「楽しい」の語源が「手伸し」ということ
Japaaan のサイトに ”「楽しい」は「手伸ばし」から? 日本神話に起源を持つポジティブな日本語” という記事があるので、「そんなような語源説を、遙か昔に聞いたことがあるなあ」とググってみたら、確かに ”「楽しい」の語源は「手伸し」” という説が有力なんだそうだ(参照)。
Japaaan の記事によれば、この言葉は古事記の「岩戸開き」のくだりと関連するらしい。天照大神の「岩戸隠れ」の際に、八百万の神はその岩屋戸の前で、芸能の神である天宇受売(アメノウズメ)を舞い踊らせ、賑やかな宴を行った。
あまりの賑やかさに、天照大神がそっと岩戸を開けて外の様子をうかがった際に、その隙間から漏れた光で、神々の顔が白く照らされてはっきりと見えた。その時の様子が、『古語拾遺』に古代歌謡として次のように記されている。
あはれ あなおもしろ あなたのし あなさやけ をけ
この「あなおもしろ」というのは、神々の顔(面)が白く照らされたためであるといい、そして「あなたのし」というのは、神々が喜んで手を伸ばして舞い踊る様だと言われているという。そしてそれぞれ、「面白い」「楽しい」の語源になったわけだ。
人間というのは、楽しいときには両手を差し上げて踊りたくなってしまうものらしい。私はどういうわけか、阿波踊りの様子を思い浮かべてしまった。
そして上の画像の真ん中で踊っているのが、アメノウズメノミコトで、実はこの女神は古事記に出てくる神々の中で、私が最も贔屓にしている神様である。私は芸能史を専攻して修士号まで取ったので、贔屓にしないわけにはいかないのだよ。
(30代の頃にこの女神を主人公にした掌編小説まで書いているほどで、そのうちネット上に公開して、このブログからリンクを張ってみようかな)
最後に白状しておくが、上で紹介した『古語拾遺』の歌謡の最後に出てくる「をけ」というのが何の意味なのか、この年になってもわからない。あるいは「をこ」と関係あるのかなあ。
この「をこ」というのは「おこがましい」という言葉のもとになっているもので、なかなか深いものがある。"「ハイジ」と「楓」を巡る冒険" という、13年以上前に書いた記事の後半の方でちらっと触れているので、興味のある方はどうぞ。
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