「医者の手書き文字」って、本当に読めない
藤原麻里菜さんという方の作られた「医者の手書きフォント」なるものがある。「お医者さんからもらった診断書の文字が衝撃的だったから参考にしてフォント作った」ということのようで、こちらで医者の手書き風『走れメロス』も読める。いや失礼、書いてはあるが、フツーはまず読めない。
上の画像で示したのは、「いしゃのてがきふぉんと/こんにちは/わたしはふじわらまりなです」という文字であるらしい(参照)。一見すると 3行目の真ん中辺りは「は」という字に見えるが、位置関係からするとどうもそうじゃない。
「は」は、2行目の最後と 3行目の 4文字目なのだろう。同じ形だから、そう思うほかない。そして 3行目の最初の文字と真ん中よりやや右(始めに「は」と思った部分の右側)が「わ」だと確定できる。このあたりから辿って、だんだんと謎解きをしていくことになるが、気の遠くなる作業だ。
これに関する彼女の今年 5月の tweet には、次のような共感を示すコメントが多く付いている(参照)。
「うちの主治医もこんな感じの文字書く!」
「外科医とか高齢の医師がこういう字書くなあ」
「はははwww手書きのカルテだった頃苦労したわww」
「私が通ってる眼科の先生もこれです」
そういえば私の子どもの頃の主治医も、まさにこんな感じだった。子供心に筆記体のドイツ語なんて思っていたのだが、どうもそうじゃないようなのだね。成長してからは医者になんかほとんどかからないので、すっかり忘れていたが、半世紀以上経った今でも日本中で同じような事情と知って驚愕している。
いろいろと検索してみたところ、医学生らしい Medic 須田さんという方の「できるかぎり答える医事相談室」というサイトに関連した記事が見つかった。次のように書かれている(参照)。
実習の時に患者さんの容態を知るためにカルテを見ることが多いのですが、お医者さんが書いたカルテを見て頭を抱えることがけっこうあるのです。
そんなときはどうするかというと、「ウーン」と唸りながら、ヒエログラフや、くさび形文字でも解読するように
「この文字がここに使われているということは、きっとこの単語は○○という単語に違いない。そうすると、この隣にある単語はきっと××という意味だろう.......」
などと連想を働かせながら、ようやく半分程度を把握するという具合なのです。
どうやら、専門家の間でも大変なことのようなのである。人命に関わる重要事項を取り扱っている業界のこととも思われない。さらに言えば、医者の手書きが読みにくいのは万国共通と指摘する tweet もある(参照)。
もしかしたら医学の世界には、世界的に「読みやすい文字なんか書いたら、医者としての沽券に関わる」みたいな信仰に近いまでの思い込みでもあるんだろうか。摩訶不思議な世界というほかない。
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コメント
takさん
カルテは日本語だったのですね。
私もも子供の頃、親からドイツ語と聞かされていたので今日まで信じてました(笑)
もっとも今はカルテは電子化されて主治医もキーボードをカチャカチャ打ってます。
とはいえパソコンのモニターは患者から見えないので読めないのは同じです。
投稿: KAKI | 2023年6月 7日 20:30
KAKI さん:
>私も子供の頃、親からドイツ語と聞かされていたので今日まで信じてました
聞くところによれば、病名なんかはドイツ語にして、ドイツ語かな交じり文で書く人もいるらしいですが、全部ドイツ語なんて言う医者は希有な存在らしいですよ ^^;)
確かに、今のお医者さんはキーボード打ってるみたいですね。いずれにしても、よくわからない世界です。
投稿: tak | 2023年6月 7日 20:50