前世紀初頭の多機能鋏を巡る冒険 その 2
昨日の続き。「多機能鋏」の使い方の残り半分(10番目から 18番目)である。我ながら物好きなことを 2日連続で書いているわけだが、まあ、連休でもあるし、気楽にお付き合い願いたい。
- 10番目は「葉巻箱開け」(Cigar-box-opener)
一昨日の記事では、たいみちさんのラジオでの言葉通り「缶切り」と紹介させていただいたが、実際は葉巻箱の蓋をこじ開けるもののようだ。
開け方は、下の動画 で見ることができる。お急ぎの場合は前半を飛ばして 1分 10秒あたりから先を見るといい。
- 「カートリッジ・エクストラクター」(Cartridge-extractor)
この説明書の最大の問題が、この「カートリッジ・エクストラクター」という用途。直訳すれば「カートリッジ引き出し機」だが、わけがわからないので、3日前の記事では「どんなものか、謎」と書くほかなかった。
ところがその後、らむねさんのコメントで「銃の薬莢を取り出すもの」(参照) ではないかというヒントが与えられた。調べてみると確かに英語の "cartridge" という単語は、元々の意味が「薬莢」ということのようだし(参照)、それで正解だろう。主目的は狩猟用の銃用かも知れない。らむねさんに感謝である。 - 「金槌」(Hammer)
当初はこんな小さくて軽い物が金槌になるものかと、18通りの使い方の中で一番の無理筋に思えたが、上述の「葉巻箱開け」の動画で、蓋を開いた後に閉じる際、小さな釘を打ち込む場合があるとわかった。その程度のことなら箱の材質も柔らかそうだし、この軽さでもできるだろう。なるほど、なるほど。
いずれにしても、このツールの登場した頃は「葉巻」というのが重要アイテムだったようだ。昔の映画を見ると、酒場のシーンなんかタバコの煙がもうもうと立ち昇ってるし、今では隔世の感がある。 - 「鉛筆削り」(Penknife)
絵を見る限り、西洋人は鉛筆を削るときに刃を手前に引くようなのだね。鋸は向こうに押し出すように切るのに(参照)、まあ、いろいろなやり方があるものだ。 - 「ガラス・カッター」(Glass-cutter)
我々日本人がフツーに知っている「ガラス切り」とは、どうもイメージが違う気がするが、それはこの絵では鋏の把手の部分が強調されているためかもしれない。
「ガラス切り」として機能するのは、その端っこに付いた小さな石みたいな部分のようだ。 - 「ガラス・ブレーカー」(Glass-breaker)
"ガラス・ブレーカー" というのは、フツーにはクルマなどに閉じ込められた際にガラスを割って脱出するための道具を指す(参照)。
画像だけではわかりにくいが、要するに分厚いガラスでも簡単に割れる道具ということなのだろう。 - マーキング・ホイール(Marking wheel)
把手の端に付いた歯車のようなものを転がしていくと、何かの目印としての点線が刻まれるということのようだ。 - 「レイジング・ナイフ」(Raising-knife)
一昨日の記事では単に「ナイフ」と書いたもの。"Rasing-knife" の英語ではよくわからないので、試しにフランス語の ”grattoir" でググったところ、「字消しナイフ、かき削り道具」と出てきた(参照)。
ということは、3日前の記事でいえば、迷亭君の言う「書き損じの字を削る」道具なのだろう。これでやっと謎が解けた。 - さて、ようやく最後の「ステレオスコープ」(Stereoscope)
レンズが 1個だけなので、決して「ステレオ効果」があるわけじゃなく、3日前の記事では「スタンホープ・レンズ」として紹介していた。小さな穴から覗くと写真が見えるというもので、迷亭君の持ち込んだものでは水着姿の女性が見えていたらしい。ただ時代が時代なので、決してビキニとかハイレグとかだったわけじゃない(参照)。
これ、たいみちさんが 2020年 11月 7日の記事で紹介されている丸善の目録(参照)には、「日露戦争の寫眞を装填したれば叉以て戦勝の紀念とするに足る」なんて書いてある。時代だなあ。
