「ラップ」と「トーキング・ブルース」
そのうち書こうと思いながらつい書きそびれているテーマというのがあって、今日はそんな中の一つを書こうと思う。「ラップ」と「トーキングブルース」についてだ。
というのは、昨日 YouTube でおもしろい動画を見つけたからである。トム・パクストン(Tom Paxton)がまさに「ラップ」と「トーキングブルース」について語っているのだ。彼について若い世代は知らないと思うが、1960〜70年代からアメリカン・フォークソングを聞いている人なら知っているはずだ。
この動画の中で彼は、「ラップというのは、我々がかつて『トーキング・ブルース』と呼んでいたもの」と語り、その後に「ラップはアーバン(都会的)だ」としている。ふむふむ、確かにこの 2つは根っこの部分に共通したものを感じてしまうよね。
彼の曲の一つに ”What Did You Learn in School Today?" (1964年)というのがある。こんな歌だ。いやぁ、ジャケットの写真が若いなあ!
ちなみにこの曲、高石友也が「学校で何を習ったの」(1967年)と訳して歌っている。内容はほぼそのままのチョー名訳で、途中で何を習ったのか並べ立てる部分が、ちょっとだけトーキング・ブルース調である。吉幾三の『俺ら東京さ行くだ』(1984年)の登場するずっと前の話だ。
そしてこのトーキング・ブルースの大御所的存在が、あの Woody Guthrie (ウッディ・ガスリー)で、数々の録音を残しているが、下に紹介するのは "Washington Talkin' Blues" という曲。「1929年に砂嵐に追われてワシントンに移住したものの・・・」という内容の歌だ。
Woody Guthrie が出たら、次は当然、Bob Dylan である。代表的なトーキング・ブルースは、デビューアルバムに収められた "Takin' New York" だ。
冒頭の「ワイルドな西部の最愛の街からニューヨークに来るまで、いろいろなアップダウンを見てきたけれど、ここでは人々は地下に潜り、建物は空に昇る」というフレーズが、後にノーベル文学賞を受賞することになる才能を感じさせるよね。音だけでなく、意味的にも韻を踏んでいる。
そして現代の「ラップ」(rap)となるわけだが、個人的にはギター 1本の弾き語りでやるのがトーキング・ブルースで、ヒップホップのリズムに乗ってやるのがラップだと思っている。
【3月 29日 追記】
ちなみに日本人が「ラップ」って言うと、平板アクセントで "luppoo" みたいな感じになっちゃう(「ラ」がほぼ確実に "L" の発音になる)から、英語ではまず通じないよね。これ、"rap" の「ラップ」に限らず、「包み」(wrap)でも「膝」(lap)でもそうだから、おもしろい。
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