"The" を「ザ」と読むか、「ジ」と読むか
最近、知人に「『ザ・インターネット』っていう映画があるけど、本当は『ジ・インターネット』が正しいよね」と質問された。試しに自分で口に出して ”The Internet" と発音してみて、「う〜ん、ビミョーすぎるけど、少なくとも私は『ジ・インターネット』とは言わないなあ」と答えるしかなかった。
多くの日本人は中学校時代に、「定冠詞の "the" は、子音で始まる語に付いたら『ザ』、母音で始まる語に付いたら『ジ』と発音する」なんて習った。ところがこれって結構アブナい話で、少なくとも私の知り合いのネイティブ・スピーカーたちは、そんなことにはほとんどこだわってないんじゃないかなあ。
英語の "the" の子音は、舌先を上の歯の先に当てて(舌先を上下の歯の間からしっかり出す人もいる)発音するので、そもそも日本語の文字では表現できない。だから「ザ(za)」なのか「ジ(ji)」なのかなんて言ってもしょうがないことで、フツーに "the" と言えばいいだけの話である。
ただ、そこはそれ、人間が口に出して言うのだから、単純には決めつけられない。例えば "the apple" と言う場合は、日本人の耳にはことさらなほどに「ジ・アポー(ジァポー)」に近く聞こえるが、問題の ”The Internet” となると、 "the apple" の時ほど「ジ」には聞こえないはずだ。
実際にネイティブ・スピーカーに ”The Internet and The Beatles" と言わせてみても、"the" の発音に際立った違いなんて感じられないと思う。逆に、 ”The Internet” で "the apple" の時のように 【 i 】の発音を強調したら、かえって言いにくくなるように思う。
なんてことを考えながらインターネットを検索すると、ズバリの回答が見つかった。English lab というサイトの "「the apple」はどうして「ジ・アップル」? 口の形から英語文法を見直そう"、半ば以後の「"the apple と the internet はちょっと違う?「出しやすい音」のルール" という項目である。
これ、かなりわかりやすい。とくに次の指摘には納得だ。
「the」の「ザ」という音は、英語の「あいまい母音」で終わっています。あいまい母音というのは、「他のどの母音とも違う音」です。乱暴に言えば、何でもいい音なのです。
そうなのだよね。そんなことは深く考えてもしょうがないことで、要するに言いやすく言えばいいだけなのだ。
話は急に飛ぶが、この「あいまい母音」というのは、庄内弁の発音のキーポイントでもある。例えば庄内弁で「寿司」という場合、決してきれいな「スシ」にはならず、カタカナでは「スス」と書く方が近い。とはいいながら、二つの「ス」の発音はまったく同じではなくビミョーに異なる。
「最初のス」の母音は "The Internet" の "the" の母音に近く、二番目の「ス」は「シ」の訛りの「ス」ということもあってか、 "the apple" の場合の "the" の母音にちょこっと近付く。ただ、この辺りの使い分けなんて、ネイティヴ庄内弁スピーカーでもほとんど明確には意識していない。
これって、英語のネイティブ・スピーカーが ”the" が母音に続く場合と子音に続く場合の発音の違いなんてことをほとんど意識していないというのと、同様のパターンだと思う。
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コメント
ちょっと逸れますが、むかし米国人女性の英語教師の
‶on the contrary" の発音を思い出しました。オンナカントラリイと発音してました。
‶ザ″ でもなくて‶ァ″でしたね。
教師が何度発音しても全員聞きとれませんでした。
ザ でも ジ でもないthe の発音があるんですね。
投稿: ハマッコー | 2023年2月24日 20:46
ハマッコー さん:
試しに発音してみたら、私もそうなっちゃいました (^o^)
すぐ前の "on" の ”n” を発音する際に。舌を上の歯の付け根に当てるので、それを歯の先っちょまで動かすのが間に合わないんですね 。
舌の位置としてはほんの僅かな違いですが、「決まり文句」だけに、ごく自然に端折ってしまいます。
投稿: tak | 2023年2月25日 16:22