「命が狙われて初めて政治家って言える」の皮肉な意味
橋下徹氏が「安倍さんの死は納得いかない」と語っている記事を見つけた(参照)。半月前のインタビュー記事で、タイトルに "安倍元総理に言われた「命が狙われて初めて政治家って言える」の意味とは" というのがあるが、橋下氏的にはこの点で「納得いかない」と言っているようなのだ。
ちなみに今回の銃撃事件を「暗殺」と言う人がいる(参照)が、これには個人的に違和感を覚えていた。日本語の「暗殺」は、主に政治的な理由で要人を殺害することを指すとされている(参照: 広辞苑/大辞林/大辞泉)が、今回の銃撃事件は「政治的な理由」というよりは「恨み」によるものとみられるからだ。
一方、英米のニュースでは、今回の事件をストレートに "assassination"(直訳で「暗殺」)と報じている場合が多い。New York Times の見出しも "Shinzo Abe, Former Japanese Leader, Is Assassinated"(日本の前指導者、安倍晋三、暗殺さる)というものだ。
ちなみに英語の "assassination" の語義は、ネット上の辞書で調べたところでは「重要人物を殺害すること」といった語義説明で、とくに「政治的理由」とは書かれていない(Longman Cambridge)。日本語の「暗殺」とはほんの僅かながら、ニュアンスが違うようだ。
もっとも実際問題としては、暗殺される対象は政治家が多いので、Cambridge の ”assassin”(暗殺者)の語義説明では「有名な重要人物を、通常は政治的理由または金銭的取引として殺害する人」となっている(参照)。金で暗殺を請け負う場合もあるのだね。「プロの暗殺者」ということだ。
ここで改めて、冒頭で触れた「命が狙われて初めて政治家って言える」という言葉に戻ろう。安倍元首相の今回の「命の狙われ方」って、「政治的理由」というより「恨み」によるものだったという点で、少なくとも「(国葬に相応しい)大物政治家的」ではなかったという印象をもってしまうのだよね。
ところが、ここでさらに「どんでん返し」が起きるから面倒なことになる。田中良紹氏の「安倍晋三元総理とは何者だったのだろうか」(この記事、オススメしておく)などの内幕情報まで視野に入れてしまうと、今回の銃撃事件の意味合いが変わってしまうのである。
山上徹也容疑者の行為って、当人の直接的な意図や動機から離れて一人歩きしてしまい、実は結果的に「ちょっとした暗殺」になったとも言えそうだ。つまり「命が狙われて初めて政治家って言える」という安倍元首相本人の言葉は、かなり皮肉な意味をもってしまっているわけだ。
まったくもって彼の死の意味は、「政治的意味/個人的恨み/命の重さ」という各観点からしても皮肉過ぎるぐらいのものだろう。
最後に蛇足ではあるが、「命が狙われて・・・」というのは、フツーの日本語では「命を狙われて・・・」だよね。これは「云々」を「でんでん」と読んでしまう人(参照)と、弁護士を職業とする人の日本語力の問題だが。
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コメント
それまでの「言葉の使い方」でんでんを含めて、そんなに「美しい日本(語)」にこだわりなどなかったんでしょうねぇ。
ただ傍から見るに、「命が」と発した時点で「他人事」だったんじゃないでしょうか。
オレは知らんけど後進はそこまでの覚悟を持てよ!
…、ってことも思わないか。
自分が命懸けで国のために国民のために政治やってる…、ってイメージナッシングですもん。
(ご冥福はお祈りします)
投稿: 乙痴庵 | 2022年8月 4日 19:00
乙痴庵 さん:
>ただ傍から見るに、「命が」と発した時点で「他人事」だったんじゃないでしょうか。
確かに何となくそんな感じはしますね。ちょっとカッコつけちゃったかな。
投稿: tak | 2022年8月 4日 21:01