外に生活のある人だという。キャンパスの食堂でアルバイトをすると、ボーッとしているわけにいかないので英語がメキメキ上達すると彼は指摘する。
なんだ、私は留学というのは、そんなように積極的に現地社会に入り込み、交流をもちまくるためにするのだとばかり思っていたが、そうじゃなかったのか。単に「留学のための留学」というのでは、語学的ハンディの中でよくわからない授業を受けて帰るだけで終わってしまうだろう。
元日本語教師の Hide Noguchi さんという方は、「性格的には『話し好き』で、好奇心があって、いろいろと話したいことをたくさんもってることが大切」と答えておられる。日本人には自分の意見をはっきりと言う人が少ないので、「日本人をやめる必要がある」とまでおっしゃっている。なるほどね。
私は留学の経験はないが、海外出張の経験だけは結構ある。海外での国際的トレードショー(展示会)の取材をする時などは、そうした展示会視察の団体ツァーに潜り込んで経費を浮かすことがあるのだが、そんな場合は一緒に行った日本人とはできるだけ距離を置くことにしていた。
そうしないと、「彼は英語がしゃべれるから頼りになる」なんて思われて付きまとわれてしまい、仕事にならなくなるからである。現場で外国人の話を聞くために出張しているのに、日本人とメシ食ってばかりいなければならなくなってしまったら、お笑い草としか言いようがない。
あげくの果てに、仕事上でつながりのあるオッサンの「出張報告書」まで代筆してやらなければならなくなる。オッサン、出張先では日本料理店でメシ食って酒飲んで、あとは奥さんへの土産用のブランド品と会社の同僚へのどうでもいい買い物してるだけだから、まともな出張報告が書けるわけない。
まあ、こうやって「貸し」を作っておけば、後になって別の形で返ってくるからいいけど。
ただ、せっかく外国に行って一緒に行った日本人としか付き合わずに帰ってくるなんて、もったいないと思わないんだろうか? もしかしたら、留学ってこうした海外出張と似た構造をもってるのかもしれない。
せっかく行ったのに、現地の空気をまともに吸わずに帰って来るという意味で。
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