イランの道徳警察と、ヒジャブの着用問題
BBC NEWS Japan に「イランの司法長官、道徳警察を解体と発言……所管する政府機関は無反応」という興味深い記事(12月 5日付)がある。道徳警察というのはイスラム法に基づいた服装規定を女性に強制している組織だが、司法省ではなく内務省の管轄。そして当の内務省は無反応であるらしい。
上の写真の右に映っているのは、今年 9月に髪の毛を覆うヒジャブを「不適切に」着用していたとして、道徳警察に逮捕され、不適当な扱いにより後死亡したマサ・アミニさん(22)。このことが報じられると、イラン国内の抗議運動はかなり活発になり、道徳警察への反発も強まった。
BBC ニュースは先月以来、この関連で積極的な報道を行っており、以下に挙げた関連記事から読み取れるのは、女性への「イスラム的服装の強制」は、国内でも一般的には決して歓迎されておらず、反政府運動にまでつながっているということだ。
- イランの道徳警察、女性の頭髪や服装を取り締まる理由は 警官の本音は(12月 5日付)
- 髪を覆わず国際大会で競技したイラン女子選手、家族の家が解体される(12月 4日付)
- W杯でイラン政府に抗議、政府支持派と会場で対立(11月 26日付)
- イラン、反政府デモの参加者に相次ぎ死刑判決 週末から5人に(11月 17日付)
とくに 12月 5日付の「・・・ 警官の本音は」という記事では、実際の取り締まりに当たる道徳警察の 1人が匿名で取材に応え、「本音」を語っているという点で注目される。
彼は 「自分たちのほとんどは普通の兵隊で、兵役の一環としてこうしているだけだ。本当につらくて嫌な気分だ」と言う。服装規定の違反者として取り締まる人数が少ないと、指揮官から仕事ぶりが正しくないなどと批判されるというのだから、「上からの強制」の強さがわかる。
服装に関する制限といえば、昨年 5月22日に書いた「 北朝鮮と日本の中学・高校の共通点」という記事では、北朝鮮がスキニー・ジーンズを禁止したことに触れている。北朝鮮やイランの安易に一律な服装を強いるという発想は、日本の中学・高校にも共通しており、いずれにしてもろくなもんじゃない。
そして冒頭で紹介したイラン国内の司法省と内務省の亀裂は、今後の大きな動きを示唆するものだと思っている。
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