「デジタル推進委員」は、さぞかし疲れるだろうなあ
「デジタル田園都市国家構想」(← それにしても、この内閣官房の作ったページ、エラく読みにくくて目がチラチラする)というのが岸田政権の目玉政策の一つなのだそうで、この実現のために、高齢者らに IT の使用方法などを教える「デジタル推進委員」を全国に 2万人配置するのだそうだ。
「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」とか「地方に仕事をつくる」とかいう構想自体は悪くないが、実際は過剰な期待を抱かない方がいいと思う。別に政府がどうこう言わなくても「デジタル化」の必要性は明白なのに、音頭取りをする行政機関自体がまだまだアナログなのだもの(参照)。
この「デジタル推進委員」の募集は、既に開始されているらしい(参照)。老人などのデジタルに不慣れな層に、基本的な利用方法を教えるのが主な仕事なのだそうだ。
ただ私としては、こうした問題に関しては次のように言うほかないと思っている。
- 使える人はことさら教わらなくても、あるいは、最初の糸口を聞くだけで、既に使えるようになっている。
- 今になっても使えない人というのは、いくら教えられても、そしていつまで経っても、決してまともに使えるようにはならない。
これは私自身が周囲の同年代以上の人たち(とくに 75歳以上がひどいのだが)に頼まれて、スマホや PC などの操作方法を教えてきた経験から、もろに実感として言えることだ。
例えば、知人の A氏の場合はこんな具合だ。
彼は離れて暮らす孫の顔見たさに、息子が里帰りしてきた時に頼んで、自分の時代物の PC に Facebook をセットしてもらった。おかげでマウス・クリック一つでいつでも孫の近況を知ることができ、満足していた。ここまでは微笑ましい話である。
ところが最近、彼の母校の同窓会が Facebook で連絡を取り合うことになったため、「私のパソコンでも『ふぇいすぶっく』というのを使えるようにしてもらいたい」と言い出したのである。これには驚いた。
「いつもお孫さんの顔を見てる、それが Facebook ですよ」
「いや、あれじゃなくて、ウチの同窓会の情報が見られる『ふぇいすぶっく』を使いたいんですよね」
ちょっと呆れつつも Facebook で彼の同窓会グループに入るための手続きを教えたのだが、どうしても理解できない。仕方がないから私が彼の PC を操作し、グループ主催者の承認を得て入れてあげたのだが、それでも同窓会画面にどうしても辿りつけないみたいなのである。
「この画面のここをクリックすれば、同窓会の画面に行けるんですよ」と、しっかりと表示してあげたのだが、その晩になって「孫の顔を見られなくて困ってる」という電話が来た。その時は 10分以上かけて解決してあげたのだが、それ以後は怖くて同窓会ページには行けないと言う。
彼の PC にセットされた Facebook は、孫の顔を見るため以外の目的では使えない「おじいちゃん専用ツール」と化しているのである。
彼の場合は、曲がりなりにも好きな時に孫の顔を見られる(それ以上のことはできないのだが)だけまだマシだが、世の中にはせっかくスマホを購入しながら、通話以外のことに使えないという年寄りがいくらでもいる。よくかける電話番号は手書きでメモしてるなんて人もいるぐらいだ。
そして彼らは、いくら教えてあげてもまともに使えるようにはならないのである。ここまで来てしまったら、生きてる間はムリだろう。
というわけで、無給(なんだってさ!)で働くことになる「デジタル推進委員」という人たちは、使命感に燃えて真面目にやろうとすればするほど、ものすごく疲れることになるだろうと思いやられるのだよね。
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コメント
全くその通りです。今の年寄りには教えても無駄なんです。多分20年後には IT リテラシーの高い高齢者が誕生していると思います。
身近な高齢者にスマホの使い方を説明したら、
☆画面を一回だけタッチして欲しいのに一か所を連打する。
私:「タッチするのは一回だけ、連打するとおかしくなる」
☆「ここを二回タッチしてからここを三回タッチすればいいのだね」と言うから、
私:「そういう覚え方したらダメだ、画面と会話しながら操作しなきゃいけない」と教えましたがもう無理と諦めました。LINE をセットしてあげましたが文字入力なんて到底無理です。
ネットバンキングなんて推進しようもんなら銀行のカスタマーセンターが大混乱します。銀行が悲鳴を上げるでしょう。
デジタル推進委員の最初の仕事は、分かる人と分からない人とを判別して後者にはさっさとお帰りしてもらうことだと思います。
できる人は入り口だけ案内してあげれば you-tube などでいくらでも学習できます。
