プリゴジンは死んでるのか、生きてるのか
7月 17日付の「プリゴジンは既に死亡している? ロシアのヤバさ」という記事で、元米陸軍大将が「既に死んでいる」と発言したというニュースを伝えたが、昨日の CNN ニュースでは、CIA のバーンズ長官が「現在はベラルーシの首都ミンスクにいる」との見解を示したという(参照)。
この話を裏付けるように、20日にはベラルーシで撮影されたとされるプリゴジンの動画が発表されたりしているが、画像がことさらなまでに不明瞭で、本当に当人なのかどうかは確認できない状態だ。
まったく、死んでるんだか生きてるんだかよくわからないが、バーンズ長官は彼が生きているとしても極めて危険な状態にあることに変わりはないと考えているようだ。CNN ニュースでは彼の言葉が次のように伝えられている。
ロシアのプーチン大統領については「報復の究極の信奉者」と形容し、「プリゴジン氏がさらなる報復を受けずに済めば驚きだ」と指摘した。
「私がプリゴジン氏なら、毒味役をクビにはしないだろう」とも語った。
バーンズ長官はラ・サール大学卒業後に英国のオクスフォード大学に留学して哲学と国際関係論を学んだというだけあって、ずいぶん垢抜けした(あるいは「垢抜けしすぎた」)レトリックを駆使する。今回の発言もちょっとしたものだ。
プーチンについて「報復の究極の信奉者」と語ったというのは、CNN ニュースの米国版オリジナルでは "the ultimate apostle of payback" となっている(参照)。我々日本人には耳慣れない "apostle" という言葉の意味は「使徒、伝道者」で、「信奉者」(believer)よりずっとラジカルな表現だ。
そして "payback" は "retaliation" とかの「報復」より、ニュアンスとしては「仕返し」って感じ。ならば、言わんとすることをまともに伝えるとすれば「仕返し教の究極使徒」ぐらいの訳がふさわしいかもしれない。要するに、プーチンは狂信的なまでに執念深いってことだ。
その流れで、プリゴジンがいつ毒殺されてもおかしくないということを、「毒味役をクビにはしない」(I wouldn’t fire my food taster)と、なかなかヒネった言い方で表現している。ちなみに「毒味役」の英語は "taster" で「味見役」と同じ単語だから、国際常識では「味見、即ち毒味」なのかもしれない。
というわけで、バーンズ長官、なかなかの役者のようで、「影の存在 CIA」のトップとしてはなんだか「華」がありすぎるほどの印象だ。
ただ、それは当人もしっかり自覚しているようで、「ホワイトハウスのシチュエーションルーム(危機管理室)でテーブルを囲む同僚たちに、もし私の話がそれ始めたらテーブルの下で蹴ってくれと言っておかないと」なんてジョークを言ってるらしい(参照)。
というわけで私まで話があちこち行ってしまったが、そんなようなアブナい状況のようなので、なにぶん
【8月 24日 追記】
8月 17日の記事にも追記したが、プリゴジンの乗っていたと見られる飛行機が墜落炎上し、彼は死んだとみられると報道されている。バーンズ長官の「「プリゴジン氏がさらなる報復を受けずに済めば驚きだ」という言葉は当を得たもので、結果的に彼は驚かずに済んだようだ。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 「腹ぼよーん」「だらし内閣」なんて言われてるらしい(2024.11.12)
- 玉木さん、脇が甘かったね(2024.11.11)
- トランプとの付き合い方のお手本は、安倍晋三らしい(2024.11.09)
- ストレスを感じたら、セサミストリートで癒やされよう(2024.11.08)
- トランプ、「単純ポピュリズム戦略」で勝っちゃった(2024.11.07)
コメント