”「他にやることがない時間」を嫌がらない” って ?
Gigazine の記事なんだが、”クリエイティブな人々は「他にやることがない時間」を嫌がらない傾向がある” という見出しは、一読しただけでは意味が伝わらない。とにかく曖昧すぎる二重否定で、日本語としても下手くそすぎる。
「他にやることがない」という言い回しは、「ある特定のこと以外にやることがない」と受け取るのが自然だろう。ということは、タイトル全体としては ”クリエイティブな人々は「ある特定の仕事で忙しすぎて、それ以外にやることがない時間」を嫌がらない傾向がある” というように受け取られがちだ。
となると、「へえ! クリエイティブな人が特定の仕事で時間的に縛られるのを嫌がらないなんて、意外な話だ!」と思ってしまうよね。ところが記事の本文は、いきなりこんなふうに始まる。
忙しいときや仕上げたいタスクがあるとき、「何もやらない時間」をもったいなく感じてしまうことがあります。しかし、クリエイティブな人ほど何もすることがない時間を嫌がらず、退屈を楽しんでいる傾向にあると研究で示されています。
「おいおい、話が逆じゃないか!」と言いたくなってしまう。このムチャクチャな誤解を生じさせるのは、記事タイトル「他にやることがない時間」の「他に」という余計な言葉に他ならない。ということは、まともなタイトルにするにはこれを省きさえすればいい。
”クリエイティブな人々は「やることがない時間」を嫌がらない傾向がある”
ふむ、これでスッキリわかりやすくなる。あるいは「他に」の代わりの言葉を使ってもいい。こんな具合だ。
”クリエイティブな人々は「別にやることがない時間」を嫌がらない傾向がある”
”クリエイティブな人々は「とりたててやることがない時間」を嫌がらない傾向がある”
「他に」を「別に」と言い換えるだけで意味が通じるようになるというのは、ちょっと衝撃的だよね。
ちなみにこの記事の元記事は Taylor & Francis Online というサイトの記事で、タイトルは "Creative Minds at Rest: Creative Individuals are More Associative and Engaged with Their Idle Thoughts" だ。
日本語にしてしまうと、「静止するクリエイティブ・マインド: 創造的な人は怠惰思考とより強く繋がり関わっている」という直接的なタイトルで、「他にやることがない」なんて言い回しは混乱を呼ぶばかりだ。
この記事は要するに「怠惰から創造が生まれる」といった、逆説的だが直感的に理解しやすい真理を語っているわけなんだけどね。
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コメント
他にやることがない?
その気がなくてもあっても、掃除でも片付けでも郵便物の整理でも書類ストッカーの間仕切り問題の解決も、なんならiPhone内の使ってないアプリの削除とミュージックの整理やらなんやら…。
まぁ、普段からしてない、見なかったことにしてるから、クリエイトな思考には至らぬと言うことか…。
〽わかっちゃいるけどやめ…、やらない。
あそぉれ!スゥイィスゥイィスーダラダッタ…。(犬塚さん、彼の岸で演奏しまくりかしら。合掌。)
投稿: 乙痴庵 | 2023年10月28日 02:19
乙痴庵 さん:
まさに「やらなきゃいけないこと」に追われる身からすれば、ここで触れた記事って、「いい気なもんだよね」ってことですね ^^;)
犬塚さんが亡くなって、クレージーキャッツは全員あっちに行っちゃったわけですね。私、大ファンでした ^^;)
投稿: tak | 2023年10月29日 11:24