地方百貨店は、存在し続けるだけで苦しい
北海道新聞が "「百貨店ゼロ県」の山形 老舗閉店から2年の今は" という記事を伝えている。北海道資本最後の百貨店、帯広市の藤丸が来年 1月末で閉店することになったため、2020年に日本初の「百貨店ゼロ」となっていた山形県を、モデルケースとして取材したらしい。
藤丸が閉じると北海道の百貨店は、札幌の大丸、東急、丸井今井、三越、函館の丸井今井だけとなり、これらはすべて北海道外の資本である。函館にはテーオーデパート、シエスタ函館などがあるものの、百貨店協会に加盟しておらず、「百貨店」として認められていない。
いずれにしても地方百貨店は、存在し続けるだけで苦しいのである。
ちなみに山形県では、わが故郷の酒田市に「マリーン 5 清水屋」という「百貨店」があったが、1994年に百貨店協会を離脱していたので、2020年時点で「百貨店ゼロ県」の烙印を押されていた。そしてその清水屋も昨年初めに倒産し、今は「名実ともに百貨店ゼロ県」となって、苦しみから解放されている。
Business Journal の 2020年 10月 23日付に「次の “百貨店ゼロ県” 予備軍・14県…徳島もゼロに」という記事があり、この年の 8月に日本で 2番目の「百貨店ゼロ県」となった徳島県の状況を伝えている。
この記事では、百貨店が 1つしかない「“百貨店ゼロ県” 予備軍」が 14県もあると紹介されている。私の住む茨城県も「百貨店が 1店のみ」(水戸市の京成百貨店)ということで、「予備軍」の中に入れられているが、それで不便を感じることなんてない。
茨城県南地域では、どうしても百貨店で買い物したいという人は、東京都内に行くことになる。常磐線の途中の柏市に高島屋、西武丸井などがあるにはあるが、そこで途中下車なんてほとんどしない。こんなわけだから、地方百貨店が苦しいのは当然だ。
私はこれまで百貨店に関して、次のような否定的な記事を書いている。
百貨店は付き合いきれない業界 (2016年 10月 3日付)
百貨店という業態は、既にオワコン (2017年 3月 7日付)
閉店、撤退の続く百貨店業界 (2018年 9月 29日付)
まともにものを考える人間は、百貨店で服なんて買わない (2020年 10月 15日付)
これらの記事で、私の百貨店に関する考えはほとんど述べてあるので、今さら繰り返すことはしない。とにかく百貨店というのは、かなり前からフツーの人間にはとくに必要のない業態になったのだと思っている。
どうしても必要だという少数派のためには、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、博多のほか、金沢、広島あたりにちょこちょこっとあれば済むだろう。百貨店での買い物なんて、多くてもせいぜい年に数回程度だろうから、それだけあれば十分だ。
それで足りないという大金持ちなら「外商」という手があるし。
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コメント
百貨店は最終的には全国に十店舗になるでしょう。
中途半端な駅前百貨店は駐車場の整備されたららぽーとやイオンに食われてしまいます。ららぽーとやイオンなら家族で車で行けて一日中過ごせます。
この夏、Ⅿ腰にお中元をネットで送ろうとしたら。システム利用料を880円払えと表示されました。呆れました。止めました。多分どこかの EⅭ システムを間借りしていて一件利用毎にシステム利用料を請求されそれを客に請求しているのでしょう。それでも客はついてくると考えているのか。
昔、Ⅿ腰の商品を扱っていた宅配便業者に「出荷場に車を止めるのだから駐車料金を取れ」と言った社長がいました。
取引してあげてるのだからありがたいと思えということですね。
そのお方は既に遠い所にいらっしゃるのに、その文化はいまだに健在のようです。
関西でナンバーワンと言われる百貨店は、創業者が立派な本を書き残していますが、現場では商道徳無視の取引が常態です。
色々な意味で付き合いきれない業界です。
投稿: ハマッコー | 2022年8月18日 19:10
ハマッコー さん:
M腰は、「ウチの包装紙にはそれぐらいの金を払うべきステイタスがある」というゴーマンな幻想を、今でも持ち続けているんでしょうね。
まともに生き延びられる業態とは思われません。
投稿: tak | 2022年8月19日 07:44
屋上の遊園地やスナックコーナー、ゲームコーナーも縮小かなくなっちゃったし。
これから百貨店へ行くときは、スーツとネクタイで参りますかなぁ。(行かないの表明)
投稿: 乙痴庵 | 2022年8月19日 12:00
いまだに百貨店とショッピングモールの違いが判らないアラフォーです(笑)
最後に行ったのは20年以上前、成人の祝いにと祖父母が丸井のスーツだか革靴だかを買ってくれるというので一緒に行きました。そのこと自体に感謝はしていますが、そこで私の理解は「百貨店というのはつまり高価な商品だけを取りそろえている店だ」と固定されてしまい、以降自分で行ったことは一度もありません。
チェーン店で3万のスーツ、5千のYシャツ、1万の革靴、このあたりが私のMAXですw。
投稿: らむね | 2022年8月19日 12:29
乙痴庵 さん:
>屋上の遊園地やスナックコーナー、ゲームコーナーも縮小かなくなっちゃったし。
子どもの頃は、屋上遊園地こそが百貨店に行く理由でしたね。売り場は、おもちゃ売り場以外は退屈でした。
>これから百貨店へ行くときは、スーツとネクタイで参りますかなぁ。(行かないの表明)
わはは (^o^)
投稿: tak | 2022年8月19日 12:31
らむね さん:
>そこで私の理解は「百貨店というのはつまり高価な商品だけを取りそろえている店だ」と固定されてしまい、
私の理解だと、「無意味に高価な商品」ということになってしまいます (^o^)
男物のスーツだと、「オンワード樫山」というメーカーの主要販路が百貨店ですが、このメーカーは現在、悲惨なほど勢いがなくなっています。
この会社の年商は 900億円ほどですが、最盛期(バブルの頃)の半分以下です。これは、百貨店でスーツを買う人が、昔の半分以下になったということです。
これからさらに苦しくなるでしょうね。
投稿: tak | 2022年8月19日 13:16