差別問題に絡む「本音と建て前」のややこしさ
HUFFPOST の記事に "「大麻使用者はラテン系の服装を好む」と教育か。警察官が法廷で証言、県警は否定 群馬" というのがある。「県警は否定」とあるが、それは「表向き」の声明に過ぎない印象だ。
同じ HUFFPOST の今年 7月の記事に "「外見のみを根拠にせず」警察庁、差別的な職務質問めぐり全国に通知" というのがあるので、群馬県警としても「建て前」的にはそんな教育をしているとは言えないのだろう。しかし「本音」的には、「大麻とラテン系」はある程度の共通認識になっているようだ。
まあ、公式な「教育」とまではいかなくても、日常的な会話レベルではそんなようなことを話していたのだろうね。
ちなみに、私が冒頭で "「表向き」の声明" と言ったのは、一昨日の記事で書いたのと同じような意味合いだ。
幸福実現党という政党は、自らの公式サイトにある「LGBT の安易な権利拡大に抑止を」という項目の中で、「LGBT はそれを隠して生きろ」とまでは主張していないが、同党所属の市議会議員が議会での公式発言として、それを堂々と言っちゃった。
たまたま相次いで生じた幸福実現党と群馬県警の 2つの問題は、こうした「本音と建て前」の観点からは同じ構造をもっている。組織としての「建て前」と、そこに属する個人の受け取り方には、往々にして差が生じてしまうのだ。
「差別」という問題が絡むと、話はかくの如くややこしくなる。
それにしても「大麻使用者はラテン系の服装を好む」というのは、かなり漠然としたコンセプトで、Twitter などでは、具体的にはどんな服装のことを言うのかというのが話題になっているようだ(参照)。
上の写真のようなものなんじゃないかとまで言われているが、さすがにそれはないよね。正直言って私の中ではイメージが浮かばないが、「ラテン系」当事者と県警の内部では、ちゃんとした共通イメージがあるようなのだ。それって、ちょっとスゴいよね。「通じ合っちゃってる」ってことだから。
最後に細かいところを突っつかせていただくが、記事のこの部分の「そのような教養は行っていない」というのは、どういう意味なんだろう?
これ、「強要」の誤変換か、「教育」の誤りかのどちらかなんだろうなあ。記事中にも次のようにあるので、きちんと校正してもらいたいところだった。
県警はハフポスト日本版の取材に、「そのような教養は、群馬県警(地域部)機動警ら隊では行なっていません。過去においても同趣旨の教養を機動警ら隊で実施したとの確認はできません」と否定した。
ただ、こうして 2度繰り返して使われているところを見ると、あるいは警察内部の専門用語としてそんなのがあるんだろうか? ああ、いろいろな意味でややこしい記事である。
【追記】
Sam.Y さんと らむね さんの付けてくださったコメントにより、「教養」というのは「警察言葉」のような言い方として「あり」とわかった。上の者が下の者を経験則的に指導する際に、「教養」を行うと言うらしい。ちっとも知らなかった。御両名に感謝。
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コメント
警察官も「…教養を受けた」と発言しているようなので、内部用語に近いもののようですが、古い言い回しが(警察らしく?)残ったものではないでしょうか。
コトバンクから参照できる 精選版 日本国語大辞典「教養」の解説では
① (━する) 教え育てること。教育。
(2)①の意の使用は、…が明治初期に、近世中国語の影響で、英語 education・educate の訳語として中国から伝わったものであろう。
(3)現代の②の意味での使用は大正時代以降か。
となっていました。
投稿: Sam.Y | 2022年9月 6日 16:07
教養、言うんじゃないでしょうかね。警察マンガ「ハコヅメ」(作者は元警察官)でも、上の者が下の物を指導するときに「教養」と言っていました。教科書的なものを教えるというよりは、経験則的なものの指導のように描かれていました。
投稿: らむね | 2022年9月 6日 19:38
Sam.Y さん:
へえ、「教養」にそんな意味があったとは、初めて知りました。
ありがとうございました。
投稿: tak | 2022年9月 6日 20:12
らむね さん:
私は「ハコヅメ」というのを知りませんが、そのように使われていたというなら、Sam.Y さんのご指摘が、さらに信じられます。
ありがとうございました。
それにしても、ちょっと説明の要る言葉遣いではありますね。
投稿: tak | 2022年9月 6日 20:15
ちなみにハコヅメのその場面。
上役から「教養があります」と聞かされていたベテラン刑事が、挨拶に来た若手に滔々と「刑事とは」みたいに語るんですが、実はその若手は童顔のキャリア組(階級は遥か上)で、本来はそのエリート君に「教養される」はずだったのに、というオチでした(笑)
投稿: らむね | 2022年9月 7日 07:18
私の長男は警察官ですが、まだ、研修中の時、先輩に「あいつを職質してみろ」と言われてみたら、自分の親父だった。と言っていたことがある。私は特にラテン系ではないが、挙動不審だったのでしょう。「あれはうちの親父だ」と長男が答えて、私は職質を免れた。
長男が警察官になった時、「あんまり正義を振り回すなよ」と言ったら、それが俺の仕事と言われた。今は中堅の刑事として働いているが、言葉づかいは時々気になる。警察官以外の人間は一絡げに一般人などと言う。
投稿: basara10 | 2022年9月 7日 08:09
らむね さん:
なるほど、漫画もなかなか知識を広める役に立つものですね。
私にとっての漫画というのは「天才バカボン」に代表されるものですので、そっちの方の役には立ちませんでした ^^;)
投稿: tak | 2022年9月 7日 08:28
basara10 さん:
うぅむ、刑事の職業病ってのがあるんでしょうかね。
できれば、正義を「振り回す」のが自分の仕事という思いからは、抜け出してもらいたいと思います。
投稿: tak | 2022年9月 7日 08:30
できれば、正義を「振り回す」のが自分の仕事という思いからは、抜け出してもらいたいと思います。
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「自分のやることは全て正義だ」と思うのは止めて欲しいですね。
職質の動画が数多く youtube にありますが完全に違法と言うのも多くありますね。法律論で論破されてるのや、訓練の相手にされてるのやいろいろです。
この例は文化や歴史に詳しい外国人との面白い職質会話です。
https://www.youtube.com/watch?v=TmBvMPnCqLY
警察官は会話についていけずオロオロです。
投稿: ハマッコー | 2022年9月 8日 18:10
ハマッコー さん:
ご紹介のビデオ、職質された外国人は、当たり前の日本文化論をしゃべっているだけのことなのですが、聞いている警官の方が、その当たり前さを理解できないので、「わけのわけらないことを口走るアヤシい外国人」と思ってしまっているんでしょうね (^o^)
投稿: tak | 2022年9月 8日 19:48