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2023年4月16日

漁師のオッチャンの技は、「羽交い締め」じゃない

このブログの読者の中には「格闘技好きの tak のことだから、きっとこだわって言い出すに違いない」なんて思った方がおられるに違いないが、その予想、ズバリ的中である。例の和歌山での岸田首相襲撃事件でヒーローとなった「漁師のオッチャン」の技は、決して「羽交い締め」なんかじゃない!

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昨日は運転中にカーラジオで事件の一報を聞き、帰宅してからニュースをググってみると、爆弾のようなものを投げた男を「男性漁師が羽交い締め」にして取り押さえたという表現がやたら多い。「羽交い締め」のオンパレードだ。

とくに日刊ゲンダイの見出しなんて、「SP顔負けの機敏さで筒投げ男を羽交い締め」なんてセンセーショナルなことになっている。「こりゃあ見ものだ」と思い、さっそくニュース動画にアクセスしたのだが、どう見ても「羽交い締め」なんてしていないのである。

上の ANN ニュースを見ると動画開始後 15秒あたりから、漁師のオッチャンは男の後ろから素早く近付き、右腕でラリアットを一発かまし、すぐに左腕で首を押さえつけて制圧している。そのまま駆けつけた SP たちに任せたので、その後に「羽交い締め」に移行したなんてわけでもない。

で、本来の「羽交い締め」というのは、念のため画像で説明するとこんな技である。相手の後ろ両脇から自分の腕を差し入れ、鳥が羽を広げたような形にさせて動きを制圧するので「羽交い締め」と名付けられたのだろう。

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この技、プロレスの世界では「フルネルソン」という。「フルネルソン」があるということは、当然ながら「ハーフネルソン」もある。片方の肩と腕を決めるもので、フルネルソンとは異なり、主に寝技で用いられる地味な技(参照)だが、格闘技においては実戦的に使いでのある技だ。

技の名の「ネルソン」は、英国海軍の雄「ネルソン提督」から来ていると言われるが、詳細は不明。さらにややこしいことに、同じ技を米国では "masterlock" (マスターロック)という。これ、「南京錠」のブランド名から来ているのだが、なるほど、どちらもがっちり締まっちゃうからね。

ちなみに、日本のプロレスでは「フルネルソン」のままスープレックスに移行すると「フルネルソン・スープレックス」、さらにそのままブリッジでフォールに持ち込むと「ドラゴン・スープレックス・ホールド」(下の写真)となる。芸術的ホールドだ。

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で、話を元に戻すが、漁師のオッチャンの取り押さえ方は、本来の意味の「羽交い締め」(フルネルソン)の形には全然なっていない。敢えて言うとすれば、「ラリアットからヘッドロックに移行した」が正解だろう。

とくに News Cafe (冒頭で示した画像)の「赤い袖のおじさん誰? 羽交い締めヘッドロック漁師の名前や顔画像は?」というのはヒドい。「羽交い締めヘッドロック」なんて、腕が 2本しかない人類には、一人では不可能である。もう少し格闘技の勉強をしてもらいたいなあ。

ところで、取り押さえられた容疑者の様子を見ると、とくに往生際が悪いわけでもなく、表情は異様なほど冷静である。

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爆弾も手作りのようだが、爆弾の作り方なんて、ちょっとググっただけでいくらでも見つかる(ここでは敢えてリンク先は示さないけど)。どんな思想背景なのか、あるいは単に異常なところのある男なのか、詳細が伝えられるまではわからないが、かなりイヤな感じのニュースではある。

 

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コメント

今回の報道内容にはフルタチさんも怒ってると想像します。

安倍さんの事件があったので万全の警備をしていたと思いますが、結果的に爆発物を持ち込ませ爆発させてしまった。
こうなると聴衆全員の持ち物検査をするしかないですね。

市民も総理大臣の演説会場には行かないのがベスト。
市民に死傷者が出なかったのは運がよかっただけです。
社会には無敵の人(失うものがない人)がいるので恐ろしいです。

投稿: ハマッコー | 2023年4月16日 21:12

ハマッコー さん:

>今回の報道内容にはフルタチさんも怒ってると想像します。

まったくです ^^;)

>市民も総理大臣の演説会場には行かないのがベスト。

そうですね。こうなると「総理が直々に来る」というのが、聴衆動員の逆効果になったりして。

投稿: tak | 2023年4月17日 09:02

見事なドラゴンスープレックス!

ヘッドロックでは、相手の腕をキメることできませんからねぇ。
腕をキメるを伴うなら、フェイスロック相当でしょうか。
本気のヘッドロックを喰らうと、タップすらできません…。

投稿: 乙痴庵 | 2023年4月17日 19:48

乙痴庵 さん:

>ヘッドロックでは、相手の腕をキメることできませんからねぇ。

動画をよく見ると、左腕で容疑者の首を抱えようとしつつ、右手で相手の右手を払っているようですね。

その後にどっと組み伏せてます。フェイスロックの形ではないですね。

>本気のヘッドロックを喰らうと、タップすらできません…。

首、捻られますしね ^^;)

投稿: tak | 2023年4月17日 20:44

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