日本の「同調バイアス」って、「同調圧力」のレベル
ナゾロジーというサイトに ”「もうみんな避難していますよ!」 本当に日本人の避難指示に役立つと判明” という記事がある。千葉大学の心理学研究で、日本では自然災害時の避難指示に「もうみんな避難していますよ!」という情報を含めると、実際の避難行動が促進されるとわかったのだそうだ。
この研究の発端は、あの有名なエスニック・ジョークだという。沈没しかけた船の船長が、乗客たちを早く脱出させるために飛び込ませようと、次のような言葉をかけるというものだ。
- アメリカ人には 「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
- イギリス人には 「紳士は飛び込むものです」
- ドイツ人には 「規則なので飛び込んでください」
- イタリア人には 「さきほど美女が飛び込みましたよ」
- フランス人には 「決して飛び込まないでください」
- 日本人には 「もうみんな飛び込みましたよ」
避難の場合に限らず、日本人には何にせよ「みんな〇〇していますよ」という言い方が非常に効果的なんだそうで、こうした傾向を「同調バイアス」というらしい。記事では次のように説明されている。
同調バイアスとは、 集団の中にいると知らず知らずのうちに他人と同じ行動を取ってしまう心理状態のことを指します。
ふむふむ、なるほどね。そういうことだから、周りと同じことをするのはなるべく避けたがる私なんか、この国では「変わり者」みたいに思われてしまうのだろう。自分としては、決してフランス人ほどじゃないと思うのだが。
で、この記事を読んで即座に思い出したのが、今月 10日に書いた「空いた道をノーヘルにマスク着用で自転車に乗る人たち」という記事だ。この中で私は、次のように書いている。
驚いてしまうというより、むしろ笑ってしまうのは、自転車に乗っている人の多く(確実に 80%以上)が、ヘルメットは被らないのに、マスクは律儀に付けているということだ。
先月から「マスクの着用は個人の判断で」ということになったのに、圧倒的多くの日本人は外そうとせず、一方で今月から法制化された自転車でのヘルメットは、前々から被っていたスポーツ・サイクリスト以外は誰も着用しない。これって、「同調バイアス」のコンセプトで観単に説明できてしまうのだね。
ちなみにこうした傾向は、私みたいな者には「同調バイアス」というよりむしろ、世界でも稀なほどに強力な「同調圧力」と感じてしまう。そんなわけで、私はこの記事の末尾近くで次のように書いている。
要するにこの国では、「気が引ける」とか「恥ずかしい」とかいう情緒的要素の方が、きちんと明文化された「社会的原則」なんかより遙かに優先してしまうのだよね。フツーには「常識的な人が多い」なんて思われている日本社会だが、視点を変えると、実は「まともな常識にかからない人の集まり」でもある。
私は個人的には外国と言えば米国とドイツ、フランス、香港しか行ったことがないのだが、その代わり、単なる観光目的じゃないから現地の人たちと結構深く付き合っている。その経験からすると、日本以外の国では「同調バイアス」ってそれほど決定的な常識ファクターじゃないようなのだね。
なるほど、なるほど。私って、日本から出るとちょっと気が楽になったりするのは、そのせいだったのか。
| 固定リンク
「世間話」カテゴリの記事
- 「余計なお世話」とか「余計な表示」とか(2023.09.27)
- タバコは目の前で吸われるのでなくても迷惑(2023.09.17)
- すき家 駐車場の貼り紙騒動(2023.09.09)
- 崎陽軒の CM ソング、ずっと誤解してた(2023.09.03)
- 道路の「ゼブラゾーン」を巡る冒険(2023.09.01)
コメント