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2022年6月20日

ダンロップさん、元々私のタイヤなんですけど

ちょっと旧聞ぽいが、ダンロップが今年 3月から新しいテレビ CM を開始したんだそうだ(参照)。私はテレビをほとんど見ないので知らなかったのだが、今日たまたまタイヤに関する検索をしていたら、いきなり「あなたのタイヤに履きかえよう」なんて呼びかけられたので、驚いてしまったじゃないか。

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何事かと思ったが、確認すれば別にアヤシいサイトじゃない。あのダンロップのメイン・ページである。

思わず「ダンロップさん、何か勘違いしてません? ウチのクルマが履いてるのは他人のタイヤを拝借してるわけじゃなくて、元々私のタイヤなんですけど」と言いたくなってしまったよ。自分の金で買ったタイヤに、いちゃもんつけられる筋合いはない。

思えば、このブログでは妙な英語コピーをずいぶん取り上げてきた。例えば東京ステーションシティの "Start with You" (お前と一緒に始めなさい)とか、森の仕事ガイダンスの ”Be Myself” (私自身でありなさい)とか、マツダの "Be a driver" (運転手であれ)とかね。

Docomo が桑田佳祐を起用してやっちゃった ”Walk with You" (お前とともに歩け)とか、佐川急便の "Fit your business"(お前の仕事に適合しなさい)とかもよく知られていて、枚挙にいとまがない(参照

中には、ゼクシーの "Get Old with me"(私と共に年を取ってね)みたいな例もある。これ、初めは "Get Old with You"(お前と共に年を取れ)だったのだが、途中で「ヤバ!」と気付いたらしく、澄まして元々そうだったかのように変えちゃってたのである(参照)。

これらはまあ、日本人が陥りがちな「おかしな英語表現」ということなのだが、今回のダンロップのコピーは、日本語でやってるのだから恐れ入ってしまった。

さらに言えば、「ホントはこういうことを言いたいわけなのね」と推量することさえ難しく、無理矢理に深読みすると、こんなことになりそうだ。

小難しいことを言わせてもらうけど、あなたのクルマについてるタイヤは、実は全然フィットしてないから、この際ウチのすすめる「本来あるべきあなたのタイヤ」に履きかえてしまいなさい。

これが正解だったとしても、私としては「余計なお世話だ!」と言いたくなってしまうんだが。

のみならず、この CM に使われている視覚効果は「タイヤグラム」(「ダイヤグラム」じゃない)と言うんだそうだ。やれやれ、広告代理店の口車に乗りすぎると、笑えない笑い話になってしまう。

 

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コメント

こいつあ「てにをは」の問題ですか。
たぶんダンロップが言いたいのは「我々ダンロップのタイヤを、あなたのタイヤに履き替えよう」で、この日本語でも「交換する」という意図は通じますが、日本語として自然なのは「我々ダンロップのタイヤに、あなたのタイヤを履き替えよう」ですね。
現状のものに対して別のものをもってくるとき、助詞は「に」ですよね。「新品に交換する」とは言いますが「新品を交換する」とは言いません。後者だと「新品を交換するの!?古くなるの!?」という誤解を生みそうです。

投稿: らむね | 2022年6月20日 20:57

らむね さん:

>日本語として自然なのは「我々ダンロップのタイヤに、あなたのタイヤを履き替えよう」ですね。

うぅむ、「私のクルマのタイヤ、元々ダンロップ・タイヤなんですけど」と言われたらどうするんだろう? てなことになりますよね。

いずれにしてもダンロップさん、日本では自社のシェアが低いことを前提としてものを言ってらっしゃるようで (^o^)

投稿: tak | 2022年6月21日 00:06

「あなたのタイヤに履きかえよう」の文言は広告代理店からダンロップ社に持ち込まれて外部に表示されるまでに多分10人位の脳の中を通過してると思うんですよね。

せめてダンロップ社の社長が「何だ、これはだめだろう」と言ってもよいと思いますが、全員の脳が一切反応しないのが不思議ですね。

異論(正論)を言うのがはばかられる社風なんでしょう。

投稿: ハマッコー | 2022年6月21日 12:15

「あなたのタイヤを履きかえよう」ならば 普通の日本語だったのに。
ちなみに 英国の獣医だったDunlopさん由来のブランドですが、タイヤの商標権は米国Goodyearと日本の住友ゴムが所有しているようで アジアのダンロップタイヤはすべて住友ゴム工業(または傘下の工場)製のようです。
話がずれてしまいますが、最近よく耳にする「リーズナブルな価格」ってどうなんでしょう。
「大量生産に成功したのでリーズナブルな価格でご提供。」なら理解できますが、
「一品一品職人手作りなのに このリーズナブルな価格」といわれると、
「そうか訳アリ品か 職人もたまには失敗するんだよなぁ なるほどね。」とおもってしまいます。
実際英語圏ではどのように使っているのでしょう。

投稿: Sam.Y | 2022年6月21日 14:42

ハマッコー さん:

広告代理店のプレゼンで、全員がコロッと騙されてしまうというのは不思議な現象ですよね。誰か 1人でも「なんじゃ、そりゃ?」と言いさえすればいいのに。

>異論(正論)を言うのがはばかられる社風なんでしょう。

それって、日本全体の企業風土と言える気がします。

投稿: tak | 2022年6月21日 22:43

Sam.Y さん:

>「一品一品職人手作りなのに このリーズナブルな価格」といわれると、
>「そうか訳アリ品か 職人もたまには失敗するんだよなぁ なるほどね。」とおもってしまいます。

「リーズナブル = reasonable」というのは、「ちゃんとした理由があっての、まともな話」ということなんですが、「理由がある」じゃなく「訳アリ」という意味に変化してしまってますね ^^;)

投稿: tak | 2022年6月21日 22:47

[訳アリ」は私の脳内変換^^;) ですが、
例えば 今ググってみたら カタカナ語の解説サイト?ですが、こんな内容。
https://chewy.jp/businessmanner/12573/#i-4
<引用>しかし、10,000円しそうなものが3,000円で販売されていれば、納得できるのでリーズナブルだと思いますよね。< /引用>

某CMのおかみさん(太知真央)に登場いただいて「今野 そこに理由はあるんか?」と言って欲しい気分です。
(話がずれちゃいましたので この辺で)

投稿: Sam.Y | 2022年6月22日 17:17

Sam.Y さん:

そうか、日本では「リーズナブル価格」と言ったら「廉価」という意味になってしまってるんですね。そんなこととは知りませんでした。

ことさら安くなくても、きちんと納得できるものであれば「リーズナブル価格」というのが正しい解釈だと思います。

逆に無闇に安すぎたら、それは決してリーズナブルじゃありません。「無茶な安売り」です。

投稿: tak | 2022年6月22日 19:09

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