前世紀初頭の多機能鋏を巡る冒険 その 1
一昨日の "『吾輩は猫である』で迷亭君が自慢した「多目的鋏」 " という記事で触れた、1世紀以上前の多機能鋏の画像が、嬉しいことに らむねさんのコメントをきっかけに、他ならぬ たいみちさんのブログの中で見つかった(参照)。下の画像は、そのブログにあった写真を切り取らせていただいたものである。
見れば、結構シブいデザインの鋏である。この たいみちさんの記事には、18通りの使い方を示した説明書の写真も付いており、まず、前半の 9通り目までは、下の画像(説明書の上半分)に示してある。今回はこれを元に、あれこれ詮索してみたい。
- まず最初の使い途は、当然ながら「鋏」そのもの(Scisors)
(用途は 4カ国語で表示されており、上から ドイツ語、フランス語、英語、スペイン語のようだが、私は英語以外ちんぷんかんぷん。まあ、すべて「鋏」という意味なんだろう)
鋏は鋏、一目瞭然で、とくにどうこう言ってもしょうがないので、次に進む。 - 次は「ボタンホール鋏」(Buttonhole Scisors)
なるほど、鋏の根元が少しえぐられているので、そのまま切っても生地の端までは切れず、ボタン穴が開くようになっている。
便利そうではあるが、穴をきちんと平行にし、サイズも揃えて切るには、端布で練習してからの方がよさそうだ。 - 「パイプ・トング」(Pipe Tongs)
一昨日の記事では、ラジオでのたいみちさんの言葉に沿って「ガスパイプ・トング」としていて、もしかしたらガスライター関連の道具なのかとも思ったが、液化ガスを使ったライターが世に出たのは昭和の御代になってから(参照)のようなので、そうじゃない。
ドイツ語の "rohrzange" でググると、「配管用のプライヤー」と出てくる(参照)ので、「パイプ・レンチ」と同様の、細いパイプを取り付けるのに使う配管用具と思うほかないようだ。 - 次に「葉巻カッター」(Cigar-cutter)
葉巻の端をカットして吸い口を作るもの。私なんかは「元々鋏なんだから、それでフツーに切ればいいじゃん」と思ってしまうが、それだと吸い口が潰れて興醒めなのかもしれないね。
西部劇なんかでは、歯で噛み切ってペッと吐いたりする場面もあるが、それは「お下品」ということなのだろう。 - 「ペンチ」(Wire-cutter)
『吾輩は猫である』で漱石は、迷亭君に「針金をぽつぽつやる」 なんて、”wire-cutter” の単純直訳的な言い方をさせている。当時はまだ「ペンチ」というフランス語由来らしい外来語(参照)が定着していなかったのかもしれない。
ちなみに力が要るだけに、鋏の根元を使うようだ。 - 「定規」(Ruler)
鋏の横の直線部分だが、こんなんじゃ短すぎてあまり実用にならないと思うがなあ。
もしかしたら、タイプライターで打った文書のアンダーラインを引くなどの作業を想定していたのかもしれない。手書きの文書ならフリーハンドで線を引いて済ませるところだけど。 - 「物差し」(Measure)
定規の裏の部分に目盛りが付いているだけみたいだ。これもやはり、長いものは計れないよね。小物専用だ。 - 「爪ヤスリ」(Nail-file)
爪ヤスリを英語で Nail-file なんて言うとは、初めて知った。書類などの "file" とは同音異義語で、「推敲」という意味も併せ持つらしい (参照)。一つ利口になった。 - 「ドライバー」(Screw-driver)
ネジの溝が十文字の「プラス(+)ドライバー」なのか、あるいは「マイナス(−)ドライバー」なのか気になったが、調べてみたところ、プラス・ネジがこの世に登場したのは 1935年頃(昭和初期)のようなので(参照)、『吾輩は猫である』の時代にはあったはずがない。
マイナス・ネジしかない時代のことなので、「マイナスねじ用」みたいな断リ書きをする必要もなかったわけだ。なるほどね。モノゴトは調べてみるものである。
ふう、これでやっと半分。18通りの使い方を全部やったら長くなりすぎるので、残りは明日付とさせていただく。
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