NHK 英会話テキストの "stand by" を巡る人生模様
「何十年かぶりに買ったNHKラジオ英会話の会話文例が深刻過ぎて、何があったのか気になってしょうがない」という、Jack Singapore さんの 10月 11日付の tweet がある(参照)。こんなような写真付きだ。
これはテキストの「by のイメージ ④」という章にあるもので、「by の最終回。基本イメージを復習しながら、いくつかの頻用フレーズを気軽に学んでいきましょう」とあるが、ちょっと「気軽に」とは言えない内容だ。何しろテキストに添えられた「日本語訳例」は、こんなものである。
ケリー: タクマ、私、10月の結婚式を取りやめたいんだけど。
タクマ: 取りやめるって? どうしてだい? 僕たちはもう、招待状を出したんだよ。
ケリー: じゃあ、結婚式をやめることになったという手紙を出せばいいわ。
タクマ: だけど、どうして? 何が問題なんだい?
ケリー: 私たち、今すぐ結婚するべきじゃないと思うのよ。
タクマ: それって僕たちが決めたことじゃないか。自分たちで決めたことは守らなきゃ。
ケリー: でも、あなたは私の考えを尊重してくれるつもりはあるの? そっちの方がもっと大事じゃないの?
タクマ: もちろん、そうだけど。
「by の使い方」ということで言えば、タクマの "We have to stand by our dicision."(自分たちで決めたことは守らなきゃ)という発言がオレンジ色で強調されている。
"Stand by" の意味は、weblio では「そばにいる、(何もしないで)傍観する、(いつでも行動できるように)待機する、(放送開始に備えて)待機する、スタンバイする」ということになっている(参照)が、この場合は、研究者新和英中辞典にある「(約束などを)守る」という訳語が適切だろう。
さらにそれに続くケリーの "But are you going to stand by me?" という発言は「でも、あなたは私の考えを尊重してくれるつもりはあるの?」と、かなり意訳っぽく訳されている。私としては「私のそばにいて守ってくれるの?」と訳すところだが、同じ "stand by" でも、いろいろな意味合いがあるわけだ。
ちなみにケリーは結婚の約束を "stand by" (守る)することは望まず、「別れましょう」と匂わせながら、その一方ではタクマが自分を "stand by" (守る、尊重する)してくれることは望んでいるように見受けられる。「それって、何だかおかしいんじゃないの?」と思わざるをえない。
あるいはケリーとしては日頃から、タクマが自分を "stand by" してくれていないと感じているので、結婚の約束を"stand by" するのを躊躇しているのかもしれない。だったら、初めから結婚しようなんて思わなければよかったのにね。
いずれにしてもこの二人、さっさと別れた方がよさそうだ。
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コメント
なんだか、落語の演目で出てきそうな内容(ネタ)だなぁ…。(´・_・`)
投稿: 乙痴庵 | 2022年10月18日 19:01
乙痴庵 さん:
落語だったら、どこからか時の氏神が現れて何とかめでたく解決ってことになるんでしょうけどね。最後にコケそうなオチは付いても。
投稿: tak | 2022年10月18日 19:04
傍観するなんてとんでもねぇ!
何もしなかった訳じゃねぇが、結局オジャンになっちまったなぁ。
こりゃ秋風も身に沁みるなぁ。
誰か「防寒」着、持ってきてくれぇ!
投稿: 乙痴庵 | 2022年10月18日 19:53
乙痴庵 さん:
わはは、駄洒落も極めると、座布団 3枚分の値打ちです (^o^)
ハーックショイ (ブルブル)
投稿: tak | 2022年10月18日 21:13