「メンソレータム」と「メンターム」と「メンタム」
我が家はつくばの自然豊かなところにあるので、ちょっと庭に出て雑草を取ったりするだけで、腕だの脚だのがしっかりと蚊に刺されてしまう。それで「ムヒ」や「ウナコーワ」などの世話になるのだが、私が高校時代まで庄内の地で暮らしていた頃は、この分野では「メンソレータム」が圧倒的主力だった。
「リトル・ナース」の絵も懐かしい「メンソレータム」という塗り薬、最近は見かけることが少なくなったので、もう市場から消えたのかと思っていたが、今日、ふと気になってググってみたら、ちゃんと健在じゃないか。しかも油断のならないことに、いつの間にか容器のフタがネジ式に進化している。
ただし公式サイトの表示を見ても、「効能・効果」には「ひび、あかぎれ、しもやけ、かゆみ」とあるのみで、「虫さされ」の文字はない。しっかりと「虫さされ」に効くと謳ってある「ムヒ」や「ウナコーワ」の路線ではなく、こちらは「穏やかな皮膚のお薬」としての道を歩んでいるようだ。
メンソレータムの歴史はなかなかおもしろい(参照)。この薬は米国のメンソレータム・カンパニーがライセンサーで、日本では近江セールズ株式会社(のちの株式会社近江兄弟社)が販売していた。
ところが近江兄弟社は 1974年に経営破綻のためライセンスを返上し、代わって 1975年からライセンシーとなったロート製薬が、1988年に本家のメンソレータム・カンパニーを買収。それで現在は「リトル・ナース」マークの「メンソレータム」が、ロート製薬のスキンケア製品全体のブランドとなっているという。
なるほど、そういえば確かにリップクリームでは「メンソレータム」ブランドのものがあるね(参照)。
一方の近江兄弟社はやがて経営破綻から立ち直り、現在はライセンシー時代に培った技術を背景に、「時代を超えて愛され続ける生活常備薬」としての「メンターム」というのを販売している。価格的には「メンソレータム」よりややお徳用の設定で、見つかりさえすればこっちを選びたい。
そういえば昔は、「メンソレータム」の類似商品というのがくさるほどあった(北多摩薬剤師会の画像コレクションは一見の価値あり)。実家でも「メンタム」とか「メンスター」なんてのを使った記憶があるが、効果は本家と似たようなものだったと思う。
というわけで「メンタム」が「あり」だったんだから、「メンターム」も十分「あり」なんだろう。
ちなみに私の田舎ではほとんどの人が「メンソレータム」と言わずに(あるいは、言えずに)、音位転換を起こして「メンソレターム」(「ター」にアクセント)と言ってたなあ。私もつい、そう言いそうになるほどで、懐かしき昭和の記憶である。
【9月 6日 追記】
「メンソレターム」という音位転換はウチの田舎に限らず、かなり普遍的なものであるらしい。Twitter に「#メンソレターム」という項目があるほどで、なかなかおもしろい。
とくに、次の 2つの tweet はかなり心に迫る。
北杜夫は、父で山形県出身の歌人である斎藤茂吉が「メンソレターム」というのを聞いて育ったのだろうね。
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コメント
沖縄の「メンソーレ」ってのが…
(はい大ボケ)
投稿: 乙痴庵 | 2022年9月 5日 19:42
乙痴庵 さん:
わはは! 座布団 5枚!
投稿: tak | 2022年9月 5日 20:24
近江兄弟社は経営再建がうまくいったようで、いまでは学校まで経営しているようです。
その名も近江兄弟社高等学校。
https://www.vories.ac.jp/SeniorHigh/
メンタムしか知らなかった。
投稿: ハマッコー | 2022年9月 5日 23:18
ハマッコー さん:
近江兄弟社の再建成功は、他人事ながら嬉しいことと思ってます。
キリスト教精神を日本に根付かせるという企業理念がありますので、学校経営も戦前からのようですよ。
以下をご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/近江兄弟社中学校・高等学校
投稿: tak | 2022年9月 6日 11:04