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2022年3月 2日

「プーチンは狂ってる」と見ることのリスク

昨日の "プーチンはまだ「戦争では誰も勝たない」と知らない" という記事で、「彼の精神状態を疑問視する声も出ている」ことに触れた。ニューヨーク・タイムズも、ロシアのウクライナ侵攻が始まった先月 24日付で、プーチンの考えが無茶苦茶になっていると報じている。

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この記事は "Russians Now See a New Side to Putin: Dragging Them Into War" (ロシア人は今、プーチンに自分たちを戦争に引きずり込む新しい側面を見ている)という、Anton Troianovski 氏(ニューヨーク・タイムズ、モスクワ支局チーフ)によるもの。

これを受けて、東洋経済 ONLINE は昨日、”専門家が指摘「プーチン」にコロナ禍で起きた変化 「賢い指導者」という国民の信用は裏切られた” というタイトルで翻訳記事を載せている。

ロシアは実際にウクライナ侵攻を始める前に、国境付近に軍備を移してかなりの緊張感を演出していたが、この時点での識者の見方は「ロシアは本気」論と「ブラフにすぎない」論の 2つに大別されていた。結果として「ロシアは本気」論が正解だったわけだが、だからと言って単純な見方は決してできない。

一般論としては「ロシアの挑発はブラフにすぎず、本気で侵攻することはあり得ない」とする方が、ずっと理性的な見方だったからだ。実際に行動に移してしまえば世界中からシリアスな制裁を受けるのが確実で、理知的なプーチンがそれを読めないはずはないとみる方がより現実的だったはずなのだ。

しかしプーチンは、やってしまった。「ロシアは本気」と予測していた日本の評論家の中には、「それ、見たことか。ロシアが理性的な国じゃないことことぐらい、見抜いておくべきだった」と、鬼の首でも取ったような言い方をする向きまである。

ちなみに私自身も、「ロシアは実際に攻め込むだろう」と思ってはいた。しかしそれは北京のパラリンピックが終わってから(つまり今月後半)で、しかも首都キエフまでには迫らず、限定的な作戦になるだろうと考えていたので、現実のニュースにびっくりである。やはりプーチン、どこか理性を失っている。

そしてここに来て注目すべきなのは、プーチンの精神状態が不安定とするニュースが少なからず報じられていることで、夕刊フジなんかは「狂気の〝核暴走〟プーチン大統領、危うい精神状態」と報じている。これは、米国の意識的なプロパガンダに便乗しすぎだと思うのだが。

ここに来て私が危惧するのは、「気の狂った独裁者の支配する国が相手なんだから、どんな強硬な手段に出てもいい」とか「とことんやっちまえ!」とかいう跳ね返った世論にまで誘導されかねないということだ。そんなことになったら、下手すると全面戦争になるリスクまである。

「プーチンは狂ってる」と言ってしまえば安易な共感を得やすいだろうが、それは逆に危険な流れを呼び込む。実際 75年前に「頭の狂った日本には、原爆を落とせばいい」という酷い思いつきが現実化されてしまったように、核のボタンまで押されかねない。

チャイルディッシュなことでは定評のある日本の元首相には、もう少し大人になってもらいたいものだ(参照)。プーチンが理性を失ったとしても、世界までそれをかなぐり捨てていいわけじゃない。

 

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