「同性婚」「選択的夫婦別姓」と、河野太郎氏の詭弁
HUFFPOST に "「同性婚」や「選択的夫婦別姓」に党として賛成しないのはなぜ? 河野太郎広報本部長インタビュー【U30×自由民主党】" という記事がある。"NO YOUTH NO JAPAN" という組織の代表という能條桃子さんの、河野太郎・自民党広報本部長へのインタビューをまとめたものだ。
この記事をざっと読むと、 "「同性婚」や「選択的夫婦別姓」に党として賛成しないのはなぜ?" というタイトルに疑問をもつ人もいるだろう。河野氏は「同性婚」に党として賛成できない理由は彼なりに述べているが、「選択的夫婦別姓」については何も明確にしていないからだ。
この 2つのことについて、河野氏は次のような原則論を述べている。
一人っ子同士が結婚をするという割合が非常に高い時に、夫婦別姓にすれば両方の姓が次の世代に残る。今は女性が男性側の姓を名乗ることが多いですが、すると結婚する前に自分の名前で発表していたことが、苗字が変わってしまうと「あれ」となってしまうこともあってはいけない。
選択的な夫婦別姓を望む人が選べるというのは大事だと思いますし、同性婚もそれがいいと思ってる人が選べる制度というのは凄く大事です。
ここだけを読むと、彼自身は個人的に「同性婚」にも「選択的夫婦別姓」の必要性について理解していて、少なくとも反対しているわけではないと読み取れる。ところがそのすぐ後に、次のように述べている。
選択的夫婦別姓にしろ同性婚にしろ、政党で一つのポジションが決まらないから国会で議論しませんみたいなことになっていますが、議員に説明させて投票させろよ、と私は正直に思います。党議拘束をなくして議員で決めましょうと言えば動くものだと思います。
案外もっともらしく聞こえるかもしれないが、要するに、自民党の広報本部長としては一歩も二歩も引いているわけだ。その「引き方」が、私にはかなりズルく感じてしまい、「逃げ」のようにさえ思われる。
さらに「同性婚」について、彼は次のように言う。
同性婚は他と違って、憲法で「両性の合意」と書かれているから、まず憲法改正をして、同性婚を他の結婚と同じように認めます、としないといけない。なかなか国会だけで一概には決められません。
つまり、「どうしても同性婚したいんだったら、憲法改正だぞ。それでもいいのか?」ということである。さらに勘ぐれば、「そうなったら、改正条項は 1つだけとは限らないかもしれないから、あまり踏み込むとリスクも大きいよ」と言外に言っているようにも聞こえる。
これって、ちょっと「妙な恫喝」だよね。さらに記事中には「同性婚には憲法改正が必須」ということには異論もあるとの客観事実も述べられているので、この「恫喝」自体、問題ありすぎで、要するに自民党としては「同性婚は勘弁してくれ」と言っているのと同じである。
ということは、選択的夫婦別姓と同性婚について、「それがいいと思ってる人が選べる制度というのは凄く大事です」という自分自身の言葉を巧妙に裏切っていることになる。要するに、「いろいろゴチャゴチャ言ってごまかしてるけど、実は両方とも避けて通りたい」という姿勢が見え見えなのだ。
それをこの記事では、「党として賛成しないのはなぜ?」と、大胆に割り切ったタイトルでまとめているわけだ。
つまり河野氏の言う「選べる制度」なんて言葉の上だけのことで、実体はちっとも保証されていない。
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コメント
この人も、自分の主義が自民党と異なるのに「広報部長」なんぞをしなくてはならず、されど役職は欲しいし、総裁選で反主流のドン石破氏とくっついたりしたもんだから反発するわけにもいかず、難しい立場ですねえ。石破・河野・小泉で新党作ればいいのにとか思ってました。
投稿: らむね | 2022年6月16日 04:12
らむね さん:
実際、反主流派の看板みたいな人を「広報部長」に据えるなんて、自民党って、変な政党ですね。昔からこんな風にして「なあなあ」で収めるやり方をしてきたとも言えますが。
>石破・河野・小泉で新党作ればいいのにとか思ってました。
それやっちゃうと結局損すると、これまでの例でさんざん学んでるので、無理でしょうね ^^;)
投稿: tak | 2022年6月16日 07:22
この党は一枚岩、とあっちゃこっちゃで聞きますが、党利党略以前に「利権の集約と献上」と言う面では、まさしく一枚岩なんでしょうねぇ。
赤いところも集合離散の好きなところも、幕末期に土下座して謝れ!なところも、もう「国民のために」が白々しくて鼻水が出る。
投稿: 乙痴庵 | 2022年6月16日 16:49
乙痴庵 さん:
>この党は一枚岩、とあっちゃこっちゃで聞きますが、党利党略以前に「利権の集約と献上」と言う面では、まさしく一枚岩なんでしょうねぇ。
なにしろ、ポリシーじゃなく損得で動きますから、強いですわな ^^;)
投稿: tak | 2022年6月16日 17:06