« "LGBT" と「クロス・ジェンダー・パフォーマンス」の差 | トップページ | 能登で「震度 6強の地震」というニュースに驚いた »

2023年5月 4日

アデルのコックニー英語で、昔の悪夢が蘇る

「世界中の英語発音マニア。英語や発音に関する配信をします」と自己紹介される だいじろーさんという方が、こんなようなスゴい tweet をしておられる。

全英語学習者が絶望してしまうアデルのイギリス英語(ロンドン訛り)」というので、何かと思ったら、「アデル」とは誰あろう、あの「歌手のアデル」である。で、上の画像の真ん中の ▷印をクリックして、彼女のインタビューの模様(わずか 17秒の動画)を視聴してみていただきたい。

まず、日本でもかなりヒットした彼女の歌 "Someone Like You" などを聞けば、ちゃんとわかる英語であることを確認しておきたい。

ところが実は彼女はロンドン下町の生まれで、フツーにしゃべると強烈なコックニー訛りのようなのだ。確かに上のインタビュー動画を視聴しても、ほとんど英語とも思われないレベルである。

私としてもわずかに冒頭の "The thing is..." と、そのちょっと後の "a little curtain separating..." という部分が辛うじて「そんな感じかな?」と思われただけで、それ以外は本当に訳がわからない。まさに自分の英語能力に「絶望してしまう」レベルだ。

彼女のスゴい英語を聞いて、私は 40年近く前に羊毛関係の仕事に転職したばかりの日のことを思い出した。朝一番に廊下で顔を合わせたオーストラリアの羊毛農家のオッチャンに、いきなり早口でゴチャゴチャっと話しかけられたのある。

転職初日にタイムレコーダを押したばかりの緊張したタイミングだったので、何事かと思ったが、要するに「日曜日(Sunday)にレンタカーを借りたいから、レンタカー屋への申込みを手伝ってくれ」という話だった。

オーストラリアへの移民は英国の労働者階級が多かったために、オーストラリア英語(Aussie English)はコックニー英語にかなり近い(参照)と言われ、"Sunday" の発音はもろに「サンダイ」になる。この基礎知識がなかったら、「何、レンタカーを 3台借りたい?」なんて思うところだったよ。

さらに、オーストラリアの羊毛公社(日本の「農協」みたいなもの)関係のエラいさんが来日した際、記者会見の通訳をした時のことも忘れられない。前半のお約束的発表部分は打ち合わせ通り無難に切り抜けたのだが、問題は後半の「質疑応答」に入ってからだった。

日本人記者からの質問内容を英訳して伝えた途端、そのエラいさんが「よくぞ聞いてくれました!」ってな感じで舞い上がり、急に大ノリの早口で答え始めたのである。何しろベースがもの凄いオーストラリア英語なので、はっきり言って半分以上意味がわからない。これにはかなりアセった。

さすがに途中で遮って、「ごめんなさい、もう少しゆっくりしゃべって」と頼み、短く区切りながら通訳して何とかなったのだが、さすがに今思い出しても、合格点はもらえないレベルだった。まことにお恥ずかしいことである。

で、アデルのしゃべりは、あの時のオーストラリアのオッサンを彷彿させるもので、完全に悪夢を蘇らせてくれたのである。いやはや、こういうのって、本当に勘弁してもらいたいよね。

おっと、そう言えば、日本語でも鹿児島弁はアデルの英語並みにわからない。以前、鹿児島空港行きの飛行機で隣に座ったオッサン 2人の会話は、ほとんど外国語だった(参照)。いやいや、もっと言えば、私の故郷の庄内弁だって、フツーには鹿児島弁に負けないほどのものらしいし(参照)。

ということは、アデルやオーストラリアのオッチャンにばかり文句は言えないかもしれないね。

 

|

« "LGBT" と「クロス・ジェンダー・パフォーマンス」の差 | トップページ | 能登で「震度 6強の地震」というニュースに驚いた »

言葉」カテゴリの記事

コメント

テレビドラマ「おしん」は再放送ですべて見ましたが、台詞は全て理解できました。つまりほぼ山形弁ではなかったということですね。地元では山形弁をしっかり使えという話はなかったんでしょうか。
当然全国放送なので真正の山形弁を使ってしまったらドラマを理解できず視聴率が稼げない。加えて役者に真正山形弁を使わせるのはほぼ無理と言う事情もあったでしょう。
(参照)を読んで当時の山形県民の反応が気になりました。

*多分庄内弁とか酒田弁とかあると思いますが便宜上山形弁と一括りにしました。

投稿: ハマッコー | 2023年5月 5日 02:55

ハマッコー さん:

「おしん」に限らず、マイナーな方言を使うドラマに関しては、

>当然全国放送なので真正の山形弁を使ってしまったらドラマを理解できず視聴率が稼げない。加えて役者に真正山形弁を使わせるのはほぼ無理と言う事情もあったでしょう。

という事情で、かなり薄めた形にするしかないですね。

当時の庄内の視聴者としても、その辺の事情は織り込み済みで楽しんでいたようで、別に反感はなかったようです。

ちなみに、山形県の方言は、庄内弁と内陸の言葉(最上弁、山形弁、米沢弁)に大別されまして、内陸の言葉は、むしろ東北の太平洋側と似ています。

庄内弁は別の発達を遂げてきたみたいですね。

投稿: tak | 2023年5月 5日 09:11

高校生時代。
鹿児島出身の先生がお二人いらっしゃいました。
職員室での会話は、まったく「異次元」でした。

先生曰く、「オマエらの東濃弁も未だわからん。」と。

それぞれですねぇ。

投稿: 乙痴庵 | 2023年5月 6日 10:11

乙痴庵 さん:

>鹿児島出身の先生がお二人いらっしゃいました。
>職員室での会話は、まったく「異次元」でした。

だったでしょうねえ (^o^)

>先生曰く、「オマエらの東濃弁も未だわからん。」と。

私も、「日本の言葉で(琉球以外では)鹿児島弁だけはまったく異質」と思っていましたが、庄内弁も負けず劣らず「異質」と知った時は驚きました。

投稿: tak | 2023年5月 6日 10:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« "LGBT" と「クロス・ジェンダー・パフォーマンス」の差 | トップページ | 能登で「震度 6強の地震」というニュースに驚いた »