タイタニック探索ツァーと、金のあり余った命知らず
タイタニック号探索ツアー中に潜水艇が消息を絶ったという件で、ついに「乗客全員死亡」という判断が示された。タイタニック号の残骸から約 500メートル離れた海底に潜水艇の残骸が発見されたとのことで、「爆縮(周囲からの圧力で押しつぶされる破壊現象)」が起きたものと見られる(参照)。
この事件の報道に接して以来、実はずっと奇異な感じがしていた。潜水艇が発見されず「内部の酸素がなくなるまであと〇時間」などとセンセーショナルに報じられながら、ツァー参加者への切実な同情や無事を祈るような声があまり聞かれなかったという点である。何だかビミョーに「他人事扱い」なのだ。
はっきり言わせてもらうと、「何がおもしろいんだかわからないバカ高いツァーに、危険を承知で参加したんだから、しょうがないじゃん」みたいな意識が働いているのだろう。「思いがけない悲運に見舞われた可哀想な人たち」とは、決して思われていないようなのである。
日本の多くのメディアはこうした点に関してストレートな書き方はしていないが、東京新聞の昨日付 "「非日常」をうたうツアー、潜水艇の安全性は未承認 タイタニック観光で行方不明に" は比較的率直な印象だ(参照)。次のような記述がある。
「日常から飛び出し、真の非日常を発見するチャンス」。ツアー運営会社の「オーシャンゲート」は自社のウェブサイトで、タイタニック観光ツアーをこう宣伝していたが、潜水艇の行方不明後、削除された。
米メディアによると、ツアーの参加費は1人25万ドル(約3500万円)と高額だ。
同社は、タイタニックが沈む水深3800メートルの海底まで潜る潜水艇が観光用ではなく「実験的なもの」だとした上で、「安全機関から承認も認定も受けていない」と参加者に説明。元従業員は、潜水艇ののぞき窓は水深1300メートルまでの耐久性しか保証されていないと警鐘を鳴らしていた。
これだけの「いかがなものか?」的情報をまとめて紹介する日本の新聞記事は、今のところこれぐらいのようだ。さらにストレートな韓国系メディアの中央日報は、過去のツァー参加者が「自殺ミッション同然だった」と語っていると報じている(参照)。
日本人だったら「ちょっとヤバいよね」と思ってしまうファクターに満ちあふれていても、米国人というのはある意味「カウボーイ気質」で、「えいや!」とばかりやっちゃうんだろうか。
いや、米国人ばかりではない。冒頭で紹介した Newsweek の記事をよく読めば、今回の犠牲者は、英富豪、パキスタンの実業家とその息子、フランス人探検家、ツァー運営会社の CEO(操縦士として参加)で、5人のうち 4人は外国人のようだ。
このツァーは大人気だったらしいから、世界には金のあり余った命知らずがいかに多いかってことだ。予約の順番待ちだった人の多くは今頃、残念さと安心感の入り交じった複雑な心境でいることだろう。
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コメント
このニュースで思い浮かんだ言葉は
ミイラ取りがミイラになる
いや、亡くなった方に悪意はありません
投稿: レコア | 2023年6月23日 20:44
レコア さん:
>ミイラ取りがミイラになる
なるほど。
(悪意がないというのは、よくわかります)
投稿: tak | 2023年6月23日 22:13