というわけで、これで 18通りの使い方の謎を曲がりなりにも解くことができた。めでたし、めでたし。(ここだけの話、結構な手間がかかったよ)
ちなみに私の 5月 2日の記事では、『吾輩は猫である』で迷亭君がこの「多機能鋏」について「十四通りに使えます」と説明していることについて、ささやかな疑問を呈しているが、これも上述の丸善の目録を見て解決した。
この目録によれば、この多機能鋏シリーズには 3種類あって、実際に 14通りのバージョンもあったのだね。それどころか「25通り」なんていうバージョンもあったみたいなのだ。
そんなにチマチマした用途がたくさんあっても実際の使いやすさとしては疑問で、要するに「話のタネ」になることの方が大切だったのだろう。とはいえ、「このほかの 7通りもの使い途って、いったいどんなものなんだ?」と、新たな疑問まで湧いてしまう。
とはいえ、今日のところはこれで一杯一杯なので、とりあえず一段落とする。興味深いネタを提供してくださった たいみちさんには、心から感謝したい。
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コメント
話がふくらみましたねえ(^^♪
大きくなっても”男の子”はこういうのが好きなんですよwかくいう私も小さなビクトリノックスを常に持ち歩いています。割と役に立ちますよ。
投稿: らむね | 2022年5月 5日 11:28
らむね さん:
>大きくなっても”男の子”はこういうのが好きなんですよw
まさに (^o^)
ビクトリノックスは、私も若い頃によく山登りをしていた頃、常に持ち歩いてました。(最近見当たらないけど、どこに行っちゃったんだろう?)
投稿: tak | 2022年5月 5日 13:25
「ビクトリノックス」という名前、久し振りに目にしました。
もう何十年も前から、車のコンソールボックスに入れてありますが、
最近は使ってないですねぇ。
釣りとか、遠出の時に役立ったものですが…。
投稿: さくら | 2022年5月 5日 16:54
さくら さん:
あっても邪魔にならず、ほんのたまに重宝するというのがミソかもしれませんね (^o^)
投稿: tak | 2022年5月 5日 21:58
ビクトリノックスの刃は実によく切れる。怖いくらいです。
山に行くときに持ってるのはいいでしょうが、普段持ち歩いてると刃体が8cmを超えると職質で逮捕されるようです。
8cm以下でも場合によっては逮捕されるケースもあるようです。
私の知人は刃渡り3cmの十徳ナイフを持っていただけでしつこく職質されたようです。
皆さんご注意を。
因みにマイナスドライバーの先端の平らな部分の幅が5mm超も正当な理由なく所持すると逮捕されます。
投稿: ハマッコー | 2022年5月 5日 22:58
そうなんですよね、長いのは銃刀法、短いのは軽犯罪法違反でしたか。そんなこと言われても「不意に必要になったときに便利」だから持ってるのであって、事前に「正当な理由」とやらが分かってるわけもなくw
まあ田舎住まいで職質などされたこともないですが、もし理由を訊かれたら「これから服を買いに行くので、タグを切ってすぐに着るため」って言おうかなと思ってます。
投稿: らむね | 2022年5月 6日 02:44
ハマッコー さん:
へえ! それは知りませんでした。
ただ、そのリスクは「別件で職質された際に、たまたまポケットから出てきた」ということだったりすると生じるんだと思います。
フツーに歩いている時に、警官がいきなり「お前、いかにもビクトリノックス持っていそうだから、ポケットの中を見せろ」と言ってくるようだと、この国、おしまいですね ^^;)
投稿: tak | 2022年5月 6日 06:58
らむね さん:
>もし理由を訊かれたら「これから服を買いに行くので、タグを切ってすぐに着るため」って言おうかなと思ってます。
それはまた、準備がいい! (^o^)
投稿: tak | 2022年5月 6日 07:00