それからネット社会の怖さを教えてあげることも必要です。
この計画は頓挫するとおもいます。(国のやることなんで頓挫しても多分続ける)
投稿: ハマッコー | 2022年6月 2日 23:25
要は、子や孫や、携帯電話ショップの店員がやっているような高齢者サポートを、お役所がやってくれるってことですかね。私も頻繁に両親のそれ系サポートをやっていますが、身近に訊ける人がいなければ全然違うんでしょうね。
そういえば先日近所で、60ぐらいの男性に道を訊かれました。なんと紙の地図と番地頼りにウロウロしていたみたいで。「スマホお持ちじゃないんですか?」と訊いたら「いや持ってはいるんですが・・・」。あ、これ地図アプリ使えない人だ、と思い、私のスマホで検索して教えてあげました(笑)。
投稿: らむね | 2022年6月 3日 00:11
書き忘れ(汗
「デジタル田園都市国家構想」これ見づらいですねえ。
文字強調に太字と赤字と下線が混在し、そして汚さに定評のあるMSゴシックだからですね。
MS系フォントは滅びればいいですw
投稿: らむね | 2022年6月 3日 00:13
ハマッコー さん:
>「そういう覚え方したらダメだ、画面と会話しながら操作しなきゃいけない」
これ、まさにデジタル音痴の人たちの共通点ですね。彼らの多くは、画面表示にはまったく関係なしに、単に自分サイドの行う操作のみを、意味もわからずメモして、操作の度にそのメモだけを見て(画面表示は見ないで)やってます。
そのうちにさすがに、その操作のみの手順だけは覚えてメモは必要なくなりますが、似たような操作が必要になっても、また一から教えてもらって、同じようなメモを作っています。
そして、最初に作ったメモとごっちゃになって、わからなくなってしまいます。
「画面との対話」ということさえわかれば、どれも同じ考え方の流れでやればいいと理解できて、新しい操作が必要になってもそれまでの流れの発想で、自分でできるはずなんですが、すべて「まったく別の個別操作」としか思っていないので、どうしようもないです。
その根底には、「自分のやりたいこと」と「その結果」のみがあって、プロセスはまったく理解できずに、「メモ」だけに頼って、画面表示との対話ができないというメンタリティがありますね。
>デジタル推進委員の最初の仕事は、分かる人と分からない人とを判別して後者にはさっさとお帰りしてもらうことだと思います。
それは正解ですね。こう言っちゃナンですが、どうせ長くは生きられないんですから、大勢に影響ありません。
投稿: tak | 2022年6月 3日 06:50
らむね さん:
>要は、子や孫や、携帯電話ショップの店員がやっているような高齢者サポートを、お役所がやってくれるってことですかね。
正確に言えば、「お役所から委任された『デジタル推進委員』がやる」という建て前なんでしょうね。
だから、「デジタル推進委員」は疲れるだろうなってことです ^^;)
スマホがあっても、紙の地図にしか頼れないというのは、よくある話ですね ^^;)
>「デジタル田園都市国家構想」これ見づらいですねえ。
>文字強調に太字と赤字と下線が混在し、そして汚さに定評のあるMSゴシックだからですね。
MS ゴシックは、とくに汚いですね ^^;)
同じMS系でも、MS明朝にして、画面の横幅を縮め、行間をまともに取りさえすれば、少しは読みやすくなるんですが。
行間がびっしり詰まって、しかも横にダラダラ続くと、たとえ文章自体はまともでも、見た目だけで読みたくなくなります。
投稿: tak | 2022年6月 3日 06:58
>この内閣官房の作ったページ
この、印刷前提のお手元スライド資料をWEBサイトの意と取られかねない「ページ」と称するのは誠実な表現とはいえないと思いますが(しかも「これはあくまで飾りのOHPで、正式な資料は3の方です」「もっと飾りの資料1もあります」というお役所のお約束w)、まあ、ちゃんとした「ページ」自体が存在しないっぽいのでしょうがないですね。
アナログ資料しかないデジタル企画のページという時点でもう笑うしかないですけど、そもそもがこういう資料しか受け付けない「そういう相手」に対するプレゼン企画なのだと考えると真顔になるしかない気もします。
せめて「Digi田甲子園」とやらの公式サイトぐらい、作ったらいいのに。せっかくの企画に「甲子園」とかいう穢れた名前を付けるお役所センスは(絶望しつつ)許容するから。
投稿: 柘榴 | 2022年6月 3日 11:50
柘榴 さん:
いやはや、同じような資料で 1,2,3 があったんですね。
>まあ、ちゃんとした「ページ」自体が存在しないっぽいのでしょうがないですね。
ということですね。
本来なら、「ちゃんとしたページ」を作って、そこに「資料 1」を添付すればいいんでしょうが、まあ、ムリですね ^^;)
投稿: tak | 2022年6月 3日 12:14