実際の成果より「忙しそうに見せる」ことが重要な日本
「就活」をしたことがない(参照)私の仕事の出発点は、小さな広告代理店だったのだが、そこで社長に教えられたのは「常に忙しそうにパタパタしていれば、仕事は向こうからやってくる」ということだった。「余裕たっぷり」に見せちゃいけないんだそうで、まあ、一面の真理ではあるのだが。
こんなような半世紀近く前の処世術が今でも堂々とまかり通っていることを、Gigazine の ”日本は「忙しそうに見せるだけの無駄な仕事」に時間を費やしている国トップ 3に入ることが Slack のレポートで発覚” という記事で知った。日本って、「忙しそうに振る舞うこと」が重要な国のようなのである。
ちなみにこの記事の見出しにある「忙しそうに見せるだけの無駄な仕事」というのは、"make it" というサイトの元記事では次のように書かれている(参照)。
Workers in Asia are spending the most time on “performative work” — in other words, focusing on appearing busy more than doing real, productive work.
(アジアの労働者たちは実際的かつ生産的な仕事よりも「パフォーマンス的な仕事」、言い換えれば忙しそうに見えるよう専念することに、多くの時間を費やしている)
元記事の "performative work" というのは Gigazaine では「パフォーマティブな仕事」とそのまま書かれているが、私としては「パフォーマンス的な仕事」とする方が直感的に理解しやすいと思うので、そのように訳させてもらった。
で、その「パフォーマンス的な仕事」というのはどんなものかというと、元記事ではこんなこととされている。
Spending a lot of time in meetings where ‘teams present achievements’ rather than making decisions or addressing issues
(意思決定や問題への対処よりも、「チームの成果発表」の会議などに多くの時間を割くこと)
ただ、この程度ならまだ可愛らしいものだろう。実際場面では、どうでもいい仕事にもっともらしく時間をかけているだけなんてこともよく見られる。効率的にさっさと仕上げるより余計な時間をかける方が、いかにも仕事熱心みたいに見てもらえるというのは、日本のビジネス社会の「病気」だよね。
とまあ、こんなことだから日本という国はやたらと残業が好きな割に、実際の生産性が上がらないわけだ。私だったらダラダラと残業なんかしてるヤツより、定時に帰宅するヤツの方を評価するがなあ。
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コメント
「忙しそうに振る舞っていることが重要」を絵にかいたような人が身近にいました。
机の上にはA4の紙を30cm位に積み上げ、その山が五つありました。整理してあるわけでもないのでどこに何の書類があるのか本人も分らない。つまり紙屑です。机上の空きスペースは開く前の新聞紙ほど。本人にとって「城」であり紙くずに囲まれた自分が好きだったようです。
そこだけ異様な空間で、ある日上司がブチ切れて紙くずを全部捨ててしまいましたが、数カ月すると元通りに、皆呆れてました。残業名人でもあり、する仕事もないのに毎夜11時まで滞留し電話を掛け捲ってましたが相手は仕事先にあらず。
残業するヤツはできるヤツという空気に満たされていたバブルの頃の話です。
投稿: ハマッコー | 2023年8月17日 23:47
ハマッコー さん:
その人の「紙の山」は、要するに「目隠し」だったんでしょうね。その内側で愚にも付かないことをやっているのが、周囲から見えないようにしてあったんでしょう。
そんな類いの人って、案外どこにでもいるんですね。
投稿: tak | 2023年8月18日 10:06