世界の「よいしょ、どっこいしょ!」
同世代の友人と会うと、「最近は年のせいか、何かする度に『よいしょ』とか『どっこいしょ』とか、言っちゃうんだよね」なんて話になってしまうことがある。かく言う私も、単に立ち上がったり物を持ち上げたりするだけで、ふと気付くと「よいしょ!」なんて声をかけている。
ちょっと情けない気もするが、見方を変えると、この掛け声さえあれば結構な力仕事でも若い頃と変わらず何とかなってしまうのだ。「よいしょ!」と「どっこいしょ!」は、そうした意味で日本最強の言葉である。
そう思いつつふと気になったのは、「ほかの国では『よいしょ、どっこいしょ』はどんな風に言うんだろう?」ってことだ。そこで「世界の掛け声」というキーワードで調べたところ、 "世界各国の「よいしょ」「どっこいしょ」。掛け声を何て言うか調べてみた" という記事が見つかった。
これは「おなじ阿呆なら踊ろう」というブログの記事で、日付を見れば 2013年 9月 19日となっている。筆者の In0sea(いのせ)さんには、10年も前によくぞこんな素晴らしい記事を書いてくれたと感謝のほかないが、2014年以後に更新されていない様子なのが残念である。
さて、この記事によれば。英語では「これ!というピッタリのものはなさそう」とある。そうだよね。私も英語との付き合いは長いが、「ズバリ!」という言い方に出会ったことがない。
ただ、敢えて言うなら、"One, Two, Three!"、"Here we go!"、”Heave ho!”、"yo‐heave‐ho!" が近いだろうとある。"Heave" というのは「力を入れて動かす」といった意味の単語で、こうしてみると英語ってよくも悪しくも「具体的表現」の言葉で、「直感的表現」には乏しいのだね。
フランス語では "Hop la"(オップラー)、"Oh hisse"(オーイス)だそうで、後者は日本の綱引きの「オーエス」という掛け声の元になったという説があるという。どちらも日本語の「よいしょ!」とかなり近い使われ方だそうで、イタリア語でも同じように言うらしい。以下、こんな具合である。
ドイツ語: "Hau ruck"」 ハウ ルッ(ク)
オランダ語: "Hupsakee!" フップ スケェー、"Huplakee!" フップラケェー
ロシア語: "Давай" ダヴァイ
中国語: 「嗨哟」(hāiyō)、「吭哧」(kēngchi)
韓国語:「으샤 으샤」(ウシャ! ウシャ!)、「으이샤 으이샤」(ウイシャ! ウイシャ!)「영차 영차」(ヨンチャ! ヨンチャ!)
韓国語は、日本語の「よいしょ」にかなり近い。さすが、海を隔てているとはいえ隣の国である。ただ、日本人としてはやはり「よいしょ、どっこいしょ!」が一番力が入る気がしてしまう。
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コメント
今年96歳になる母は,ほぼ一日中,何をするにも「どっこいしょ,どっこいしょ」と声をかけて動いています。この年齢で人手を借りずになんとか自力で動けているのは,この掛け声の効用かも知れません。
ところでマンガ家の東海林さだおさんのエッセイ集『のほほん行進曲』(文春文庫)の中に,「ドッコイショ大研究」という論考(?)があります。
ドッコイショとは何を意味するか,辞書ではどのように説明されているか,英語にドッコイショに類する語はあるのか,そして最後には民謡における掛け声にまで考察が及んでいます(この方はマンガよりエッセイの方が面白いですね)。
その中で"yo‐heave‐ho!" に言及して,「掛け声としては論理的すぎる。」「その非論理性に於てわが国の方がはるかに秀れているのは一目瞭然である。」と指摘しています。
投稿: nomibito-shirazu | 2023年2月25日 18:56
nomibito-shirazu さん:
>この年齢で人手を借りずになんとか自力で動けているのは,この掛け声の効用かも知れません。
きっとそうです。「どっこいしょ」の力は偉大ですね!
>その中で"yo‐heave‐ho!" に言及して,「掛け声としては論理的すぎる。」「その非論理性に於てわが国の方がはるかに秀れているのは一目瞭然である。」と指摘しています。
私が記事中で "英語ってよくも悪しくも「具体的表現」の言葉" と言っているのと共通した指摘ですね。「非論理性においてわ我が国の方が遙かに秀れている」というのは、思い切った言い方ですが、激しく共感してしまいます。
投稿: tak | 2023年2月25日 20:07