「自然界に受け入れてもらえない人」っているのだね
「現代ビジネス」のサイトに ”定年後に1500万円で「地方移住」した元役員、やがてそれを後悔した「意外な理由」” という記事がある。移転先で、面倒くさい人間関係に巻き込まれてしまったのかなあなどと思いながら読んでみたところ、意外なストーリーに驚いてしまった。
元商社マンの Aさん(64歳)は、定年後は自然の中で暮らすことを夢見て、長野県の佐久平に 1,500万円で家を購入して移住したのだという。家のそばには渓流が流れ、釣りをしながら自然を楽しむという希望にぴったりの環境だった。
ところが、実際にその家で暮らし始めたところ、夜になって渓流の水音が気になって眠れなかったというのである。「昼間は癒やされた岩の上を滑り落ちる小さな音が、これほどかというほどに大きく聞こえてくる」ことに気付き、あっという間に睡眠不足に悩まされるようになった。
さらに鳥のさえずりにも悩まされる。とくに春になり、オオルリの繁殖期に入ると「朝の 4時から鳴き始めると、どんなに綺麗な音色でももう雑音にしか聞こえません」ということになる。
堪えきれなくなった Aさんは「二回目の春を迎える前に、移住者向けに分譲されている新興の住宅地にさらに転住」し、今は二重サッシの窓で無音状態にされた部屋の中で、好きなクラシック音楽を聴きながら暮らしているという。「そりゃもう、ご苦労様でした」というほかない。
若い頃、テントを背負って(さらには「テントなし」の進化形で)山の中に分け入り、まさに「自然の真っ只中」で寝ていた私には信じられないような話である。ちなみに渓流のそばでテントなしで寝ようものなら、夜になればそりゃもう、轟音のような水音だ。
しかしそれも「人工の音」じゃないから、寝袋に入って横になれば「気にならない環境音」でしかなくなる。「聞こえているけど聞こえない音」と言ってもいい。
フツーはそんなもんだと思っていたのだが、「自然界の音」って、不慣れな人には「堪えられない雑音」になってしまうってこともあるのだね。そうした人もいるのだということを、この記事を読んで初めて現実的に理解した。
定年後の「田舎暮らし」を「何となく」程度に夢見ている人は、実際に行動に移す前に何度かキャンプでもしてみて、「自分が自然に受け入れてもらえる存在かどうか」を確認してみる方がいいだろう。もし水音や鳥の鳴き声が気になってしまうようだったら、妙な幻想は抱かない方がいい。
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コメント
都会人には逆に、暴走族や救急車が「環境音」かもしれませんね(笑)
投稿: らむね | 2023年1月 5日 20:01
らむね さん:
そうだとしたら、あるいは、半分ぐらい言えてる程度だとしても、かなりヤバいですね ^^;)
投稿: tak | 2023年1月 5日 20:13
まぁ この手の記事を書いて生計を立てている人みたいですから。
https://www.google.com/search?hl=ja&q=%E6%9F%B4%E7%94%B0%E5%89%9B+%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%BC&sa=X&ved=2ahUKEwi76-GOibL8AhUnmFYBHdNZDNoQ1QJ6BAhCEAE&biw=1481&bih=946
(長いなぁ "柴田剛 ライター" で検索ね)
基本的に フィクションと思った方が無難なような。
投稿: Sam.Y | 2023年1月 6日 13:27
Sam.Y さん:
ほほう、ほとんどそっち方面専門でメシ食ってる人なんですね。
そうなると確かに、いろいろな断片情報を組み合わせて一つのストーリーにしているという可能性がありますね。
情報、ありがとうございました。
投稿: tak | 2023年1月 6日 17:09
鳥の鳴き声、せせらぎ音もそうですが、蝉はミンミンゼミだけじゃないからな!コオロギだけじゃないからな!
風吹けば雑木林が唸るし、雨降れば360度から音が聞こえる。
虫に小動物に中動物あたりも友だちだぜぇ!
って、商社マンの元役員が、この手の情報を知らないはずがない…、と思ってしまいました。
投稿: 乙痴庵 | 2023年1月 6日 17:11
乙痴庵 さん:
まあ、まったくの「作り話」ってわけじゃなく、取材したいろいろなケースを寄せ集めて典型的なストーリーを付くっているのだとしたら、「完全に甘く見てた」ってことはあるのかもしれませんね。
「雪かきしなけりゃいけないってことはわかっていたけど、自分で実際にやってみるまで、こんなに大変なものとは知らなかった」なんて人もいるらしいですから。
50㎝ を越える積雪って、関東の都会でも時々ある 20㎝ ぐらいのものとは別物の「ズッシリ感」で、かなり腰にきちゃいますからね ^^;)
投稿: tak | 2023年1月 6日 19:49