「グルメ」は「建て前」で、「グルマン」が「本音」
前々から気にかかっていることに、「グルメ」と「グルマン」の違いというのがある。一般的には「グルメは美食家で、グルマンは大食家」みたいに言われることが多いが、果たしてそれで言葉の起源からしても正しいんだろうか。
「グルメ」のキーワードで画像検索をしてみると、いわゆる「オシャレなおフランスのお料理」みたいなイメージからはほど遠い結果になる(参照)。上の画像のように大盛りの「丼物」が圧倒的に目立ち、大阪の「たこ焼き」まで上位にある。日本では「グルメの大衆化」が顕著なようだ。
インターネット、雑誌の「グルメ特集」や「ご当地グルメ」などでは、「高級レストランのお料理」より「大衆的でおいしいもの」を取り上げる傾向が強い気がする。「グルメ」で画像検索した結果がこんな感じになるのも当然だ。
言葉そのものとして論ずるなら、「グルメ(gourmet)」も「グルマン(gourmand)」も元々はフランス語である。ところがネット上ではこの辺りから説き明かしてくれる日本語のページがなかなか見つからない。そして悲しいことに、私はフランス語のページを見てもチンプンカンプンなのである。
仕方がないので Merriam-Webster のサイトを覗いてみると、"'Gourmet' or 'Gourmand'?" というタイトルで、この 2つの「英語圏の外来語」の違いがきちんと論じられているじゃないか。さすがに米国で最も信頼される辞書サイトだけのことはある。
いろいろ事細かに書いてあるのだが、煎じ詰めれば "gourmand" という言葉の方が古く 15世紀から使われていて、「飲み食いが好きな人」という意味合いなのだそうだ。一方、"gourmet" は 17世紀頃からの比較的新しい言葉で、「食べ物に批評的な判断を下せる人」というニュアンスが強いとある。
なるほど、そういうことなら「グルメ」という言葉は「食通」みたいなニュアンスが強く、「美食家」と言うのもほぼ正解に近いと言ってよさそうだ。ただし一度商業的に取り上げられてしまうと上の画像のように、「グルマン」との差が限りなく小さくなってしまう。
「グルメ」をマスでこなそうとすると、元々の理念からはビミョーにあるいは大幅に離れて、むしろ「グルマン的」にならざるを得ないようなのだ。これって「建て前と本音」みたいで、おもしろい現象である。
制御するのが難しい欲望の「食欲」に発する分野だけに、人間の「業」を感じさせられるよね。
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