「バーコード頭」という文化遺産
下の写真は中日新聞の「鉄板の薄毛ネタ、アドリブで誕生 海原はるか・かなた 50周年」という記事から拝借したものだ。この超ベテラン漫才コンビの「売り」は、海原はるか の「(いわゆる)バーコード頭」を かなた が一吹きすると、見事に「めくれ」てしまうという定番ネタである。
ふと気付いたのだが、最近この「バーコード頭」というのを見かけなくなった。一時はラッシュ時の電車に乗れば周囲に必ず 1人や 2人はいたものだが、すっかり廃れてしまった。思うに「バーコード頭世代」はとっくに定年を過ぎて、ラッシュ時の電車に乗らなくなったのだろう。
あのヘアスタイルって、私なんかの眼から見ると正直言って奇異そのものだが、当人としてはごくフツーのこととしてやっているように見える。これ、「成人男子の標準は、きっちり七三に分けたヘアスタイル」という、いにしえの常識の延長だからなんだと思う。
この常識を当然のこととして疑いなく受け入れていた世代だけが、あのヘアスタイルを採用している。要するに、団塊の世代の一つ前のジェネレーションの固有文化だ。
「きっちりと七三に分けた髪型」をずっと続けて来た人たちは、頭頂部に近い所からだんだん髪が薄くなり、ごく自然のこととしてまだ毛の残っている側頭部からもってくることになった。床屋でも黙ってそうしてくれるみたいだし、当人はそれで当たり前と思ってしまう。
こうして「七三」だったものが「7.5:2.5」ぐらいになるが、案外ゆっくりとした進行だから、当人は習慣として当然のように続ける。さらに進んで「八二」になり、しかも頭頂部がすっかり禿げてしまっているのが見え見えになっても、今さら引っ込みがつかない。
なにしろこの世代というのは、あの「坊ちゃん刈り」を卒業してからずっと「きっちり分けた七三」でやってきて、自分のヘアスタイルとしてはそれ以外の発想がない。だからすっかり毛がなくなるまで続けるしかない。
というわけで、あの「バーコード頭」は一時代を象徴する固有の「文化遺産」と見ることができる。その時代に終止符を打ったのが、あのビートルズのロングヘアだったのだ。
| 固定リンク
「比較文化・フォークロア」カテゴリの記事
- 「そそる」か「グロ」か、それが問題だ(2023.03.26)
- 「宮型霊柩車」を巡る冒険(2023.03.23)
- 「楽しい」の語源が「手伸し」ということ(2023.03.01)
- 世界の「よいしょ、どっこいしょ!」(2023.02.25)
- 節分行事の鬼が怖くて、保育園に行きたがらない子(2023.02.05)
コメント
最近は…、と言うか、そもそもあまり「バーコードさん」を身近で見たことはありません。
通勤電車時代でも、まぁ周り気にせず本読ん出たんで気付かず…。
だいたい潔く(坊主頭)の方や、「りっ、立派な御髪で…。」の方はおられましたが。
アタクシ、小学生から高校2年生まで坊主頭でした。
3年生から学校の方針が変わり、「男子坊主頭校則」から、いわゆる「調髪可」になり、それからずっと「オールバック」です。
まぁ、「おでこの勢力拡大」に苛まれるお年頃です。
投稿: 乙痴庵 | 2022年6月23日 21:30
乙痴庵 さん:
>「りっ、立派な御髪で…。」
これって、「カツラ」のことですかね (^o^)
地肌や顔つきがモロに「オッサン」なのに、髪だけ「青年!」てのは、「私、カツラ(だけ?)に金かけてます!」と宣伝してるような感じで、微笑ましいというか、ナンというか・・・
>アタクシ、小学生から高校2年生まで坊主頭でした。
そうか、日本には「男子は校則で坊主にする」という文化もあったんですね。
私自身は坊主頭を強制する学校に在学したことがないので、これって高校野球の特殊文化みたいな気がしていましたが、ちょっと前まではかなり普遍的と言ってもいいぐらいのものでしたね。
だったら、バーコード頭なんかにするより、いっそ少年時代に戻って坊主にすればいいのにとも思ってしまいますね (^o^)
投稿: tak | 2022年6月24日 07:23