痛散湯の CM、「ひとつ 25キロの収穫物」って?
ラジオを聞いていると、「痛散湯」という薬の CM をよく耳にする。その中でとくに印象的というか、「それって、一体どんなんだろう?」と気になってたまらないのが、約 12年前から痛散湯を愛用しているという、茨城で農業一筋 50年の Hさんの体験談だ。
その CM では、Hさんが茨城人らしからぬ、きれいすぎる標準語アクセントで(参照)、「ひとつ 25キロの収穫物を扱うのは大変で・・・」と、しみじみこぼすのである。これ、演じているのは、多分 この人 だと思われる。
しかし、待てよ。「ひとつ 25キロの収穫物」って、一体どんなのだ?
絵本にある「おおきなかぶ」ほどじゃないにしても、そんな馬鹿でかい農産物はこの歳になるまで見たことがない。あまり気になるのでインターネットで検索してみたところ、まさしく痛散湯のサイトで「ああ、この人だ!」と思われる人物の登場する、上の画像のページが見つかった(参照)。
このページに、ラジオで流れるのと同様のセリフが紹介されている。こんな具合だ。
念のため重要部分をテキスト化しておく。
ひとつ 25キロほどの収穫物を一日で何百と扱いますから。30年来、腰が痛くて動きづらく、寝込むこともありました。
ここで、ラジオ CM とのビミョーなディテールの違いに気付いた。放送では時間の関係なのか、「ひとつ 25キロの収穫物を扱うのは大変で・・・」と短縮されていて、「何百と扱いますから」とまでは言っていないように記憶する。(もし細部で間違ってたらゴメン)
というわけで、ここに至って「不思議」は、2つに増えてしまった。
- 「ひとつ 25キロの収穫物」って、一体何だろう。
- 「ひとつ 25キロの収穫物」を一日で何百と扱ったら、仮に 400 だとすると 10トンという想像を絶する量になってしまうんだが。
このページによれば、Hさんが作っているのは、人参、乾燥サツマイモ、メロン、トマト、ジャガイモ、ホウレンソウ、ダイコンなどだが、どれも「ひとつ 25キロ」になるようなものじゃない。そしてさらに、毎日 10トンもの収穫物を扱ったりしたら、いくら痛散湯を飲んでもくたばってしまうだろう。
念のため断っておくが、Hさんは「一袋 25キロ」とか「一箱 25キロ」ではなく、あくまで「ひとつ 25キロ」と言っている。それに「ひとつ」だろうが「一袋」だろうが「一箱」だろうが、何百と扱ったらとんでもない総量になるのは同じことで、いくらなんでも二重におかしい。
誤解してもらいたくないのだが、私はこの Hさんの話がデタラメと言っているわけでは決してない。ただ、「話として不思議でしょうがない」ってことだ。
どこかに言葉の使い方としての誤りがあるに違いない。例えば、本当のところは「何百もの収穫物を、25キロずつ袋に詰めて扱いますから・・・」ということだったとかね。
痛散湯の再春館製薬所にしても、CM を製作した広告代理店にしても、演じているタレントにしても、それを流す放送局にしても、このくらいのことに気付いてもらいたかったなあ。
それにしても本当に、茨城の Hさん、どんな仕事をしておいでなんだろう?
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コメント
仮にジャガイモを25キロずつ一箱に詰めてそれを200個扱うとしたら合計5トンになります。そうなると一日でそれほど大量に出荷する農家はあるのかという疑問にぶち当たります。
茨城は農地面積が広いので一日で5トンの農産物を出荷する農家がもしかしたらあるかもしれません。
ひとつ25キロの収穫物を一箱25キロの農産物と置き換えてここは自己解決したほうがいいと思います。
コピーライターは雰囲気で書いてるだけなので聞く方も雰囲気で聞いた方がいいです。
テレビやラジオの宣伝文句なんて突っ込みところ満載ですから。
因みに私は25キロのモノを数百も扱うことはできません。がんばっても20個くらいです。
投稿: ハマッコー | 2023年2月21日 14:22
ワタクシもラジオCMネタをひとつ(笑)
多分神奈川ローカルだと思うのですが、「スーパー銭湯ゆのいち」というところのCMが頻繁に流れます。そこでのセリフ。
「でも、知り合いに会ったら嫌かも?そんなことどうでもいいのっ!」
・・・いや、どうでもよくないから「嫌かも」って思うんだろうってw 聞くたびに心の中で突っ込んでいます(笑)
投稿: らむね | 2023年2月21日 18:13
ハマッコー さん:
>テレビやラジオの宣伝文句なんて突っ込みところ満載ですから。
それって、まさに実感ですね。
>因みに私は25キロのモノを数百も扱うことはできません。がんばっても20個くらいです。
それは、茨城の Hさんも同様でしょう。
数百個の作物を、ひとつ 25キロの袋詰め、あるいは箱詰めにしてるんでしょうね。多分。
投稿: tak | 2023年2月21日 22:49
らむね さん:
それって、妙な CM で、あんまりアピールしませんね。
そもそも、「スーパー銭湯ゆのいち」って、「一番の銭湯」ってココロなんでしょうが、語感は「くのいち」みたいで、アヤシい (^o^)
投稿: tak | 2023年2月21日 22:52
この種のCMは必ずと言っていいほど画面の端にに小さく但し書きが表示されていますよね。例えば「効果には個人差があります。」とか、「すべての人への効果を保証するものではありません。」とか。雰囲気で聞き流したあとは、この商品は信用に値しないと判断するだけです。
投稿: K.N | 2023年2月23日 23:09
これ、ラジオでしたね。失礼しました。だから矛盾した内容を広告会社もコピーライターも平気で流すのでしょうね。これでよくクライアントの製薬会社もお金を払うのか不思議です。要するに、まともに内容を聞いている人は対象外で、雰囲気で「おー、凄そうだ、自分も試してみよう!」とせっかちに判断する人だけが相手なんでしょう。でも、本当に苦しんでいて、藁にも縋りたい人に対しては不誠実なCMだと思います。
投稿: K.N | 2023年2月23日 23:28
K.N さん:
まあ、この記事で問題にしているのは「効くのか、効かないのか」ではなく、純粋に「言葉としてのおかしさ」ですので、それ以上は踏み込みません。
ただ、イメージ的に「信頼性」を損ねるというのは確かでしょうね。
投稿: tak | 2023年2月24日 10:57
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2101_chosa02.html
ここの表13を見ると、11~3月で平均55トン出荷とあるので、平均の倍くらい稼ぐぞ!という農家なら、1日10トン近くを移動させててもおかしくないですね。
いずれにしても、「(ケース)ひとつ25キロ」ということでしょうが。
投稿: Y | 2023年3月 1日 03:08
Y さん:
ほほう、1日 10トンを取り扱う農家というのは、あってもおかしくはないってことなんですね。
>いずれにしても、「(ケース)ひとつ25キロ」ということでしょうが。
結局はそういうことでしょうね ^^;)
情報ありがとうございます。
投稿: tak | 2023年3月 1日 08:48