「ウェストミンスター寺院」という日本式名称
最近、当ブログの右側サイドバーに表示される「人気記事ランキング」を見ると、私が 12年近くも前に書いた "キリスト教なのに 「ウェストミンスター寺院」 とはこれ如何に? " という記事へのアクセスが妙に増えている。昨日の時点では、ついに 1位になっているじゃないか。
これ、先日亡くなった英国のエリザベス 2世の国葬が「ウェストミンスター寺院で執り行われる」と発表されたことによるのだろう。「ん? キリスト教なのに、寺院?」と疑問に思った人が「ウェストミンスター寺院 キリスト教」でググると、今朝の時点ではこんな具合で結果表示される。
道理でね。私の記事が2番目に表示されているのだから、そりゃ、アクセスも増えるわけだ。トップの「ウェストミンスター寺院」のページでは、この名称の説明はとくにされていないし。
せっかくなので、ここでざっと復習してみよう。
キリスト教施設の日本語への訳され方としては、"church" が「教会」で、 "cathedral" が「大聖堂」となるのが一般的だ。ただ、明治期には外国の非仏教宗教施設でも「寺院」と訳されることが一般的だったようで、大規模なキリスト教施設も「寺院」と訳されることがあった。
ロンドンの「セントポール大聖堂」(St. Paul Cathedral)を今でも「セントポール寺院」と呼ぶことがあるのは、その名残のようである。
ここで問題の「ウェストミンスター寺院」だが、本来の名称は "Westminster Abbey" である。ビートルズの名アルバム ”Abbey Road” でお馴染みの "Abbey" (発音は「アビー」)という英語だが、困ったことに日本語では定着した訳語がない。
さらにこのケースでは、便宜的に「大聖堂」と訳すわけにもいかない。それは同じロンドン市内に、別個に「ウェストミンスター大聖堂 (Westminster Cathedral)」というカソリックの宗教施設が 1910年にできてしまっているからだ。
そんなわけで、「ウェストミンスター寺院」は「ウェストミンスター大聖堂」との区別のために、明治期に訳されて以来の名称として、そのまま残っているようなのである。
このことでの学び。
その 1 :日本語の「寺院」は、仏教施設だけとは限らない。イスラム教やヒンズー教などの施設も「寺院」と訳されている。
その 2:「ウェストミンスター寺院」の名称は、「ウェストミンスター大聖堂」と区別するための意味合いもある。
ついでに その 3: 「ウェストミンスター寺院」と「ウェストミンスター大聖堂」とがあるという複雑さは、英国におけるキリスト教の、政治絡みの複雑さを反映している。学校の「世界史」の復習として、Wkipedia の「イングランド国教会」の項目を参照。
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