「延命治療の断り方マニュアル」が欲しいところだ
大動脈外科医であるらしい Yuki Ikeno という方の tweet が一部で話題になっている。「延命治療」ということについてのものだ(参照)。
家族は「延命治療は希望しません」と言いながら、医者に「気管挿管は希望されますか?」とか「透析は?」「胃瘻は?」とか個別の質問をされると、「お願いします」という返事が多くなるらしい。それで、「これくらいの認識の差は普通にある」というのである。
健康で丈夫すぎるほどの私は、病気とか医療に関しては全然詳しくないのだが、治る見込みがない患者に「延命」目的で行う気管挿管、透析、胃瘻などを含む措置の総称が「延命治療」なのだと受け取っている。ところが世間では、この問題に関して「総論反対、各論賛成」に傾きがちだというのだ。
こんなところでも、私のよく言うところの「雰囲気のモノ」が色濃く作用するのだろう。要するに雰囲気として「延命治療で寝たきりなんてイヤだなあ」とは思っても、実際的・具体的なところまで考えたことなんてないから、個別の措置について聞かれればついフラフラと「お願いします」になってしまう。
「介護の教科書」というサイトがあって、その連載 22回目は「延命治療をしない場合に必要な書類は?尊厳死の意思を周囲に伝えておくことが大切」というテキストである。安部行政書士・社会保険労務士・FP事務所 代表の安部静男さんという方の執筆によるものだ。
このテキストの初めの方に「"延命治療は行わず" を望む声が 9割」というサブタイトルがある。ということは、大多数の人が延命治療なんて望んでいないということだ。
ところが、「治療をしても治る見込みがなく、ただ延命措置のために人工呼吸器をつけたり、胃ろうをした場合、それを後から外すことは難しくなります」とも書かれている。よくわからないが日本特有のこととして、こうしたことに関する制度がやたら複雑になっているようなのだ。
このあたりの事情は、最近の記事としては「日本の寝たきり老人数、推定 300万人以上は世界断トツ 1位! 精神科ベッド数も全病床の 21%で世界一…日本医療制度の欠陥と利権のせめぎ合い」に詳しく書いてある。読んでいてイヤになってしまうが、読む価値はある。
さらに上述の社会保険労務士さんの記事にも、延命治療を拒否して尊厳死を望む場合には『尊厳死宣言公正証書』なんてものをを準備しておけなんて、面倒なことが書いてある。このあたりは「証書作成は私どもにお任せを」ってな商売上の意図が感じられて、ちょっと鬱陶しい。
というわけで私としては、損得の発生しない第三者が信頼のおける「延命治療の断り方マニュアル」みたいなものを作成してくれるといいんだがなんて思ったりしてしまうのである。マジな話。
やたら人数の多い「団塊の世代」がそろそろ 70代後半になりつつあり、悪いけどはっきり言って長いことないのだから、これって大切なことなんじゃあるまいか。
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コメント
私もいい年して独り身なもので、30年50年後の「仕舞い方」を考えることもあります。
ですが有難いことに、takさんの言葉を借りて「やたら人数の多い「団塊Jrの世代」」が大量に独り身なので、なにかしらの社会制度が整えられるだろうと思っている次第です。
投稿: らむね | 2023年10月 9日 13:16
らむね さん:
>「やたら人数の多い「団塊Jrの世代」」が大量に独り身なので、
なるほど、これはかなり多いみたいですね。国としても「最後の最期」段階の問題は放っておけないでしょう。
あるいはもしかしたら「団塊の世代」が 80代になったあたりで、病院側の「寝たきり老人用ベッド」の数が足りなくなって、受け入れ体制が追いつかなくなり、何か変化があるかも。
投稿: tak | 2023年10月 9日 15:49